Sprout Socialが2023年に発表したレポートから、小売マーケターがさまざまなソーシャルメディアプラットフォームに投稿する最適な時間が明らかになった。

 

ランダムな時間にソーシャルメディアのメッセージを投稿している小売マーケターは、潜在的顧客をチェックアウトカートで取引につなげるための重要な機会を見落としてしまう可能性が高い。

 

米国に本社を置くソーシャルメディア分析会社のSprout Socialは最近、「2023年版ソーシャルメディアへの投稿に最適な時間帯(2023 Best Times to Post on Social Media)」を発表し、ソーシャルメディアに投稿する最適な時間と最悪な時間についてまとめている。また、小売マーケターが、Facebook、Instagram、TikTokなどのプラットフォームのソーシャル戦略を計画する際に考慮するべき、業種に特化したデータについても詳しく掘り下げている。

 

Sprout Socialは、Amazonのグローバル小売プラットフォームを活用した2,000社の起業家、ブランド、さまざまな規模の会社からの情報を含む、広範なデータセットからソーシャルメディアに投稿する最適な時間帯についての洞察を導き出した。

 

2022年12月1日から2023年1月3日にかけて収集されたこのデータは、20億件近いソーシャルエンゲージメント、40万件に渡るソーシャルプロファイルの利用パターン、Sproutの34,000人以上の顧客の分析が含まれている。

 

この調査は、成長するAmazon帝国を凌駕する小売戦略に適応するための洞察について書かれている。Sprout Socialでソーシャルメディアディレクターを務めるRachael Goulet氏によると、このレポートではブランドに重要な2点を強調している。

・デジタル環境は急速に進化する。

・プラットフォームごとに、ブランドの目標、コンテンツのタイプ、オーディエンスに応じて、異なる利点がある。

 

「マーケターがターゲットのオーディエンスとうまくつながるためには、この進化を理解し、それに適応することが重要だ」と同氏は述べた。

 

ソーシャルネットワークに投稿するのに適した時間を知ること

全体的に、エンゲージメントが最も高い時間帯は、火曜日、水曜日、木曜日で、一般的には午前9時から正午までである。この調査では、多くのソーシャルプラットフォームで週半ばの午前中が成功していることが分かった。

 

FacebookやInstagram、Twitter、LinkedInも同様だ。PinterestとTikTokは午後に高いエンゲージメントを示している。

 

しかしGoulet氏は、これらの統計には重要な意味合いがあると警告する。ソーシャルネットワークごとのエンゲージメントレベルは、週を通して、また時間によっても異なる。さらに、消費財のようなさまざまな業種では、固有のエンゲージメントのピーク時期がある。

 

「要するに、ソーシャルメディアは顧客ジャーニー全体が展開される場所であり、ブランドはそこで顧客ジャーニーに応えることがますます期待されている。ソーシャルの準備をし、存在感を示すブランドが、競争力のある体験を提供するだろう」と同氏は語った。

 

マーケターは、2023年以降のソーシャルメディア戦略を練る際、これらの集合的な洞察とブランド自身のソーシャルデータを考慮しなければならない。

 

ソーシャルエンゲージメントのピークは業務時間内にシフト

ここ数年と比較して、さまざまなプラットフォームでのピーク時間が変化していることがこのレポートで分かった。

 

現在、エンゲージメント時間は一般的な業務時間内が好まれており、月曜から木曜の午前8時から午後の早い時間までが最適な時間となっている。同様に、Twitterは過去のレポートと比較してエンゲージメントが変化しており、ピークの時間帯が平日の深夜から正午までとなっている。

 

ソーシャルメディアへの投稿のベストタイム

 

 

消費財業界はこの典型的なパターンである。ソーシャルメディアでの交流は、曜日によってコンスタントに増えている。例えば、Facebookの定常的な活動は午前7時から見られるが、Instagramは木曜日の午後2時と火曜日の午前10時という特定の時間にピークを迎える。

 

Goulet氏は、「消費者がもはや、娯楽や仕事の後の息抜きにソーシャルメディアを利用しているわけではないことは明白だ。彼らは仕事のピーク時間中にも利用している。この変化はソーシャルコマースの利用が増え、ソーシャル上でのブランドとのつながりや発見を求める消費者の傾向に倣っている」と述べた。

 

研究者は、仕事のスケジュールの変化に伴って、ソーシャル上の消費者行動パターンが変化している、とも見ている。現在のエンゲージメント時間のピークは、より業務時間に一致している。

 

Goulet氏によると、この傾向は特にFacebookで顕著だという。Facebookは、今でも圧倒的多数のマーケターによって最も利用されているプラットフォームで、日中のビジネスツールとしての有用性からか、そのピーク時間は業務時間と一致するよう変化してきている。

 

「これらの調査結果から、ソーシャルメディアが、ブランドが消費者とつながり、消費者がブランドと接触するための優先的かつ主要なコミュニケーションチャネルとして、さらに確強たるものとなっていることがわかる」と彼女は言う。

 

ソーシャルコマースの成功のための新しい要因

ソーシャルメディアの選択肢は拡大し続ける一方で、経済状況は変化している。そこで、マーケターは、マーケティング戦略を最適化するために消費者行動を理解しなければならない。それはビジネスの成功にとって最も重要なことだ。

 

投稿すべきでないタイミングを知ることで、マーケターはデータに基づいて意思決定を行い、最も適切なタイミングでターゲットオーディエンスにリーチし、エンゲージメントを得ることができる。より効果的なデータ主導の戦略によって、ブランドは経済的制約にもかかわらず、最終的に売上を伸ばすことができる、とGoulet氏は指摘する。

 

EC小売業者は、現在の経済状態が特定の業種にどう影響するかも考慮しなければならない。この戦略の良い例は、消費財業界である。

 

この分野の個人消費は回復している。実際、米国の消費者は、2022年3月にその2年前より18%多く支出した。

 

このレポートは、消費習慣の増加に伴い、ソーシャルメディアのエンゲージメントが高まっていることを強調している。これにより、マーケターは経済状況に対抗する新しいチャンスを得た。

 

Goulet氏は、「我々の最近の調査データも、この考え方と、特に支出の増加に対応して、マーケターが消費者とつながり、関わるチャネルとしてのソーシャルメディアの重要性を裏付けている」と述べた。

 

今日、ソーシャルデータはマーケターが効果的に活動するために不可欠である。プラットフォームが進化するにつれて、ブランドと消費者のソーシャルメディアの使い方も変化していくだろう。

 

マーケターは、新しい方法でオーディエンスにリーチするために、こうした変化を常に意識しておく必要がある。以前は優先していなかった新しいセグメント、プラットフォーム、ペルソナを発見することに集中すべきである、とGoulet氏は勧めている。

 

このレポートのデータを自社のソーシャルメディアデータ分析と組み合わせる企業は、オーディエンスの行動をより深く理解できるだろう。このアプローチにより、全てのソーシャルネットワークにおいてフォロワーの共感を呼ぶ、オーダーメイドのコンテンツを開発できるだろう。

 

「ソーシャルメディアが可能にするこのような密接なつながりは、企業の競争力を高め、最終的には勝利をもたらす」と同氏は付け加えた。

 

収益性の高いオンライン販売を形作るトレンド

Sproutのレポートでは、成功している小売業者が自社の強みを活かしたトレンドを反映したその他の洞察も紹介している。

 

いささか驚くのは、経済的苦境にもかかわらず、Amazonセラーの89%が収益を維持できており、37%が前年から通して収益が増加した、と報告されていることだ。

 

EC小売業者は、Amazonのエコシステム内、そしてそれ以外のマーケットプレイスへの進出に力を入れている。セラーの半数が、新しいeコマースプラットフォームやグローバルなマーケットプレイスへの進出を目指しており、オムニチャネルの重要性を意識している。2022年、Amazonセラーの61%が少なくとも1つの他のチャネルで販売しており、2021年の58%から増加している、という事実がマルチチャネルへの露出を重視する傾向を裏付けている。

 

さらに、半数以上が今年、新しいeコマースプラットフォームやグローバルなマーケットプレイスへ進出を計画している。

 

もう1つの重大な傾向は、ソーシャルメディア広告の人気が高まっていることである。現在、セラーの41%がマーケティングにソーシャルメディアを利用しており、前年比15%増となっている。

 

動画広告が急増しており、eコマースプラットフォームでのクリック報酬型(PPC)広告は依然として最も一般的なマーケティング戦略である。それでも、多くのセラーが自社の商品を宣伝するためにソーシャルメディアの利用を検討している。TikTok、Snapchat、YouTubeのような動画中心のプラットフォームは、この点で最も成長している。

 

Amazonのマーケットプレイスとそれ以外のマーケットプレイスで、セラーの方向性を示すものとして、2つの傾向が際立っている。それは、ソーシャルエンゲージメントを高める必要性と、マルチチャネルメッセージングを通じて世界中とつながる必要性である。

 

オーガニックな成長戦略にとどまらず、業界では戦略的な統合へ大きくシフトしている。セラーの3社に1社は、今年ほかのeコマースブランドを買収する予定であり、これは業界の将来に対する全体的な自信を示している。

 

ソーシャルメディアへの投稿に最適な時間帯の詳細については、Sprout Socialのレポートで確認できる。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の7/25公開の記事を翻訳・補足したものです。