2022年に入り、ブランドは、顧客のプライバシー、選択や体験に重点を置いた、急速に変化する規制とテクノロジーの状況に直面している。

サプライチェーンとインフレに対する継続的な懸念と、モバイルへの嗜好の高まりから、消費者とブランドの両方がこれまで以上にアプリを頼りにするようになってきた。

 

消費者はブランドとのやり取りをよりコントロールしたいと考えている。これは、最高のアプリ体験をめぐる熾烈な競争や、デジタル・ウェルビーイングとユーザーのプライバシー管理への注目の高まりによって達成されつつある。一般的に、消費者はアプリが独自に提供する価値、利便性やスピードを求める一方で、ブランドは、消費者情報という形で相互の価値を受け取る必要がある。

 

※本記事は、マーケティングやブランディングサービスを提供する米国企業Airshipの最高戦略・マーケティング責任者であるThomas Butta氏に、ブランドが今後活用すべき主要なモバイルトレンドについて話を聞いたものだ。

 

2022年にどう展開されるか

・消費者は、これからも他のチャネルよりもモバイルアプリを優先するか?

・ブランドは、新たな需要に対応するべく、顧客体験を進化させるか?

・新型コロナウイルス感染症は、消費者行動やアプリのデザインにどのような長期的な影響を与えるか?

・消費者とブランドは、関係するすべての人にとって、より大きな価値を生み出す交換をどのように進めるのか?

・ブランドは、プラットフォームの根本的な変化にどのように対応するのか?

 

これらの大きな問題をAirshipの新しい電子書籍「2022年におけるモバイル消費者のための体験トレンド9選(9 experience trends in 2022 for mobile consumer)」で取り上げている。

 

モバイルアプリは顧客体験の「デジタルセンター」になりつつある

App Annieとして知られていたData.ai(人工知能を搭載したインサイトを提供する統一データAI企業)は、2021年に消費者が起きている時間の3分の1をモバイルに費やしており、それは2019年から30%増加していること、またアプリ内サブスクリプションに前年比で30%多く消費していることを明らかにしたeMarketerの報告によると、アプリユーザーは他の買い物客に比べて3.5倍の収益を生み出し、リピート購買をする可能性が3倍高いという。数千のブランドと数万のアプリを対象とするAirshipのプラットフォームデータによると、2020年のアクティブモバイルユーザーは31%増加し、2019年の約2倍の伸びとなった。世界的なパンデミックにより、アプリへの嗜好が加速。Airshipが世界の9,000人の消費者を対象に行った最新の調査では、回答者の76%がパンデミック開始以降、小売アプリをより多く、あるいはほぼ同程度使用していることがわかった。

 

コロナ時代の体験がニューノーマルになる

Forrester(市場調査やコンサルティングなどのサービスを提供する米国企業)によると、顧客は(クリック・アンド・コレクトなどの)宿泊施設によく反応し、(遠隔医療などの)遠隔ソリューションにもこれまで以上にオープンになっているという。同社は、多くのブランドが、収益性が高く、顧客を失望させないことから顧客の人気を博しているパンデミック時代のサービスを維持すると予想している。

 

消費者はオプトインに即時的な価値が必要

モバイルアプリが提供する大きな利点の一つは、スマートフォンのロック画面に現れるプッシュ通知で、消費者がどこにいようと、最も重要なときに消費者にリーチできるということだ。ブランドにとっての主要な課題は、消費者にこの通知にオプトインしてもらうことだ。

 

Airshipのデータによると、オプトインする最大の動機は、割引やポイント還元のいずれの形態かにかかわらず、「即時的な価値」が全世界の回答者の35%を占め、最上位となった。同率2位の25%は、「配送、配達、店頭での受け取り」の通知と「注文確認書や領収書」の受け取り。「大規模な販売イベントへの早期アクセス」は21%で、3番目に回答数の多い動機であった。

 

「共有」となると、消費者はすぐにオプトアウトする可能性がある

新しい顧客中心主義の時代となった今、消費者は自分のデータをこれまで以上にコントロールできるようになり、自分のニーズを満たさないブランドを避けるようになっている。

 

Appleが現在リリースしているiOS 15では、消費者は通知を受け取るタイミングや頻度を制限することができ、またメールアドレスの非公開、メールの追跡ピクセルのブロックやIPアドレスの匿名化を設定することができる。AppleのiOSユーザがブランドのアプリをダウンロードする前に、プライバシーラベルがそのデータ収集方法を開示する。ユーザーがアプリを入手すると、新しいアプリのプライバシーレポートに機密情報へのアクセス要求の頻度やその情報が共有されている場所の詳細が表示される。

 

同様に、Android 12の新しいプライバシーダッシュボードでは、「アクセス許可の設定だけでなく、どのデータが、どのくらいの頻度で、どのアプリによってアクセスされているのかを一つの画面内で確認できるようになっている。また、ダッシュボードからアプリのアクセス許可を簡単に取り消すこともできる」という。

 

希望的観測だけではアプリ追跡の透明性とオプトイン率を高めることはできない

プライバシー規制やモバイルプラットフォームによりデータ収集に消費者の同意が求められるため、サードパーティデータは少なくなってきている。Googleは2023年までにブラウザ上のサードパーティCookieを段階的に廃止する予定であり、Appleはユーザーが自身のプライバシーと個人データをよりコントロールできるようにするさまざまな機能を導入している。

 

AppleのIDFA(広告ID / ID for Advertisers)を使うと、マーケターは、関連性のないアプリ全体でユーザーの行動を追跡し、デジタル広告キャンペーンでより効果的にターゲティングと測定を行うことができるが、アプリはまずユーザーに許可を求める必要がある。

 

最顧客にとってますます重要となる価値観

Airshipの調査によると、消費者の約半数(46%)は、環境、道徳、政治や宗教などの個人的な社会的価値観をブランドと共有することに前向きであり、ソーシャルプロファイルの情報を共有することを望む消費者(35%)よりもはるかに多いという。

 

Forresterによると、「価値観を重視する消費者がより一般的になり、彼らの企業に対する期待がより高まるにつれ、ブランドは、インパクトイニシアチブと日常の消費者体験とを結びつけることにより注力しなければならなくなるだろう。ブランドは、倫理観を反映し、消費者を特定の行動に参加するよう誘い、意識を変え、ネットワークを育成し、そして満足度を強化することで、理論上の価値観から実践上の価値観へと移行することができる」という。(Forrester Research, Inc.「価値観中心的な米国消費者の現状(”The State Of The US Values-Based Consumer”」、2021年8月2日)

 

最も成功しているブランドは、アプリ上でファーストパーティデータとゼロパーティデータを構築する

間近に迫ったサードパーティCookieの廃止、データプライバシー規制の強化、そしてAppleやAndroidによる消費者管理の強化によって、ブランドは顧客の理解を深め、相互利益の機会を増やす直接的な顧客関係の構築に注力することが不可欠になっている。

 

より多くのブランドが、ロイヤルティプログラム、アンケート、質問やQRコードに投資してより多くの顧客情報を収集し、それを使ってオファーをパーソナライズしたり、広告コストを削減したりするようになるだろう。ただし、1回限りの実施ではなく、アプリを通じてこれらの体験を届け、顧客との継続的な価値交換を作り出すことで、エンゲージメントを維持し、顧客体験を向上させ、重要なビジネス成果をあげることに注力するブランドが増えると予想される。

 

メールの効果は低下し続けるだろう

Airshipの調査によると、世界全体では、回答者の4分の3以上(78%)が、ブランドからのメールを無視したり、半分以上読むことなく削除していることがわかった。ブランドからのメールを高い頻度で配信停止にする方法が最も一般的で(41%)、35%はメールの送信者を見てメールを削除し、34%は件名を見てメールを削除している。これらの行動は、年齢層を超えて共通しているが、いくつかの決定的な違いがある。

 

若い世代は、メールを完全に無視する傾向が強い。Z世代の27%は、メールを頻繁にチェックせず、同じ割合の回答者はほとんどチェックしないセカンダリーメールアカウントを使っている。団塊の世代と比較すると、Z世代とミレニアル世代は、匿名や偽のメールアドレスを使用する傾向が4倍以上高く、メールを頻繁にチェックしないと回答する傾向が2倍以上高い。

 

ブランドからの共感が当然のことになりつつある

何百万もの消費者は2021年に、大切な家族を亡くした人が辛いリマインダーを受け取らないで済むよう、父の日や母の日に関連するマーケティングメールをオプトアウトする機会を提供するメールをブランドから受け取った。Lush(ハンドメイド化粧品やバス用品を販売する英国企業)のようなブランドはアクティビズム(積極行動主義)に転向し、ソーシャルメディアのプラットフォームに対して広く報道された圧力をかけて、若者や弱い立場にあるユーザーにとってよりポジティブで害のない環境を作っている。

 

これまで見てきたように、ただ手をつけないでおくという選択も含め、消費者の好みを認識し、受け入れることが2021年の主たるトレンドとなった。Appleは手始めに、ユーザーがデータをより管理できるようにし、広告・マーケティング分野の現状を打開した。それ以降、AppleのiOS15とAndroid12のいずれもが、消費者にブランドとのさらなるコミュニケーション方法の透明性、選択肢やコントロールを提供するべく先手を打っており、「プライバシー」、「共感」や「メンタルウェルビーイング」は単なる流行語以上のものとなっている。

 

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※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の4/14公開の記事を翻訳・補足したものです。