COVID-19パンデミックが発生し、初めて老若男女(米国的に言うと、5つの世代:保守世代、団塊世代、X世代、Y世代、Z世代)が同時にオンライン上で活動し、仕事をし、買い物をするようになり、小売業界の状況は一変した。
現在eコマースは、かつてないほどの高水準にある。2020年は全世界の売上高が4.1兆ドルに達し、2015年の約2倍になると予測されている。しかし、世界の顧客幅が広がる一方で、競争領域も拡大している。
消費者が、平常時の買い物習慣から離れ、簡単な操作性、優れたオンラインエクスペリエンス、即時配送、卓越したカスタマーサービスを誇るブランドを利用するようになり、パンデミック以前に確立されていたブランドロイヤルティが失われた。大手コンサルティング会社、McKinseyのレポートによると、新型コロナ危機が勃発してから、米国の買い物客の4分の3のブランド選好は変化しており、消費者の注目を得るための熾烈な戦いが激化している。
ソーシャルプラットフォームやモバイルプラットフォームの採用が急増し、今日の市場における購入者とブランドの交流方法が一変した。完全にではないにしろ、大部分において消費者との非接触型環境を提供するトリガーとなったロックダウン制限は、COVID収束後の世界においても、その影響が持続する可能性が高いだろう。
景気後退への圧力も加わり、デジタルへシフトする中で、顧客は、ブランドの選択、そして、将来的にどのブランドを利用し続けるかについて、より意識的な評価をするようになっている。購入プロセス全体においてさらに目が利くようになった消費者は、問い合わせ情報へ便利なチャネルで簡単にアクセス可能なのかどうかといった、最も基本的な要素を含む、より優れたシンプルかつ明確なエクスペリエンスの提供を重視するようになっている。
ロイヤルティが薄れつつある今、小売業者が、失われた顧客を取り戻し、新規顧客を獲得するために直面する課題は、顧客の立場に立って、適切なタイミングで、適切なチャネル全てにおいてサービスを提供できるかということである。
オムニチャネル・エクスペリエンス
ハイパーコネクテッド時代において、より多くの製品を提供し、さまざまなチャネルを統合することは、ブランドのインタラクションを最大化するために極めて重要となるだろう。しかし、顧客サービスにおけるインタラクションやセンチメント(特定のブランドや企業に対して、市場全体が抱いている印象や心理状態)は、すべてのチャネルで一貫しているわけではないことに留意すべきである。企業は、自社の顧客基盤との関連性が高いチャネルと低いチャネルがある理由を考えるべきである。
一般的に、ブランドとのインタラクションにおいて、消費者の満足度が最も高いのは、モバイルアプリを介したものである。それに、ライブエージェントとのチャット、インスタントメッセージングが続いている。しかしこの順位は、ブランドの個性、ミッション、および通常の問い合わせ内容といった、小売業者ごとに異なる多くの要因に依存している。
顧客が、多様な問い合わせ内容によって、さまざまな時間にさまざまなチャネル間を行き来することは、よく知られている。よくある質問に対する回答を求めるときには、インスタントメッセージングを選ぶ傾向があるが、例えば、請求に関することなど複雑な問題がある場合は、音声での問い合わせを好む傾向がある。ブランドにとって、顧客がどのプラットフォームでも会話を始め、途中で内容が伝わらないことがないように、すべてのチャネルでの会話をシームレスにすることが、かつてないほど重要となっている。
実際、問い合わせチャネルを簡単に見つけられるブランドへの顧客ロイヤルティは、32%も高くなる。ブランドアドボカシーの鍵は、ユーザーの生活をより利便性の高いものにし、エンドツーエンドの購買ジャーニーからフリクションを排除することである。
メンバーシップ意識の構築
オンラインコマースの普及に伴い、顧客は、毎月継続してお買い得情報を受け取ることになり、サイバーマンデーやブラックフライデーといった年に一度のショッピングイベントに対する重要性が薄れている。小売業者は、経験豊富な消費者を相手に、オンラインで割引を利用して衝動買いをするように促している。しかし、すべての顧客が同じ割引を利用できるようになると、小売業者が別の方法で長期的なロイヤルティを喚起する必要が生じてくる。
最高レベルのブランドは、テクノロジーと人間性を融合させ、バランスのよいハイテクでハイタッチな体験を生み出している。今日の消費者は、オンラインショッピングをする際に、まるで店舗にいるかのように、ブランドに自分のことを個人的に知ってもらいたいと考えている。企業は、データインサイトを分析し、顧客行動をモニターし、一歩進んだ取組みを行い、顧客のニーズを理解する必要がある。関連性が高くタイムリーで、カスタマイズしたコンテンツを配信し、“その顧客にだけ”という特別感を生み出すことで、顧客のニーズに関心があることを示すべきである。
ブランドは、適切な質問をし、顧客に自分は単なる“普通の顧客”ではないと感じさせることで、さらに一歩推し進めることができる。小売業者は、アフターケアとリピーターにフォーカスし、「今日のエクスペリエンスで楽しいと感じたことは何か」、「より良いサービスを提供するためにブランドにできることは何か」といった質問をして、より深い会話を促すべきである。
結局のところ、顧客自身が真のユーザー専門家である。ブランドがユーザーのために役立ち、各チャネルの機能を知らせる最善の方法を学ぶことができれば、将来的にエンゲージメント獲得の機会は大きく広がるのだ。
未来の顧客基盤
対面でのインタラクションがない場合、デジタル・チャネルを統合し、それをフル活用する小売業者が、残された顧客内シェアを獲得することになるだろう。カスタマーサポートの必要性が高まる中、ブランドには、パンデミックによって引き起こされた変化を活用し、新たな顧客層を獲得して危機から抜け出す絶好の機会が生まれている。問題は、そのチャンスを掴むことができるかどうかである。
独自のオムニチャネル体験を創出するために、カスタマーサービスをどのように利用できるかを理解することは、失った顧客を取り戻し、ブランドのアドボカシーを高めるための鍵となる。
※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の1/7公開の記事を翻訳・補足したものです。