消費者は、「AI生成」であることが明示されていない場合にはそのコンテンツを好む傾向がある。しかし、一度「AI が作ったもの」と知った瞬間、信頼は大きく低下する。
我々は、より多くのコンテンツを、より速く、より少ないリソースで生み出さなければならない。そうしたプレッシャーは現実のものとなっている。そして、その解決策として真っ先に浮上したのがAIである。Validity(データの信頼性に関する情報を提供する米国企業)が6月1日に公開したデータ(文末にリンク有)によると、74%のマーケターがすでにAI生成コンテンツを導入またはテスト中で、43%が今年さらに投資を拡大する計画だという。
しかし、AIを活用して事業拡大を急ぐマーケターにとって、ここに一つのパラドックスがある。消費者は、コンテンツがAIによって作成されたことを知らない場合には、むしろそれを好む傾向がある。だが、その事実を知った瞬間、そのブランドに対して否定的な評価を下すのだ。
英国と米国の消費者2,000人を対象にしたBynder(デジタルアセットマネジメントプラットフォームを提供するオランダ企業)の最新調査は、この矛盾を鮮明に示している。参加者には、同じテーマで書かれた2本の記事が提示された。一つはChatGPTによるもの、もう一つはプロのコピーライターによるもので、AI生成であることは伏せられていた。 そのうえで、「どちらがより魅力的か」を選んでもらったところ、好みが分かれ、参加者のうち56%がAI生成の記事を選んだ。AIであることが明かされない限り、AIの文章が勝ったのだ。
しかし、同じ内容がAIによって書かれたと知らされた途端、状況は一変する。参加者の52%が「魅力を感じなくなった」と回答した。 同じ記事で、同じ表現であっても、反応が変わってしまうのだ。

出典:英国と米国の消費者2,000人を対象にしたBynderの「Human Touch」調査(2026年5月)
Validityが実施した、米国のマーケター500人と消費者1,000人を対象とした調査は、ブランドがAIをどう使っているかと、消費者がそれをどう受け止めているかの間に、ますます大きな隔たりが生じていることを示している。消費者側のデータを見ると、40%が「小売企業のマーケティングメールがAIによって書かれていると知った場合、そのメールへの信頼度が下がる」と回答。「メールがAIによって書かれていると知っても、信頼度は高いままである」と答えたのはわずか25%にとどまる。また、55%の消費者は、メール本文をすべて読まずに、AIが生成したメールの要約のみを読んで、受信トレイでの対応を決めているという。
しかし、AIが作成したメールを実際に見分けられると自信を持っている消費者は、わずか43%にすぎず、残りの人々はその違いを確実に判別できない。つまり、この信頼性の低下は、実際にAIが使われているかどうかということよりも、「AIが使われているのではないか」という認識や印象によって生じている可能性がある。

出典:米国の消費者1,000人を対象にしたValidityの「Summer 2026 Consumer」調査
メール戦略において意味すること
今回の調査結果は、すべてのメールマーケターが認識すべき現実を示している。つまり、AIによる要約が、ますます多くのオーディエンスにとって、いまや受信トレイの主要なフィルターとして機能しているということだ。消費者の55%が要約のみに基づいて判断を下している現状では、メール本文は二重の役割を果たす必要がある。それは、全文を読む人間の読者に向けた役割と、3行の要約を生成するAIに伝える役割である。
良い点は、AIの要約向けの文章作成が、質の高いメールを書くことと本質的に異なるわけではないということである。どちらも、明快さや、冒頭に価値を置くこと、そして具体性が求められる。悪い点は、多くのチームが依存しているアトリビューションモデルが機能していないということだ。消費者の14%は、AIによるメールの要約のみに基づいて購入を行っている。つまり、メールを開くことなく売上が発生しており、開封数やクリック数は反映されていないのだ。
そこで、次のステップを検討してみてほしい。
・AI要約の観点から、件名とプレヘッダーテキストを検証してみよう
読者(またはAI)は、最初の数行から正しい価値提案を読み取れるだろうか?
・メールのアトリビューションモデルを見直してみよう
開封数とクリック数だけをカウントしている場合、AIの要約を読んでからコンバージョンに至った消費者の成果が過小評価されている可能性がある。
・簡潔なAI開示ポリシーを策定しよう
Bynderのデータは、沈黙よりも正直な説明の方が消費者に良い反応をもたらすことを示している。
信頼に関するより広いトレンドが加速中

出典:消費者9,222人を対象にしたCapgemini Research Instituteの「From Hype to Habit」調査
これらの調査結果は、より長期的なトレンドとも一致している。Capgemini(フランスに本社を置くコンサルティング・ITサービス企業)が2023年から2025年にかけて消費者の意識を追跡したグローバル調査では、AI生成コンテンツへの信頼度がわずか2年で73%から55%に低下し、その現象はZ世代を含むすべての年齢層で見られた。また、YouGov(英国に本社を置く世論調査・市場調査企業)の2026年のデータでは、調査対象となった市場全体で、消費者の32%が「ブランドのコンテンツがAI生成だと知った場合、そのブランドへの信頼度が下がる」と回答したのに対し、「より信頼度が高まる」と答えたのはわずか15%だった。
世代別の違いは、状況をさらに複雑にしている。Bynderの調査によると、16~24歳の層だけが、AIが作成した記事よりも人間が書いた記事の方を魅力的だと感じていた。これは全体的な傾向とは逆の結果である。また、55歳以上の消費者の71%が「AI生成コンテンツであることを明示してほしい」と考えているのに対して、16〜24歳の層ではその割合は45%にとどまった。若い消費者はAIに対する理解度が高く、その利用にも抵抗が少ない一方で、AIの使い方を誤ったブランドに対しては、より厳しく評価する傾向がある。 Bynderのデータは、AIを使用するブランドについて消費者がどう感じているかも示している。回答者の26%は「そのブランドは人間味に欠ける」と感じ、20%は「手を抜いている」と考え、18%は「創造性に欠ける」と評価した。一方で、「革新的だ」と答えたのはわずか17%にとどまった。

出典:英国と米国の消費者2,000人を対象にしたBynderの「Human Touch」調査(2026年5月)
落としどころはどこにあるか
とはいえ、AIの効率性を犠牲にすることなく、この問題をうまく乗り切る余地はある。Bynderが消費者に対し、「人間が書いたように感じられる文章であれば、ブランドがAIを使ってコピーを作成しても構わない」という意見に同意するかどうかを尋ねたところ、82%が同意し、そのうち41%は「強く同意する」と回答した。また、Validityの調査では、消費者の35%が「メールがAIによって書かれたことを知っても信頼度に影響はない」と回答しており、誰が作成したかよりも結果を重視する層が相当数存在することが示唆されている。
マーケターにとって今後の道筋は、効率性と信頼性のバランスを取ることにある。AIコンテンツのパラドックスとは、効率性や規模拡大の恩恵が得られる一方で、消費者がAIの関与を疑った瞬間に「信頼コスト」が発生することを意味する。そのため、人間によるレビューや透明性のある情報開示、そして自動生成ではなく、真に人間らしい響きを持つコンテンツの作成に投資するブランドこそが、信頼を損なうことなくAIのメリットを最大限に活かすことができるのだ。
Validityの調査結果はこちらとこちらで確認できる。(登録が必要)
※当記事は米国メディア「MarTech」の6/1公開の記事を翻訳・補足したものです。