なぜ見込み客は貴社からオンラインで購入しないのだろうか。多くの場合、それはブランドにとって“当てずっぽう”をするようなものだ。消費者の意思決定プロセスに影響を与える要因や障害を理解することが、極めて重要である。

 

しかし、ブランドは、消費者のオンラインジャーニーの全体像を十分には理解していない中で、どのようにして上記のことを理解することができるだろうか。

 

エンゲージメントとコンバージョンを促進するカスタマージャーニーを成功させるにあたっての4つの障壁を以下で紹介する。

 

  1. 競合他社に対するインサイト不足 ブランドは、消費者がオンラインで競合他社から直接購入したり、eコマースサイトで競合する商品を購入したりする原因を明確に理解していない。これは、消費者のオンラインジャーニーに関するパズルの欠けているピースであり、これのためにブランドは、見込み客が競合他社にコンバージョンする前に彼らに効果的にリーチする場所を推測しなければならない状況が生じている。

 

  1. データプライバシーに関する要求の高まり データプライバシーや規制の変化により、消費者のオンライン上での行動の全体像を把握することが制限され、消費者セグメントを明確に把握することが難しくなっている。これは、メッセージング、プレイスメント、クリエイティブのパーソナライゼーションを効果的に行う可能性を妨げている。これらはすべて、激しい競争の中でブランドの信頼とロイヤルティを築くうえで不可欠なものである。

 

  1. 消費者行動に対する動機付けの欠落 今日ブランドは、消費者がオンラインで行動を起こす動機や、インテントからコンバージョンまでの時間を短縮するイネーブラー(あるコア技術やデバイスを持っており、新たな社会システムを構築する上で不可欠な企業)に対する認識が欠落していることがよくある。

 

  1. マーケティング予算の削減 全体的に予算が削減される中、過去に高い予算があったブランドでさえ、マーケティングメッセージをあらゆる場所に送信する余裕はない。削減されたマーケティングリソースを最も効果的に集中させる場所を理解していないブランドは、壁にスパゲッティを効果的に投げつけて、何がくっつくかを確認しているようなものだ。

 

成功するジャーニーを作ることとは、適切な場所で、適切なコンテンツを使って、適切な回数で、コンバージョンを促進するために、消費者と接することである。今日のブランドは、マーケティング費用を非常に効率的に使い、実際に差別化ができ、売上のKPIを達成し、またはそれを上回ることが可能になる場所でのみマーケティング活動を行うようにする必要がある。

 

では、どうすればよいのだろうか。

 

競合他社の分析

ビジネスチャンスがどこにあるかを理解するために、小売業者は、自社の持つデータの外で、消費者にどんなことがオンラインで起きているかについてのインサイトを得る必要がある。これは、競合他社のアセットにおける消費者の購買ジャーニーをリバースエンジニアリングする技術を利用することで実現することができる。

 

競合他社の消費者ジャーニーで、消費者が実際にコンバージョンに至った初期段階を明らかにすることは、特に重要である。これにより小売業者は、マーケティング費用でより高いROIを生み出しつつ、競合他社に代わって自社に有利な形に消費者に影響を与えうる場所を見つけることができるのだ。

 

市場要因の理解

競合他社における購買経路の調査に加え、オンラインショッピングの初期段階で消費者がどこで情報を得ているかを知ることは非常に重要だ。小売業者は、データサイエンスアルゴリズムを使ってカスタマージャーニーの状況を完全にマッピングすることで、隠れた機会格差を発見することができる。

 

例えば、消費者が家電製品を検索するとき、さまざまなアフィリエイトのレビューサイトにアクセスするかもしれないが、そのすべてが彼らの選択に影響を与えるわけではない。競合他社への最終的なコンバージョンに結び付くために投資する価値があるものと、それとは対照的に、ジャーニーの一部ではあるものの、ROIが得られないためにマーケティング費用をかける価値がないものとを判断できるようになることだ。

 

購買アトリビューションギャップの特定

小売企業にとって、購買意欲の高い顧客を失うおそれが最も高いカスタマージャーニーのポイントを特定し、どのギャップが重要であるかを判断し、売上に影響を与えないギャップを排除することが重要となる。

 

さまざまな視点(ジャーニーステージ、セグメント、購買行動、トピックなど)から、競合他社に対して小売業者が有する購買アトリビューションギャップをリアルタイムに把握することが不可欠だ。この種のデータセットは、マーケティング活動が消費者の獲得とコンバージョンにつながる可能性が最も高い場所を決定する際に、販売店を支援することができる。

 

これがどのようなものかを示す実際の例として何があるだろうか。

 

消費者の購買ジャーニーをリバースエンジニアリング(他社のマーケティングを紐解き参考にすること)するソリューションを使用することで、特定の購買者グループの購買経路を特定することが可能だ。ここでは、JBL(世界有数の老舗音響機器メーカー)ではなく、Sonos(ワイヤレスを利用したホームサウンドシステム)やAmazon Alexaを購入する例で説明しよう。

 

最近引っ越してきて、ホームオーディオシステムについて知りたいというカップルは、「住宅用に購入するときにスピーカーについて知っておくべきこと」などの用語でGoogle検索し、テクノロジーニュースサイトであるLifewireDigital Trendsに掲載されている「5 Factors to Consider Before Buying Stereo Speakers(ステレオスピーカーを買う前に考えるべき5つの要素)」や「How to buy speakers: A beginner’s guide to home audio(スピーカーの買い方:ホームオーディオの初心者向けガイド)」などといった記事にたどり着くだろう。

 

これらの記事を読んだ後、消費者は「音楽用ワイヤレスホームオーディオ」などの用語で検索してジャーニーを続け、New York Timesのレビュー記事「The Best Multiroom Wireless Speaker System(マルチルームワイヤレススピーカーの決定版)」にたどり着くが、その記事にはJBLは登場しない。そして、この記事を読んだ消費者は、Amazonでの購入へと誘導するアフィリエイトリンクを経由して、SonosやAmazon Alexaを購入し、ジャーニーが終了する。

 

JBLにとって、これはコンバージョンの意思決定に影響を与える場所で競合他社から購入する前に、この消費者セグメントのブランド認知度やユーザー獲得を高める機会となる。
たとえば、JBLはNew York Timesとアフィリエイトパートナーシップを結ぶことで、自社製品のレビューやアフィリエイトリンクを関連記事に埋め込み、購買意欲の高い消費者を惹きつけ、コンバージョンを高め、競合他社との関わりを事前に断ち切ることができる。また、LifewireやDigital Trendsのディスプレイ広告を、上記のような関連セクションや記事に入れることで、これらの消費者をターゲットにすることもできるのだ。

 

eコマースビジネスにおける競合他社の情報

最近の各社の決算発表によると、店舗とオンラインもいずれにおいても、消費者の購買意欲は低下傾向にある。しかし、eコマースは引き続き好調である。2022年には、世界のeコマース売上高は5兆ドルを超えると推定されている。この数字は今後数年間で増加すると予想されており、eコマースがますます重要な販売チャネルになっていることを示している。

 

こうしたことを考慮した場合、eコマース事業者はこれまで以上に顧客獲得に注力することが重要になっている。消費者の完全なオンラインジャーニーに関しては、競合他社、市場要因、購入意欲の促進についてのインサイトを提供するソリューションが利用できるのだ。

 

競合他社や、他のウェブサイトと消費者とのインタラクション、消費者の購買動機を明確に理解することで、小売業者は自社ビジネスの成長機会を明確にすることができる。そして、コストを最小限に抑えつつ、コンバージョンとロイヤルティを促進する成功したカスタマージャーニーを構築するために、マーケティング投資を最適なものとすることができるのだ。

 

※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の7/7公開の記事を翻訳・補足したものです。