CMOは説明責任を負う必要がある。つまり、マーケティング支出の結果を測定する方法を理解することである。

 

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マーケティング支出の謎は、多くのCEOを困惑させてきた。これは、「マーケティング支出の半分は無駄だ、どの半分かさえわかっていれば」という皮肉でしばしば表現される。コンテンツマーケティングを専門とするエージェンシー、Marketing Insider GroupのCEO兼創設者であるMichael Brenner氏によると、どの半分が無駄かを知ることは可能だという。

 

Brenner氏は、営業からマーケティングに転身した。彼は自身のブログ投稿記事「マーケティングとはなにか?」の中で、「同業者の大半は、私のことをおかしいと思っていた」と語っている。

 

「実際に顧客との会話を重ねるにつれ、私は、マーケティングが未来を表すという考えをもつようになった。私は“セールスバッグに入っていたもの”を売った」と彼は記している。「マーケティングとは、誰がより早口で話したり、より良いクロージングができるかということではない。それは、顧客のニーズを深く心理的に理解することである」としている。

 

Brenner氏は、さらに次のように述べている。マーケティングの効果は数値化され、正当化することができる。CMOは支出の責任を問われる可能性があるが、CEOが理解できる言葉で話すことができなければならない。

 

マーケティングとは、メッセージの繰り返しではなく、顧客エンゲージメントを測定し、それがどのように売上を促進するかを示すことである。

 

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大きな期待、大きな失望

「マーケティングにはマーケティングの問題があると、私は言いたい」とBrenner氏。人々にマーケティングとは何かと尋ねると、彼らは自分が見ている(または聞いている)もの―看板、テレビ広告、ラジオ広告―を基準に答えを出すだろう。「私の前職であるNielsen(消費者の視聴行動、購買行動の分析を行う調査会社)は、1日あたり7,000通のメッセージだと言っていた」とBrenner氏は語った。「私たちは、経験からマーケティングは単に広告だと考える。大学で教えられているマーケティングは、プロモーションを過剰に強調している」とBrenner氏は指摘した。

 

プロモーションは、1950年代にマーケティングを説明するために開発されたコンセプトである「4つのP」(プロダクト、プライス、プレイス、プロモーション)のうちの一つにすぎない、とBrenner氏は説明した。教科書的なマーケティングの定義は、市場とその消費者の間の対話であった。

 

「しかしながら、どれだけの経営者がマーケティングを対話だと捉えているだろうか?」とBrenner氏は問いかけた。「彼らはたった1つの矢、『自分たちがなぜ素晴らしいのかを伝えること』しか考えていない」。この考えは、「ソーシャルメディアアカウントを管理しているマーケティングコーディネーターにも当てはまる。そして、彼らは自分たちの仕事を、自分の会社がいかに素晴らしいかというメッセージをどんどん発信することだと思っている」という。

 

プロモーションに頼ることは得策ではないことがわかる。「データの分析は、プロモーションがおそらく最も効果の低いマーケティング形態であることを示している」とBrenner氏は語った。「多くの企業は、マーケティング予算の大部分を広告に費やしているが、広告費から収益のドルへの直接的な相関関係、または因果関係が達成されたことを示すことができない」。

 

「自社のバイヤーを教育する必要がある企業の99%にとって、プロモーションは、最悪のスタートと方法だ」とBrenner氏は述べた。

 

Brenner氏が好んで引用する統計の1つに、バナー広告の平均クリック率がある。それは、わずか0.5%である。某ブランドのFacebook広告を見る人の数は0.1%未満であり、それはは、すでにブランドをフォローしている人によるものである。マーケターがこの種の広告への支出を増やすにつれ、一般的にクリックスルー率は低下している。

 

「それは収穫逓減の法則ではない」とBrenner氏。「リターンはあったのか?」。ここでBrenner氏は、デジタル広告に月平均80,000ドルを費やしたクライアントとの経験を例に挙げ、彼らの平均リターンは、(費やしたドルあたり)15〜25セントの損失であったと語った。「収穫逓減ではなく、より大きな損失である」。

 

ミスコミュニケーションの行方

マーケティング予算に対する期待が歪んでいると、スタート地点が適切でなくなる。CEOとCMOが同じ波長でさえない場合は、ボトムラインへの道のりはさらに混迷する。

 

CEOがマーケティングに求めるもの」の中で、Brenner氏は、Fournaise Groupが行った調査を引用した。これは、スタートが貧弱であることを示している。CEOの5人に4人はマーケターを信頼しておらず、短期、中期、長期の経済的現実からかけ離されすぎていると心から信じている。さらに、これらのCEOは、マーケティングがビジネス用語で測定および数値化できる方法で新規顧客を獲得し、収益を増やすという使命を果たせなかったと考えている。

 

「マーケターは、広告やブランド開発などの従来の役割に固執するという罠に陥りがちである」とBrenner氏。「しかし、多くのC-suite(経営を司る役職)は、現在、マーケティングを企業の全体的な成長と拡大における重要なプレーヤーと見なしている」。

 

「CEOがCMOの進化した役割を誤解している場合、マーケティングチームは、会社の他部署とうまく連携していないことになる可能性がある」とBrenner氏。「効果を上げるには、CMOは、CEOがマーケティングに何を求めているかを聞き、彼らが必要とするものを提供するという微妙なラインをたどる必要がある。計画階層を作成し、CEOの賛同を得て、常にそれに忠実であることが有効だ」。

 

ここでBrenner氏は、営業というバックグラウンドが、自身の視点をどのように形作ったかを説明した。「元営業として、マーケティングが数字に責任を持つべきだと感じ、その世界に入った」。

 

「CMOが『私は責任を負っている』と語ることから始まるのだ…あるレベルでは価値の戦略的推進力であり、それを測定する方法がある」とBrenner氏。ここで同氏は、‘The Content Formula’の著者として、マーケティングの収益と価値を測定するための数学的アプローチを提案する。彼がそれをCMOに提案した時、あまり評判が良くなかった。

 

「私の2冊目の本Mean People Suck’を書いた理由は、数学が問題ではないからである。文化が問題なのだ」。CMOは、最初に説明責任を負うことを受け入れる必要があるが、「自分自身とマーケティング機能を戦略的および財務的に位置づける」ためのストーリーテリングスキルと政治的能力も必要だ。

 

「別の見方をすると、『言われたことしかしない人』である」とBrenner氏は続けた。「CEOは、CMOの仕事は予算を管理し、スタジアムにブランドのロゴを貼り付けることだと考えている」。CMOはCEOの意向に応じてお金を使う。マーケティング部門は、指示されたことを実行するという文化的モデルに従っており、結果について責任を問われることはない、と同氏は説明した。そのような部署は、ビジネスプランを構築し、説明し、結果を得るスキルを磨く機会を得ることは決してない、とBrenner氏は語った。「トップダウンのビジネスモデルでは、誰もが一員になりたいと思うような持続可能な職場環境を作り出すことはできないのだ」。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の3/18公開の記事を翻訳・補足したものです。