新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響によってeコマースは急速に成長したが、玄関先に配達された荷物が「置き配泥棒(porch pirates)」に遭う可能性が増加し、消費者の信頼と企業財務の両方に影響を与えている。置き配泥棒の増加をうけて、効果的なセキュリティ対策の必要性が叫ばれている。これは、Johannes Panzer氏の17年におよぶ、B2B およびSaaSでのe コマースのフルフィルメントと配送業界経験からの提案を、記事にしたものである。

 

eコマースの小売業者やブランドにとって、オンラインショッピングの急増は諸刃の剣である。米国のeコマース売上高は2029年までに1兆1,000億ドルに達すると予測されており、収益の上振れは計り知れないが、「置き配泥棒」の増加という脅威も高まっている。

驚くべきことに、この犯罪は2023年だけでも、総額80億ドル相当の荷物を玄関先から盗んだと推測されている。

 

経済的損失もさることながら、消費者からの信頼悪化もさらに深刻になっている。米国の宅配ボックスメーカーのPenn Elcomがアイルランドの配送管理プラットフォームのScurriと共同で発表したThe Penn Elcom Global Parcel Theft Report(荷物盗難レポート)によると、オンラインショッピング利用者の5人に1人は荷物の盗難に対して不安を感じており、10人に1人は盗難への懸念からオンラインショッピングの利用に消極的であることが分かった。安全な配送は、利益とブランドの評判を守るために極めて重要である。

 

eコマースのリーダーにとって、ラストワンマイルの安全対策には、戦略的なソリューションと運用上の警戒を組み合わせた多面的なアプローチが必要である。これを踏まえて、eコマースのリーダーが実行すべき3つの戦術を紹介しよう。

 

チェックアウト時に保険を提案する

配送の分野では、消費者は基本的な保険だけでなく、信頼するブランドからの保証も求めている。米国のインシュアテック(保険関連テクノロジー)企業Cover GeniusThe Retail Protection Report (小売保護レポート)によると、買い物客の実に76%が、お気に入りのブランドサイトでチェックアウト時に配送補償を提案されれば加入する、と回答している。そう回答した人たちは、ブランドからの一体化されたシームレスな配送体験に最大で21%の割増料金を支払っても良いと考えている。

 

このようなサービスを提供することで、購入者は特に高額な電子機器や高級品などの購入時には、エンドツーエンドで完全に保護されているという安心感が得られる。考えてみてほしい。2,000ドルのホームシアターシステム、あるいは5,000ドルのジュエリーを買うとき、顧客は感情移入している。大切な購入品が無事に届くことを期待し、小売業者は配送を保護するためにあらゆる予防措置が取られていると想定しているのである。

 

そこで、一体化されたサードパーティの配送保護が、ブランドにとって重要な競争力となる。運送保険契約の大半は、厳しい制限と長い免責リストがあり、高価な電子機器や収集品、その他の高額商品は完全に危険にさらされている。

 

小売業者にとっては、チェックアウト時に保険を組み込めば、顧客体験の向上につながると同時に、商品の再発送や交換にかかる運用コストを削減することができる。簡単にいえば、顧客をリピーターにするための賢い投資なのだ。今日の競争の激しいeコマース業界において、一体化された配送保護は、顧客ロイヤリティと生涯価値を高める収益を生み出す差別化要因となるのだ。

 

柔軟な配送を提供する

「インスタントグラティフィケーション(すぐに満足感を得たいという思考)」の時代となった現在では、消費者は注文の過程をリアルタイムで確認できるだけでなく、ラストマイルの配送を管理する機能にも期待している。今日の消費者にとって、リアルタイムの荷物追跡が業界の標準となる中、顧客のスケジュールに合わせた柔軟な配送の提供はいまだ十分に活用されておらず、見落とされているツールであることに変わりはない。とりわけ、2024年のeコマース消費者意識調査によると、回答者の76%が配送追跡機能を「非常に重要」と位置づけていることが分かった。

 

今日の買い物客は、頻繁に買い物をする人であれ、衝動的に買い物をする人であれ、次の対応が可能かを重視している:

 

・信頼できる隣人が不在の場合、配達のスケジュールを変更したり、ルートを変更したりする

・職場や安全な宅配ロッカーなど、安全な代替受取場所を指定する

・受け取りに関する指示や受取ロッカーなどのアクセスコードを非表示にした納品書を顧客と共有できるオプションを提供する

 

顧客がより詳細に管理できるようにすることで、荷物の被害や盗難の不安が軽減される。これは、配送体験全体とブランドに対する認識を高める簡単な方法でもある。

 

置き配泥棒対策ポリシーの実施

米国人の半数近くが置き配泥棒の被害に遭ったことがあり、過去3ヶ月だけでも4,400万人が盗難に遭ったことを報告している。この問題に先手を打つために、厳重な置き配泥棒対策ポリシーと社内プロトコルを整備することが、荷物盗難の脅威から企業の収益を守るために極めて重要である。

 

まず、何が置き配泥棒行為とみなされるかを明確に定義しよう。特に電子機器、宝飾品、その他窃盗団に狙われることの多い高級品など、どの品目が保険の対象となるかを簡潔に説明しよう。オンライン窓口やモバイルアプリなどのオプションにより、保険金の請求プロセスを迅速かつユーザーが使いやすいものにすること。問題が発生したとき、迅速かつ公正に解決することで、残念な体験をポジティブなものに変えることができる。買い物客の87%は、「クレーム対応が良かった場合、そのブランドをおすすめする」と回答している。

 

置き配泥棒のリスクと盗難防止策について顧客を教育することは、極めて重要である。SNS、eメール・ニュースレター、店内のポップなどを利用して、この情報を共有してほしい。保険加入や保険金請求に関する詳細なガイドやFAQを、理解を深めるためのビデオチュートリアルとともに用意すると良い。

 

安全な受け渡し場所や宅配ロッカーの利用、配達スケジュールの変更、信頼できる近隣住民への荷物の転送などの予防策を奨励しよう。配送通知やリアルタイムの追跡サービスを促進し、顧客に常に情報を提供しよう。

 

配送とeコマースプラットフォームを統合し、シームレスな保険オプションとリアルタイム追跡の実現を目指してほしい。テクノロジーを活用してリスクの高い地域を予測し、対策ポリシーの作成、価格設定、請求処理を自動化して効率化することだ。

確固たる置き配泥棒対策ポリシーを設定することで、その企業が顧客をサポートし、配送セキュリティを重視していることを示すことができる。チェックアウト時の保険加入提案と柔軟な配送を組み合わせることで、顧客体験を向上させ、企業の利益を守り、ブランドの評判を高める安全なエコシステムを作ることができるのだ。

 

※当記事は米国メディア「Entrepreneur」の6/18公開の記事を翻訳・補足したものです。