従来の倉庫が、メーカーから小売店などの法人顧客に届くまでの商品を保管するという目的だけであったのは、それほど古い話ではないだろう。
今日、多くの産業の倉庫は、eコマース・フルフィルメント・センターへと進化している。eフルフィルメントは、在庫保管に加え、エンドユーザーへの商品配送に焦点を当てた総合的なロジスティクス戦略の一部となっている。
この大きな変化は、主にeコマースの順調な普及と継続的な利用によってもたらされたものだ。ここでは、近年、倉庫スペースがどのように変化したかを見ていこう。
従来の倉庫
かつての倉庫は、ほとんどの場合、広範囲にわたるサプライチェーンの中心に位置していた。その主な目的は、大量の商品を保管し、ある地点から別の地点へ移動させることだった。例えば、倉庫の担当者は、あるリテール企業のために、何千着もの衣料品をさまざまな場所に移動させたりしていた。
しかし、現在では、倉庫がサプライチェーンの終点となることが多くなっている。その結果、これらの衣料品は、中間業者を介さずに直接顧客に出荷されるようになるかもしれない。従来の倉庫は、無限のリソースを持つような大企業を対象とし、広大でかつメーカーや大型小売店などの大口顧客にサービスを提供できる場所に設置されていた。
倉庫は通常、在庫を保管するだけだが、フルフィルメントセンターはそれ以上の役割を果たしている。
eコマースの世界における倉庫
近年、消費者は自宅にいながら24時間365日、オンラインで買い物ができることの利点を実感している。また、その多くは世界中のあらゆる規模の企業から購入するようになった。
この進化は、物流会社の目標を大きく変え、オンラインショッピングの顧客に最短時間で最高のサービスを提供することを目指すようになった。
現代のeフルフィルメントセンター
eコマース・フルフィルメント(e-fulfillment)とは、単なる在庫保管だけではない。このプロセスには、商品の受け取りと保管、ピッキングと梱包を含む注文の処理、出荷、返品に関連する活動が含まれる。つまり、これらのセンターは、注文と配送のプロセスのすべてのステップをカバーしている。今日のeフルフィルメントセンターは、消費者直販型(D2C)のeコマースストアにとって不可欠なパイプ役となっている。
このセンターはサードパーティロジスティクス(3PL)プロバイダーとして、顧客のあらゆる種類の注文に応える役割を担っている。フルフィルメントセンターは、主に海辺や内陸の港の近くに位置するのではなく、ラストマイルの在庫処理と配送プロセスを促進するために、人口密集地の近くにも建設されている。例えば、Amazonのフルフィルメントセンターのネットワークを見てみると、その多くが郊外にある。
eフルフィルメント施設の種類
eフルフィルメント施設にはさまざまな種類があり、その目的や立地条件によって異なるが、以下のようなものが挙げられる。
立体倉庫
かつてはアジアの人口密集地で一般的であった立体倉庫が、米国でも徐々に増えてきている。不動産デベロッパーは、より大きな消費者市場の近くに工業用不動産を提供する必要があることに気づいたためだ。多くの場合、これらの立体倉庫は、土地不足と建築物の大きさに関する制限を有する地域に位置している。
ダークストア
一方、ダークストアは、従来の小売流通センターを再構築したもので、ラストワンマイルデリバリーや自動フルフィルメントシステムを提供するものである。ダークストアは巨大な複合施設であることが多く、顧客はオンラインで購入した商品を受け取ることができる。元々は英国だけで取り組まれていたが、現在では欧州の他の地域や米国においても人気が高まっている。
マイクロフルフィルメントセンター
マイクロフルフィルメントセンター(MFC)は、その名が示すとおり、小規模で再利用された施設であり、通常、自動化された配送ネットワークを備えている。このような施設は、既存の小売店や倉庫に設置されることが多く、駐車場や駐車スペース内に設置されることもある。広さは一般的には1万平方フィート以下だ。
ナノディストリビューションセンター
最後に、ナノディストリビューションセンター、ラストタッチセンターがある。元々はオフィスや小売店の拠点であったこれらの施設は、現在では、確立されたサプライチェーンの延長線上にあることが多く、消費者の生活や仕事場への配送をスムーズに行うのに役立っている。
これらのセンターは、最も迅速かつ最小のサプライチェーンソリューションと考えられており(小さいものではわずか250平方フィートのものもある)、顧客に最も近い場所に位置している。都市部では、このようなセンターを見つけることができるだろう。
eフルフィルメントのメリット
eフルフィルメントセンターに物流業務を委託することには多くのメリットがある。1つは、全体的な運用コストの削減だ。例えば、多くのセンターは梱包材などを大量に購入するため、購買力が高い。さらに、UPS、FedEx、DHLなど、さまざまな輸送業者との取引を仲介する力も持っていることが多い。これにより、配送効率を向上させつつコストを削減し、その分を販売に回すことができる。
その他、物流戦略全般の一環としてeフルフィルメントセンターを利用するメリットには、以下のようなものがある。
- 人事管理の改善。フルフィルメント・ワーカーの採用に悩む必要がない。
- 在庫の保管やフルフィルメントが別の場所で行われるため、より広いオペレーションスペースを利用できる。
- 最新のロジスティクス技術を、お金をかけずに利用することが可能。
- ピッキング、梱包、出荷をフルフィルメントの専門家が行うことで、顧客サービスを向上させることができる。
- 複数のeフィルメントセンターを利用して在庫を配送するため、異なるマーケットへのリーチが広がる。
- コアコンピテンシーにより注力することで、自社の得意分野に集中することが可能となる。
単なる保管場所を超えたサービス
eコマースの拡大に伴い、eフルフィルメントセンターのニーズも高まっている。eフルフィルメントセンターは、従来の倉庫とは異なり、在庫を保管するだけではなく、顧客の注文と発送のプロセスをサポートし、代行することができる。これにより、企業は本来の業務に集中することができるようになる。
※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の8/10公開の記事を翻訳・補足したものです。