コネクテッドパッケージがブランドのサステナビリティ目標の達成にどのように貢献できるかについて、英国のデジタルマーケティングエージェンシーAppetite CreativeのJenny Stanley博士(医学)に考察を聞いた。

 

最近、お気に入りの商品が新しく、改良されたパッケージになっていることに気づいたかもしれない。サステナビリティ、廃棄物削減、ネットカーボンゼロの目標は、今や世界中の企業の意思決定の最前線にある。100%リサイクル可能なものから紐付きタイプのキャップまで、ブランドはそろそろ変わり始めたように思うかもしれないが、すべてが見かけ通りというわけではないのだ…。

 

Coca-Colaは先日、リサイクル性の向上を目指し、ペットボトルに付属式の(取り外せない)キャップを付ける計画を発表した。同社は、すでにリサイクル可能なキャップが「しばしば廃棄され、ポイ捨てされている」ため、この取り組みによってキャップがプラスチックごみとなる可能性を減らすことができると主張している。

 

Coca-Colaは、2024年初頭までにこの新しいペットボトルを全ブランドに展開する予定だ。これは、欧州議会が、プラスチック製のキャップやふたを使用する製品のサプライヤーが2024年以降に市場での販売を希望する場合は、付属式のキャップやふたに切り替えることを義務付ける法律を制定したのと時を同じくしている。この規則は、容量3リットルまでのすべての飲料ボトルに適用される。この新たな「使い捨てプラスチック流通禁止指令」(Single-Use Plastic Directive)は、究極的にはちょっとしたデザインの採用であるが、ヨーロッパのビーチで発見されるプラスチックごみの10%を減らすことが期待されている。

 

Coca-Colaのように、さまざまな業界のブランドや企業は、政府から対応を迫られている状態だ。サステナビリティやヘルス、パッケージングに関する法律は定期的に改正されており、ヨーロッパでの新しい指令は序章に過ぎない。

 

では、サステナブルパッケージングの開発がそれほど進んでいない企業にとって、他に考慮すべき重要な点として何があるだろうか。

 

1.欧州連合(EU)でワインやフレーバードワインを販売する企業は、2023年末までにラベルやコネクテッドパッケージにデジタル表示で栄養情報や成分を提供しなければならない。基本的に、ワインには健康上の警告を表示する必要がある。一部の国では、この指令が特定の飲料やカテゴリーにのみ適用される場合もある。

 

2.2022年末までに、EUで販売されるすべての蒸留酒の栄養成分情報に消費者がアクセスできるようにする必要がある。この情報は、「最終消費者が情報を得た上で選択を行っている根拠」の提示を求める「消費者への食品情報の提供に関する規則」(FIC規則/規則1169/2011)の目的に完全にかなうよう、明確かつ包括的な方法で提供される必要がある。消費者は、スマートフォン、バーコード、QRコードを通じて、すべての関連情報に常時アクセスできるようになる。

 

3.U-ラベル(ボトルのバックラベルのQRコードで消費者が製品情報にアクセスできるもの)デジタルプラットフォームが立ち上げられた。EUの消費者に簡単かつ安全に、そして手頃な方法で情報を提供するためにeラベルを使用したいと考える、EU内外に拠点を置くワインや蒸留酒の企業は、これを利用できるようになった。このeラベルは、特定の市場向けの特定の製品に関する構造化された情報をまとめた専用のウェブページである。これは、製品の裏ラベルに印刷された固有のQRコードにより、消費者に情報を提供する。EUにおける表示関連法制の施行に先立ち、いくつかのワインの有名ブランドが試験的なスキームに参加。Appetite Creativeは、CEEV Comité Vins(ヨーロッパを代表するワインメーカーの大多数が加盟するワインの生産者団体)の事務局長の承認を受けたコネクテッドパッケージングパートナーとして活動を行っている。

 

消費者は環境に関心を寄せていることから、すでに多くの企業がパッケージのリサイクル性を向上させ、消費者に透明性をもたらすソリューションを提供するための取り組みを行っている。eラベル(別名コネクテッドパッケージ)は、主要な製品情報を共有するためのアクセス可能で、明確かつ簡便な方法を提供するものである。ブランドにとっては、何を、どのように、なぜ変えていくのか、そしてそれが顧客にもたらす価値を説明する必要性が一層高まっている。

 

サステナビリティとヘルスの両方に関していえば、コネクテッドパッケージは、顧客を教育し、最終的に顧客の行動をより良いものに変えるのに役立つ。ユーザーは、パッケージに記載されているQRコードから、教育ビデオ、インタラクティブな仮想現実(VR)や拡張現実(AR)、共有して楽しめるゲームなどのウェブアプリ体験にアクセスすることができる。マーケターにとって重要なのは、ブランドと消費者の双方を結びつけることができるということだ。

 

Appetite Creativeでは、サステナビリティに真剣に取り組んでいるTetra Pak(食品用紙容器の開発・製造を行う企業、本社スイス)やElopak(液体用のカートンを製造するノルウェー企業)、Greiner Packaging(サステナブルプラスチックの加工を行う米国企業)と協働している。これらの企業は、パッケージングが最終的に廃棄物ゼロになるようにするための方法に投資している。我々は、エンドユーザーがパッケージの使用方法やリサイクル方法をきちんと理解できるよう、コネクテッドパッケージを通じて魅力的な方法で消費者を教育し、情報を提供できるよう手助けを行っている。例えば、キャップに紐をつけるのは良いことだが、消費者がその理由を知らずにふたを切り離してしまうとしたら、それは無駄な作業となる。我々は、マーケターが重要な情報を理解しやすく、行動しやすい方法で伝え、消費者が自分自身と地球のために正しい選択を行えるよう支援しているのだ。

 

ブランドが責任を持って行動する必要性がますます高まる中、コネクテッドパッケージとそれを支える幅広いテクノロジーは、スマートなソリューションを提供する。それは、データを収集し、製品を開発し、リアルタイムで顧客と直接コミュニケーションをとるための効率的でコスト効率のよい方法、そしてクレデンシャル(認証に用いられる情報の総称)を向上させる簡単な方法を提供する。まもなく、コネクテッドパッケージは、選択肢や「あると助かるもの」ではなくなるだろう。時代遅れにならないよう、今こそ、コネクテッドパッケージを取り入れる時である。

 

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の8/11公開の記事を翻訳・補足したものです。