新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来、中東、北アフリカ、パキスタンで2億900万人以上がオンラインショッピングを利用し始めた。

 

中東および北アフリカ地域(MENA)は、eコマースにおいて世界で最も活気があるダイナミックな地域の1つに成長した。新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来、MENAとパキスタンで2億900万人以上がオンラインショッピングを利用し始めた。しかし、この数字は規制が解除された後もパンデミック前の水準に戻っていない。それ以降、eコマースは新たな現状へと成長し、MENAの買い物客の心と財布をめぐって、広く普及している実店舗型小売業者に挑戦しようとしている。

 

英国に本社を置く金融テクノロジースタートアップ企業Checkout.comが発表した、3回目の年次報告書「Digital Transformation Report in MENA(2022年版MENAにおけるデジタルトランスフォーメーション)」では、消費者がかつてないスピードでデジタルコマースに適応していることが明らかとなっている。この地域の小売りに関しては、調査回答者のほとんどすべて(91%)が、現在定期的にオンラインで買い物をするようになったと回答しており、ほぼオンライン化が完了している。また、消費者の半数以上(52%)が、今では少なくとも月1回はオンラインで買い物をしていることも分かった。これは、2020年の43%、2021年の47%から増加している。

 

さらに、eコマースの長期的な将来性を示すものとして、消費者の半数が今後12か月間でオンラインでの買い物がさらに増えると予想しており、同様の回答をした消費者の割合は2020年の46%となり、2021年の47%から増加している。技術が発達しているGCC(湾岸協力理事会)諸国(サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、オマーン、カタール、クウェート)では、9%の消費者が少なくとも1日1回以上はオンラインでお金を使っており、これは過去12か月で50%増加している。

 

MENA地域は、世界のeコマース分野の動向と逆の傾向にあることが同レポートで明らかとなった。かつて遅れをとっていたMENA地域のeコマース分野は、世界の他のどの地域よりも急速に成長している。インドの企業経営コンサルタントであるRedseerによる最新の予測では、MENA地域全体のeコマース市場規模は2023年までに1,000億米ドルに達する見込みとのこと。

 

国際的な石油市場の復活が、この地域の小売業をさらに後押ししている。欧州、英国、米国の状況とは異なり、MENAの小売業者は、今後12か月間の小売支出が再び増加すると予想している。実際に、地域経済の繁栄とパンデミックの収束に伴い、旅行・観光、イベント、エンターテインメントなどのカテゴリで、消費者のオンライン支出が増えている。

 

長い間、デジタル化の影響を受けていないと思われてきた高級品分野でも、オンラインショッピングが再燃しつつある。高収入グループの15%は、この1年で高級品へのオンラインの支出が増えたと回答。特に、この地域の最高所得者層は、デジタル支出をこれらの分野に向けている。旅行への支出が40%、イベントチケットのオンライン購入が20%増加した。

 

一方で、デジタル決済とeコマースはお互いを補強し合っている。eコマースの台頭に伴い、デジタル決済も急増しており、MENA地域の消費者の70%は、好きな決済方法としてデジタル決済を挙げている。この割合は、2020年では40%、2021年では60%で、24か月で75%増となっている。

 

このうち、主にデジタルウォレットを利用するという消費者は16%で、2020年の10%、2021年の14%から増加、この24か月で60%の成長となっている。デジタルインフラが高度に発達している湾岸諸国は、当然ながら地域のデジタル決済革命をリードしており、GCC諸国の消費者の80%がデジタル決済を「好ましい選択肢」だと回答している。

 

近年のデジタル決済の台頭は、eコマースの時代でも現金が長らく独り勝ちしていた同地域において、歴史的な文化的変化を意味する。その結果として、MENA地域での代金引換(CoD)の利用は減少し続けており、この24か月で40%急減した。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)のような国では、現金を好む人は人口の5分の1か4分の1しかおらず、実際、eコマースでの代引きの利用はほとんどない。デジタル決済やフィンテックインフラに対して存在していた信頼の障壁は消えたように思われる。

 

地元の小売業者は、消費者の新しい要求に、典型的な積極性を持って応えている。2022年初めにCheckout.comが行った調査では、サウジアラビアとUAEの業者の約3分の2が、現在オンラインのサービスにデジタル決済を導入していると回答し、4分の3は今後12~24か月以内にさまざまな決済オプションを導入して提供したいと考えていると回答。一方、地元の小売業者の4分の1は、2024年までにオンラインでの支払いに仮想通貨決済の利用を可能にしたい考えであると回答している。

 

MENAではデジタル通貨の受け入れが拡大していることに対応するため、仮想通貨導入へのサポートが進んでいる。これは特に若年層に顕著で、調査対象となった湾岸諸国の40歳以下の消費者の半数以上が、仮想通貨は単なる投資資産ではなく、決済に使用されるべきだと答えている。Web3(ブロックチェーンを応用したサービス群)がオンライン体験の重要な要素として普及するにつれ、買い物客はオンチェーン(ブロックチェーン上に記録される取引)での取引に積極的な姿勢を示しており、法定通貨だけでなく、デジタル通貨での支払いや決済を希望するようになりつつある。調査対象の消費者の54%が「オンチェーン決済によって取引が大幅に速くなる」と考えており、49%が「オンチェーン取引の安全性が非常に高まる」と考えている。

 

世界で最もエンゲージメントの高いソーシャルメディアユーザーベースの1つであるMENAで、ソーシャルコマースが新たな「ショッピングパラダイム」として台頭していることは驚くことではない。MENAの消費者の半数は「ソーシャルメディアチャネルで最も頻繁にeコマースを利用する」と回答しており、これはこの24か月で43%の増加がみられる。サウジアラビアとUAEでは、ソーシャルコマースを好む人は2倍以上となっている。

 

また、「今買って後で払う(後払い決済、BNPL)」という刺激的なモデルが登場して以来、我々はその成長を追跡してきた。2021年の後払い決済市場規模は、71億8,000万ドルとされており、2030年までに890億ドルを超えると予想される。この調査によると、MENAの買い物客の39%が後払い決済の利用経験があるのに対し、米国は13%、英国は24%である。2022年8月、サウジアラビアの後払い決済ソリューション大手スタートアップのTamaraは、Checkout.comも参加したシリーズB(スタートアップに対する投資ラウンドの1つの段階)の資金調達ラウンドで1億ドルの調達に成功した。現在、300万人以上の買い物客が利用しているTamaraは、サウジアラビアに本社を置くこの地域最大の後払い決済プロバイダの1つで、スウェーデンの家具量販企業のIKEA(本社はオランダ)、サウジアラビアの書店Jarir、中国のオンラインファストファッション小売業SHEIN(本社はシンガポール)、UAEのファッションECサイトNAMSHIなどの企業と提携し、分割払いを可能にしている。

 

この地域のデジタル経済は、これまでになく急速に進化し続けている。消費者向けサービスを多様化しようとする革新的な企業と、デジタルトレンドにいち早く対応する消費者の好循環が組み合わさって、世界で最もエキサイティングなeコマース市場の1つを築いている。Checkout.comは、企業とそのコミュニティがデジタル経済で繁栄できるように、微力ながら手助けできることを誇りに思っている。

 

※当記事は米国メディア「Entrepreneur」の11/10公開の記事を翻訳・補足したものです。