ソーシャルメディアのマーケティング担当者は、実体験を通しての広報活動に着目している 。コラムニストのBlaise Lucey氏は、ブランドが顧客を獲得するのにオンラインとオフラインの実体験をどのように融合していくかについて説明した。

 

2017年6月、筆者はFacebook社のグローバルクリエイティブストラテジストCarolyn Coyne氏がビデオについて語ったカンファレンスに出席した。そこで彼女は、ユーザーが平均してFacebookの動画をわずか5.7秒しか見ていないと言及。これらの視聴の75%はモバイル上でのものだ。基本的に、マーケティング担当者は視聴者に接触できるのにおよそGIFアニメ程度の長さの時間しか持っていないということだ。

当然のことながら、ソーシャルメディアに広告を打つブランドは、こうしたモデルに疑問を抱いている。ユーザーの短い注意力と閉鎖されたソーシャルメディアの環境は、ブランドと顧客の関係を薄くしているのだ。

ソーシャルコンテンツとしてのブランド広告は、家族の写真、ミーム(インターネットを通じて模倣として拡がっていく行動やコンセプト)、ニュースのアップデート、その他すべてのブランド広告と競合するだけでなく、ブラックボックス化されているアルゴリズムと競合している。

そのため、多くのマーケティング担当者がソーシャルメディアのROI(投資利益率。Return On Investment)の測定が困難だ。一方、コンサルティング会社、TrackMavenの調査によると、2015年のコンテンツマーケティングを実施する企業は35%増加したが、ブログ、Facebook、Instagram、Twitter、Pinterest、LinkedInなど全てのソーシャルメディアプラットフォームでのユーザー利用は17%減少したという。

したがって、企業が顧客とつながる他の方法を模索し続けていることは驚くことではない。そのうち最近、注目を集めているチャネルの一つが「オフライン」だ。なぜなら実体験での広報活動は6秒以上の印象を顧客に与える事が出来るからだ。

 

現実世界においてのブランド体験

実体験ベースのマーケティングは急速に人気を高めている。

「マーケティング担当者の間では、実体験ベースの広報活動は顧客との間のブランドロイヤリティ構築に有効的だという考えが総意」と話すのは、コンサルティング会社FreemanのCMO、Chris Cavanaugh氏。同社の調査によれば、CMOの60%近くが継続的な顧客との関係にブランド体験の提供が重要と考えており、10人中9人は実際に顔を合わせて交流する方がブランド体験として強い影響を与える、と答えたという。

実際にクレジットカード会社Mastercard社や高級車メーカーJaguar社のような有名なクライアントは、ここのところブランドロイヤルティを構築できる大きなイベントに大きな予算を費やし始めた。また Amazon社も物理的な書店を全国に広げている。更にアイグラスの Warby Parker社やメンズアパレルのBonobos社のようなオンライン小売業者は、一部の都市に実店舗をオープンし始めた。そして最近、スターバックス社は同社のオンラインストアを閉鎖したのだ。

スターバックスのHoward Shultz会長は、「この新しい環境で勝つためには、小売業者は、何かを体験できる目的地にならなければならない」と語ったという。

 

実店舗での体験から得るデータ

小売店は変化と混乱の未来に直面しているが、依然として実体験に対する需要は存在する。同時に、以下のようなハイテクソリューションは、これまでにないようなオフラインとオンライン を統合する方法を提供する。

  • ハッシュタグ:Twitter、Facebook、Instagramのハッシュタグ利用とブランドイメージは、ファンやフォロワーに対してオフラインの状況を簡単に見せることができ、(会場やイベントなど)その場に参加していないユーザーをも巻き込むことができる。
  • ダイナミックリターゲティング:リターゲティングプラットフォームとは、既にストア広告を訪問した顧客に対して、類似の興味のコンテンツを提供する機能。FacebookやGoogle、また(筆者の勤務する会社だが)マーケティングテクノロジー企業Criteo社のような企業は、実店舗の顧客を対象にするリターゲットソリューションを提供する。
  • 電子メールと電話番号:イベントや購入後にフォローアップする為に電子メールや電話番号を収集する。電子メールリストを作成したり、SMSキャンペーンを作成したり、連絡先の詳細をFacebook Custom Audiences(既存のカスタマーリストから作成されるターゲット層)のようなものにアップロードもできる。
  • トラッキング可能なリンク:プレゼンテーションや名刺、ケーススタディすべてには、どこかしらで追跡できるリンクを持たせるべきである。そうすると、第一段階の次のステップを踏んでいる人の数を測定できる。担当者はイベント後に顧客に対するフォローをしただろうか?印刷したパンフレットは人々をウェブサイトに誘導しただろうか?トラッキング可能なリンクは、オフラインの裏付けとなる最低限の指標を示してくれるのだ。
  • オンライン割引とギフトカード:店舗内のセールスを増やしたいのであれば、より多くのオンラインエンゲージメントを促進するためにオンラインストア専用の割引券をプレゼントするべきだ。そこにソーシャルメディアのプロフィール(リンク先など)を載せておけば、オフラインとオンライン(ソーシャルメディア)を繋ぐ事が出来る。

オンラインとオフラインの体験を融合させることでブランドは、成熟したデジタル環境の中でも際立つ事が出来る。実体験を基本としたマーケティングや実店舗での経験は、買い物客に長く持続する印象をもたらし、デジタル戦術によってそうした経験の上に更なる情報を乗せていくことができるのだ 。

このように、ソーシャルメディアマーケティングをさらに向上するには、 オフラインにフォーカスしてみると良いかもしれない。

 

※当記事はオンラインメディア「Marketing Land」の10/12公開の記事を和訳・補足したものです。