eコマースビジネスを運営する上で、商品の返品は避けられないものだ。返品をゼロにすることはできないため、商品を返品できるというオプションを提供することは、ビジネス戦略の極めて重要な部分となりうる。

 

格言にあるように、「返品が少ないなら、十分に売れていないということだ」。それでも、ほとんどのeコマース企業は、処理すべき返品の件数を減らしたいと考えている。

 

本記事では、オンライン取引の専門家にインタビューを行い、返品の原因、返品された注文の処理方法、そして究極的にはそもそも返品が発生しないようにする方法について意見を聞いた。

 

「多くの企業は、販売面にすべての力を注いでいるが、すべての返品を調査し、いかにして返品に関するエクスペリエンスを向上させるかを考察することについては、同等の労力を注いでいない。しかし、これを実行することで、単に販売やマーケティングを強化するよりも投資利益率を高めることができる」と、Diginius(オンライン販売システム等を提供する英国のソフトウェア企業)のCEOであるNate Burke氏は説明する。

 

返品はeコマース分野では必然的なものであり、返品に効果的に対処することは、eコマースのビジネスプランにおいて重要な要素である。

 

「返品をゼロにすることはできないし、そうすべきでもないが、管理方法を改善することはできる」とGlobal-e(D2C越境ECサービスのためのプラットフォームを提供するイスラエル企業)の北米担当CEOであるMatthew Merrilees氏は助言する。「返品は、小売業者と顧客の間に信頼関係を築くチャンスとなる」。

 

返品を減らす

返品は費用と時間がかかり、商品が破損したり販売できない状態になるリスクがあるため、ほとんどの企業にとって返品を減らすことは理にかなっている。

 

「商品の梱包と配送が往復で行われるため、返品が多ければ多いほど、商品が破損する可能性も高くなるのは当然である」と、bel monili(ヴィンテージや再利用された素材を使った手作りのジュエリーやアクセサリーを販売する小売店)のオーナー兼アーティストのLucy Kelly氏は語る。

 

「eコマースビジネスオーナーとして、顧客に最高の体験を提供したいと思っている。つまり、顧客には、購入した商品を開けた瞬間に喜んでほしいのだ」と同氏は続ける。「そうした期待と体験を提供することで、顧客が返金を求める可能性は格段に低くなり、そのポジティブな体験を他の人と共有する可能性はさらに高まるだろう」。

 

返品件数を減らすための措置を講じることがビジネスにとって有効な理由は、さまざまな理由からビジネスにとって良いことである。

 

「返品を減らすことには多くのメリットがある。eコマースの世界では、返品は大きな問題となりうる。それは、利益率を下げ、環境に悪影響を及ぼし、ビジネス全体を脅かす」と、Common Assembly(米国のアパレル企業)の創業者兼CEOであるKarina Shivdasani氏。

 

さらに、「返品処理のために、従業員を増員したり、倉庫スペースを拡大したり、変則的な物流対応を余儀なくされる可能性もある。要するに、返品によって、企業としてのブランドと収益性がダメージを受ける」と、同氏は指摘する。

 

そのため、企業の利益に資し最終的に返品を最小限に抑えることができる明確な返品ポリシーを設けることが、eコマース企業を運営する上での重要な要素となる。

 

「質の高い返品ポリシーとカスタマーサービスプロセスを提供することは、消費者基盤のロイヤルティを高めたいと考えている中小企業にとっては重要なことであるが、返品はできる限り少なくすべきだ」と、The Product Boss(起業家によるビジネスの立ち上げを支援するポッドキャスト)のMinna Khounlo-Sithep氏との共同設立者であるJacqueline Snyder氏は語る。

 

「極端に高い返品率は、現時点では小売業者にとって深刻な問題であるため、ポリシーを策定する際には必ず財務コストと機会コストを考慮すべきだ」と同氏は主張する。

 

返品の原因を究明する

消費者が商品を返品する理由はさまざまであるが、eコマース事業者は何が返品の原因になっているかを把握する必要がある。返品の原因を評価し理解することで、返品を減らすための戦略を立てることができる。

 

「返品のすべての理由をモニターし、問題の核心を解決しよう。品質の問題なのか、ウェブサイト上の商品説明、包装の問題なのか、もしくは、写真、より適切なフィッティングガイド、一貫性のあるサイズ表記、電話サポートが必要なのかなどを把握する必要がある」と、Burke氏は説明する。

 

商品が国外に販売される場合には、返品につながり得る特有の理由が数多くあり、国際市場向けに販売する事業者はこれらを考慮に入れる必要がある。

 

「当社のデータによると、越境eコマースの消費者向け商品で最も多い返品理由は、サイズとフィット感に関するもので、その割合は50%以上である」と、Merrilees氏は指摘。

「しかし、それ以外の理由での返品は回避することができる。消費者が商品を受け取ったところで、チェックアウトの際に事前に知らされていなかった税金や送料を負担しなければならないことを知るケースがある。その結果、返品率が高まり、ひどく不満を感じる顧客が増えるばかりでなく、マーチャントにとっても、往路と復路の両方で物流コストがかかることになる」。

「このような返品は、海外の顧客向けに、購入にかかるすべての関税や税金を計算し、チェックアウト時に前払いできるようにすることで防ぐことができる。または、多くの場合、より良い解決策としては、その市場の価格表示規則に従って、海外の顧客に現地の関税や税金を含む価格を提示することだ」と、同氏は説明する。

 

返品を減らす方法

返品が発生する原因が分かれば、その発生を減らすための対応を取ることができる。

商品の写真やその他の販売・マーケティング資料を正確なものにするだけで、顧客は自分が注文しようとする商品を正しく把握できるようになる。

「商品のサイズ、色や用途などが正確に示された、鮮明な写りのよい商品写真を用意することだ」とKelly氏。「サイズが重要だ。商品が使用されているところを示したスタイリング写真やライフスタイル写真で、商品が日常生活でどのように使用されているかを示すことができる」。

 

企業は、そもそもなぜ返品が生じているのかによって、返品を減らすためにさまざまな対策を講じることができる。

 

「返品率を下げるために、小売業者が取れる手段はいくつかある」と、Khounlo-Sithep氏は説明する。「品質管理から始めることをお勧めしたい。出荷の前に、すべての発送商品に間違いや破損がないか、再確認するチェックポイントを追加するのだ」。

「これが自分一人では負担が大きすぎる場合は、アウトソーシングをしよう。人手を増やしたり、新しい在庫管理ソフトを導入して、より正確に注文に対応できるようにしよう」。

 

商品説明が正確かどうかを確認することも、返品を減らすための鍵となる。

 

「サイト上の商品説明が顧客に実際に発送しているものと一致しているか、そして高品質の画像や動画で商品を正確に表現しているかを再点検することをお勧めしたい」と、Khounlo-Sithep氏は付け加える。「これにより、顧客の期待に十分に応えることができ、返品率の高い小売業者で最もよく見られる現象を改善することができる」。

 

最後に、カスタマーレビューを求めることは、返品を防ぐことに役立つ。

 

「購入のたびにカスタマーレビューを促そう。最近では、レビューが商品の成否を左右することもある」と、Khounlo-Sithep氏は語る。「実際に商品を使用した人たちにその商品の使用に関する率直な体験を書いてもらうことは、顧客がより多くの情報に基づいた意思決定を行うために役立つ優れた方法だ」。

 

返品の管理プロセス

結局のところ、返品を完全になくすことは不可能であるため、ビジネスの収益を維持するための返品ポリシーとシステムを開発することが重要である。

 

「ビジネスによっては、返品を完全に自動化してオンラインプロセスに組み込むことができる」と、Burke氏は述べる。「また、企業の中には、電話サポートを通じて顧客と対話し、返品を承認し、可能であれば別の解決策を顧客と一緒に模索したいと考えるところもある」。

 

「いずれにしても、すべての返品プロセスを文書化し、顧客と対話して返品の理由とスムーズな対処法を明らかにすることが、収益性の高いオンラインビジネスの規模拡大にとって非常に重要だ」と、同氏は締めくくった。

 

※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の12/3公開の記事を翻訳・補足したものです。