【EC業界スペシャリスト対談】BtoB ECは現場のどのような課題を解決して未来を作っていくのか

 

eコマースにおける注目の業界のスペシャリストを招いた「スペシャリスト対談」。前回に引き続き、EC業界の中でも市場規模が非常に大きいにも関わらず、なかなか脚光を浴びにくいケースも多い「BtoB EC業界」の最前線で活躍されている4名のスペシャリストにお集まり頂き、BtoB ECが現場のどのような課題を解決して未来を作っていくのかについて語って頂いた。

今回ご参加頂いたBtoB EC業界のスペシャリストは、BtoB EC・Web受発注システム「アラジンEC」を提供している株式会社アイルの江原智規氏、BtoB EC向けの決済サービス「クロネコ掛け払い」を提供しているヤマトクレジットファイナンス株式会社の岡本創氏、BtoB EC向けにも活用されているEC構築パッケージ「Sell-Side Solution」を提供している株式会社コマースニジュウイチの小山守弘氏、BtoBの受発注業務をEC化するクラウドサービス「Bカート」を提供している株式会社Daiの鵜飼智史氏の4名。

それでは、後編である、BtoB ECが現場のどのような課題を解決して未来を作っていくのかを見ていこう。

 

※今回参加された各社のサービス紹介資料と、導入事例はこちらからダウンロード出来ます。

 

 

そもそもBtoB ECとの接点の始まり

 

eccLab編集長:西澤(以下西澤) eccLab編集長:西澤(以下西澤)

BtoB EC業界向けに各社様はサービスを提供されていますが、どのような経緯でBtoB EC業界との接点が始まったのでしょうか。

 

株式会社アイル:江原智規氏(以下アイル江原氏) 株式会社アイル:江原智規氏(以下アイル江原氏)

我々アイルは、約30年前の創業当初から基幹業務の販売管理システムを開発し、お客様にご提供してきました。弊社のシステムを導入している企業様は、FAXや電話で注文を受け、それを弊社の販売管理システムに手入力していましたが、7、8年前から「効率化を図りたい」というご相談が少しずつ来るようになったのです。そこで弊社のシステムとお客様がインターネット上で入力したデータを連携させようということで、連携するためのWebシステムを1社ずつ個別に開発するようになりました。ただ、そのお声が年々増えてきたので、5年前に弊社の基幹業務システムと連携する前提でパッケージ化したのです。1社ごとに対応しているとそのソフトを作ったエンジニアしか詳細を把握できませんし、もともと弊社はパッケージ戦略に注力してきたシステム会社なので、企業文化としてもパッケージでの提供を重視してきました。その流れで、ECもパッケージ化するということで始まったのがBtoB ECとの関わりです。

▲株式会社アイル BtoB EC推進統括本部 江原智規 氏

 

西澤 西澤

コマース21さんはもともと大手のECを手掛けているイメージでしたが、いつの間にかBtoB ECのメニューが増えていたように思います。きっかけは何かあったのでしょうか。

 

株式会社コマースニジュウイチ小山守弘氏(以下コマース21小山氏) 株式会社コマースニジュウイチ小山守弘氏(以下コマース21小山氏)

BtoB向けの機能は最近になって開発したのではなく、以前からBtoBの案件自体は引き合いとしてはありました。弊社はto B向け、to C向けとメニューを分けてはおりません。なぜなら、弊社の製品はお客様のビジネスに合わせたカスタマイズを中心として開発しているため、to Bでもto Cでも、その両方でも、お客様のご要望に応じて構築しております。

今まではBtoC向けのサイト構築に需要が集まっていたため、実績や事例もto C向けのものを多くご紹介しておりましたが、最近はBtoBでのEC活用が増えてきたこともあり、構築ノウハウや事例についてもご紹介する機会が増えてきたため、メニューが急に増えたように見えてしまったのかもしれませんね。

 

西澤 西澤

もともとそれほど分けて考えず、どちらも柔軟に作り込めて、引き合いが少しずつ出てきたという流れだったのですね。

 

コマース21小山氏 コマース21小山氏

我々のシステムはどちらかと言うとプラットフォームのような形なので、いかようにも作り込めるところが特徴です。昨年、製品のアーキテクチャをマイクロサービス指向へと大きく変えたことで、大規模な案件でもより柔軟でスピーディーに開発ができるようになりました。基幹システムやERPとの連携、独自機能開発も多いBtoBではより活用しやすくなったと思います。

 

西澤 西澤

Daiさんは現在BtoBの受発注業務のソリューションとしてEC化するクラウドサービス「Bカート」を提供されていますが、ユニークな始まり方をしていると伺っています。

 

株式会社Dai:鵜飼智史氏(以下Bカート鵜飼氏) 株式会社Dai:鵜飼智史氏(以下Bカート鵜飼氏)

そうですね。弊社はもともと出版業からスタートしている会社で、当時発刊していた書籍が仕入先の情報誌だったんです。「お店を立ち上げても、どこから商品を仕入れたらいいか分からない」という声を聞いて、小売業の方と、メーカー・卸・輸入商社といった企業をマッチングする書籍として、30年以上発刊してきました。その後、ホームページ制作などを始めたのですが、BtoBの取引先が大半だったので、「もっと日々の業務を効率化できるような業務システムを作って欲しい」という依頼を受けてBtoB ECのシステム開発の仕事が増えていきました。ただ、システムを1社ずつ開発するとなると、どうしてもお金と時間がかかることもあり、特に中小企業の方はためらうことも多い状況で、お客様から何とかして欲しいというご要望をいただいておりました。そういった課題を解決するために30年以上BtoB業界に携わってきたノウハウと、業務システムの開発をおこなってきた経験を詰め込んだクラウドサービスとしてBカートを提供しています。

 

西澤 西澤

もともとBtoB業界との繋がりがあったということは大きいですよね。ヤマトさんも、BtoB業界との繋がりが多そうなイメージですが、そのような中からニーズが多かったということが事業を始めるきっかけになったのでしょうか。

 

ヤマトクレジットファイナンス:岡本創氏(以下ヤマトC岡本氏) ヤマトクレジットファイナンス:岡本創氏(以下ヤマトC岡本氏)

BtoCはまだまだ成長は見込めますが市場が徐々に成熟してきており宅急便を届ける以外の価値をどうやってお客様に提供していくか考える必要があります。その一方で、BtoBは今後EC化が進む非常にポテンシャルのある分野だと考えたのです。ヤマトグループは全国各地にネットワークを持っているので、首都圏をはじめとした大都市お客様だけでなく、地域のお客様を支援するという視点でもBtoCと同様に当社の強みが活かせると思っています。

 

 

BtoCとBtoBの違い

 

西澤 西澤

BtoC向けサービスを中心にやっている方の中には、認識の低さから「BtoC向けサービスとBtoB向けサービスはそれほど大きな違いがないのではないか」と感じている方も多いと思います。具体的にどのような点がBtoC向けサービスと違うのか、システム的な違いを改めてご説明いただけますか?

 

アイル江原氏 アイル江原氏

BtoB向けサービスでは、1つは基幹システムとECをしっかりと連携して使っているということ。2つ目は、toBの場合は企業ごとに営業が契約条件を個別に対応しているので、得意先(顧客)と商品の掛け合わせで例えば単価算出・商品表示制御・支払い方法など、実は非常に数多くのパターンがあります。それに対して、toCはあっても会員ランク程度で、一般会員、シルバー会員、ゴールド会員などで割引率や特典が違うぐらいです。これがtoCとtoBのシステムを構築する時の大きな違いではないでしょうか。

BtoC ECをやっているネットショップ事業者の中には、社内に販売管理のソフトがなくても成り立っている事業者様が数多くいらっしゃいます。ECカートの機能で伝票が発行できて、在庫管理の機能も盛り込まれているので、そもそも販売管理システムを導入していないケースも多い。ただ我々がターゲットにしているのは、どちらかと言うと業務システムを既に導入されている企業様です。得意先マスタや商品マスタ、在庫や単価のデータが業務システム側に登録されているので、それらのデータをECシステムとしっかり連携して、データ登録が2度手間にならないように、また機能が2重に被らないように業務システムとBtoB向けECシステムの役割を考慮したシステム構築のご提案を行っていることがBtoC向けシステム構築との違いだと考えます。

 

コマース21小山氏 コマース21小山氏

弊社の場合はBtoCでも大規模なお客様が多いので、販売管理システムを基幹で持っているケースが大半です。一部例外的にECに寄せてしまうお客様もいらっしゃいます。例えば、あるお客様の場合はECとコールセンターの販売管理システムを別々に持っていたので、我々の方で全て作り直したこともありました。ただ、大半の場合は基幹でマスターを持ち、EC・電話・FAXそれぞれの注文についても基幹に寄せます。BtoCの場合はお客様からの問合せを受けた場合でもECの管理画面を確認することで完結できることも多いですが、BtoBの場合現状ではEC以外の発注方法も残っているケースがあり、その場合は基幹も確認しなければなりません。つまりECと基幹のデータ連携のタイミングをより密に行わなければ基幹にECの注文が入ってこない状態になってしまうので、連携タイミングを高頻度で行う必要性が出てくると思います。

▲株式会社コマースニジュウイチ ECインテグレーション事業部 シニアディレクター 小山守弘 氏

 

ヤマトC岡本氏 ヤマトC岡本氏

物流の観点から言うと、在庫管理や倉庫内の導線、梱包方法などもBtoCとは少し変わってくる部分があります。

 

コマース21小山氏 コマース21小山氏

そうですね。他にも100個のロットがあればこちらに乗るんだけど、200個になったら乗り切らないからどうしようとか。基本的に、BtoBの場合は送料はお客様持ちなので、どこまでシステムに落とし込むのかというのは考えますね。落とし込まずに、手作業のシステム外の部分があまりにも残ってしまって非効率になりすぎるんだったら、お金をかけてでもシステム化しようと。

 

西澤 西澤

なるほど、配送までも大きな違いがあるのはなかなか理解されている方は多くないですよね。カートという観点でもお話をお聞きしたいのですが、今はBtoC向けのカートはたくさんありますが、その方々がBtoBのカートの領域にはなかなか入っていけない、もしくは諦めていると思ってしまいます。BtoB向けのカートの最大のポイントはどのような点なのでしょうか。

 

Bカート鵜飼氏 Bカート鵜飼氏

機能的なことはもちろんありますが、システム以外の部分も大きいと多いのではないでしょうか。BtoCのカートサービスを提供されている方々はECのことはよくご存知ですが、BtoBの業務システムまわりのことはあまりご存知ではない。逆にBtoBの方々は、業務システムのことはよく分かっているけれど、ECのことはあまり分からない状況があります。BtoB ECのサービスを提供しようと思った時には、知らなくてはいけない範囲が非常に広くなるんだと思います。

 

西澤 西澤

ノウハウが足りないところが大きいのでしょうか。

 

Bカート鵜飼氏 Bカート鵜飼氏

そうですね。それに加えて機能的な面で言うと、マスターの違い、我々の社内で言うところの“ID問題”があったりします。BtoBは基幹システムがあって、そのシステムに合わせた業務フローがすでに構築されているので、それありきで考えなければいけない。BtoCのサービスでは、そもそも概念的にマスターが足りないものがあり、IDを格納する項目がなかったりします。それを無理に推し進めて導入すると、結局あとでマニュアルの作業が残るなどの弊害が残ります。例えば、税計算もBtoCとBtoBでは異なるため、注文の度に結局1、2円ずれてしまったり。BtoCでは考えられないことですが、BtoBの場合、小数点以下の単価設定もあるので、そういった商慣習に対応しようと思うとそもそもマスターの在り方が違うのです。

 

西澤 西澤

ヤマトさんはどのような面が違うと感じられていますか?

 

ヤマトC岡本氏 ヤマトC岡本氏

決済の観点からお話しますと、BtoC ECに合った決済手段があるのと同じように、当然BtoB ECに合った決済手段もあります。BtoCの場合はクレジットカードの利用率が60〜70%で、あとは請求書払いや代金引換、ID決済が主となります。一方、BtoBの場合は掛け払いが圧倒的に多いです。大企業との取引でクレジットカードを利用するケースは少なく、しかもECの場合は従来BtoBの取引での電話・FAX注文と違ってスピード感が求められます。そう考えると、BtoB ECに合った支払い手段として掛け払いが最適な決済方法であると考えています。

 

 

 

BtoB EC向けのサービス毎の特徴

 

西澤 西澤

アイル様、コマース21様、Dai様はBtoB EC向けプラットフォームを提供し、ヤマト様は決済サービスを提供されていますが、それぞれサービスやターゲットなどにどのような差があるのでしょうか。業界内の方からの印象を教えてください。

 

ヤマトC岡本氏 ヤマトC岡本氏

我々は決済サービスをご紹介するよりも先に、BtoB EC全体を設計することからご提案をしています。お客様の状況に合わせてご提案をしますが、中小企業で事業をはじめてすぐにまとまった金額を用意できるところは多くないので、そういった事業者にはBカートさんは最適だと思います。BtoB取引で必要な機能が揃っているのでカスタマイズの必要がなく、無料アップデートも受けることができ、クロネコ掛け払いやB2クラウドをはじめ、周辺サービスとの標準連携が豊富なので、最初に何から始めたらよいか迷っていらっしゃる企業様にはとくにお勧めしやすいですね。

アイルさんをお勧めするケースは、短中期の将来に規模を拡大する計画がある場合です。アイルさんはECだけでなく電話やFAXも含めた基幹システムにとても強いので、ECだけでないマルチチャネルでの事業拡大をご検討される場合は、基幹システムの刷新についても踏まえながらご紹介しています。もう1つ、アイルさんは業種ごとのデータ構造の違いや代理店の構造の違いなども詳細に把握されていると思います。お客様の要求が細かく且つ広いほどその領域のことを熟知しているアイルさんをお勧めします。

コマース21さんはもっと規模の大きい、年商100億を超えている場合にご紹介させていただくことが多いです。そしてBtoCのご経験をかなりお持ちなので、お客様の中でBtoCをすでに展開している会社のご担当の方がそのままBtoBも担当されるというケースにお勧めしています。複数の会社と付き合うのは非常に難しいので、その会社の業務によく慣れた会社の担当者とお付き合いされたいような時にコマース21さんはお勧めですね。

▲ヤマトクレジットファイナンス株式会社 物流金融事業部 Fintech,パートナーアライアンス担当 BtoB-ECコンサルタント 岡本創 氏

 

西澤 西澤

アイル様、コマース21様、Dai様の3社がコンペでかち合うことはないですよね?

 

アイル江原氏 アイル江原氏

Bカートさんを検討していた企業様とお打ち合わせしたり相談を受けることはたまにあります。でもコンペで競合になることはないですね。我々とBカートさんではシステムの提供方法が大きく違って、カスタマイズできるパッケージとASPというシステム構造が違うため、この2つのシステムを一緒に検討する企業様は要件が固まっていないか、システム構造の違いを分かっていらっしゃらないケースかと思います。

 

西澤 西澤

3社はそれぞれECのプラットフォームですが、こうして対談企画をしてもそれほどかぶるイメージがありませんでした。逆に皆さんから見たヤマトさんの決済サービスの強みを教えていただけますか?

 

Bカート鵜飼氏 Bカート鵜飼氏

BtoB取引の多くは掛売りなので会社に請求書が届きます。お金に関わることなのでその請求書がどんな企業から届いているのかは非常に重要です。見たこともない会社から届くのと、誰でも知っているヤマトさんから届くのでは圧倒的に違うのではないでしょうか。

 

ヤマトC岡本氏 ヤマトC岡本氏

確かに、ブランドへの安心感からクロネコ掛け払いを選んでいただけるケースも多いかもしれないですね。

 

アイル江原氏 アイル江原氏

ヤマトさんとは決済サービスでシステム連携させてもらっていますが、北海道から沖縄までヤマトさんで荷物を受け取ったことがない法人はほぼないだろうという話を聞いた時に、ヤマトさんの強みをすごく感じました。後払いサービスは次から次と注文できて、支払いを済ませないうちに商品が届きますよね。当然あとから請求書が来てお支払いするわけですが、しっかりと回収できるかがすごく重要なビジネスモデルですよね。そのためヤマトさんのリアルなネットワークを持つ強みが非常に大きいと思います。

 

ヤマトC岡本氏 ヤマトC岡本氏

江原さんありがとうございます。特に後払い系の決済では取込み詐欺に遭うケースも多いので、データとリアルの両方接点があるという点は他社との違いかもしれません。

 

 

BtoB ECサービス導入に踏み切れない企業と踏み切れた企業の今

 

西澤 西澤

ポテンシャルの非常に高いBtoB EC業界ですが、日々現場ではBtoB EC化に踏み切れない、必要性を感じていないと感じている潜在顧客となる企業のご担当者様とコミュニケーションを取る機会が多いと思います。現場では実際にどのような声があるのでしょうか。

 

アイル江原氏 アイル江原氏

BtoB ECの必要性やメリットについてはお伝えすると皆さん理解してくださいますが、踏み切れない理由としては、自分たちのお得意先、もしくは自分たちの仕入れ先がECサービスを使ってくれるかどうかを危惧している点です。これは非常に多くの企業様から言われることで、使ってくれるかどうかに目が行きすぎと言いますか……。EC化率は100%にはならないと思いますが、そこをあまりにも過剰に意識しすぎて、ITが苦手、うちの業界は古い、という固定概念から最終的に二の足を踏み、弱気になって踏み切れないケースが一番多いと思います。

大事なことは自社の都合ではなく利用される相手先にとって便利になる・喜んでいただくという信念を持つことかなと感じます。弊社のシステムを導入して結果的に成果を出している企業様は、「自社だけでなく相手先にも必ずメリットがあるように」というスタンスを共通して持っています。そのため、システムの打合せをしていても、必ず相手先のことも考えたご要望をいただきます。またサービスリリースした直後は、利用企業様に対して営業の方や相手先と接点を持っている方が最初は手厚くフォローされます。サービス開始初期は負荷をかけてでも相手先に少しでも使ってもらえるように浸透させていこうという意気込みがあるんですね。そういう企業様は、結果的に相手先から「ECサービスが使えるようになって便利になった」と言われますし、「もっとこうなったらいいのに」という前向きな要望が出て、よりシステムをブラシュアップしようという好循環に入っていく。相手先と自社の両面を考慮し、ECサービスをより効果的なツールにして行こうという意思をしっかり持っている企業様が成功されています。

 

西澤 西澤

自分たちの業務効率化だけでなく、取引先を含めた視点で導入できるかというところが重要ということですね。コマース21さんは大企業がBtoB EC化に踏み切れない理由についてはどのように感じますか?

 

コマース21小山氏 コマース21小山氏

踏み切れない理由のひとつとしては、事例の少なさもあるかもしれませんね。BtoBの受発注システムの導入を考えた時に、多くの企業様は従来通りのシステムを活用するか、フルスクラッチで作らないと自分たちのやりたいことは実現できないとお考えだと思います。今までの商習慣や自社のルールなどもあるのでECで実現できるとは思っていない。お客様が望んでいることをECでの実現できると知っていただくには、実現方法も含めて事例などが増えてくれば理解も広がるのではと思います。

 

西澤 西澤

特殊だからと言っても、だいたいはコマース21さんの分厚いシステムパッケージで解決できるから絶対にやった方がいい、という感覚は大きいですか?

 

コマース21小山氏 コマース21小山氏

BtoBの場合は事例も少なく他社とも比較することが難しいので、なかなか解決方法が見いだせないことや、お客様ごとに課題があり、自社ルールや商習慣を考えると自社の課題は特別難しいのではないかと考えてしまう企業様も多くいらっしゃいます。我々は今まで多くのお客様の課題と向き合ってきました。なので、お客様が自社は特別で難しいと思われている課題でも、実際には多くの企業様が同じような課題に悩み、共に解決してきたノウハウや実績もります。

 

西澤 西澤

Bカートさんが直面されているケースはいかがでしょうか。

 

Bカート鵜飼氏 Bカート鵜飼氏

やはり既存流通があるというケースですね。業歴が長い会社だと、商流の関係で帳合取引をしなければいけないケースがあったりします。Eコマースは中抜きのような側面もあるので、BtoB ECを始めたいけど、既存流通を刺激したくないと懸念されるケースは多いですね。ただ一方で、その状態が良いとは決して思っていない。自社と似た商材を取り扱う会社がBtoB ECを始めだしているので他社のことを気にされる方は多いです。

他に踏み切れない理由としては、経験がないということに尽きるのではないでしょうか。BtoBで主だった収益をあげている企業の多くは、Eコマースそのものの経験がないという会社さんが多いですね。いわゆる情報処理はできていても、業務でクラウドやネットには触れてこなかったので社内に経験がある方がいないという問題があります。

そして、意思決定をおこなう経営層の方々が世代的にITに馴染みがないためか、EC化のことを本質的に理解できず判断が鈍るケースも多々あると思います。当社へお問い合わせいただくケースとして、社長が代替わりして若返りされたタイミングでEC導入のプロジェクトを立ち上げたというお話が一定数ございます。

その一方で、現場の方々はどうかというと、受注する側はもちろんですが、発注する側もFAX注文を実は面倒だと思っていて、互いに面倒だと思いながら業務を行っているという不思議な状況が存在していたりします。

▲株式会社Dai 取締役 B2BソリューションDiv. マネージャー 鵜飼智史 氏

 

西澤 西澤

ヤマトさんは、現場がBtoB EC化に踏み切れない理由を踏まえ、EC化を推進するポイントは何であるとお考えでしょうか。

 

ヤマトC岡本氏 ヤマトC岡本氏

弊社からBtoB ECをご提案する際、いくつかEC化を推進するポイントがあります。

1つ目は、まず現状の仕事がどう変わるかということをお客様によりイメージしていただくために、プレゼンの場にはデモを持って行きます。お客様の前で、新規会員登録するところから始めて、見積もりを出して受注して、発送して請求するところまでを15分ぐらいでプレゼンします。その過程を見て、お客様自ら、「あれ、思ったよりもできそうだ。」と思っていただけると、前向きに考えてもらえることが多いです。

2つ目が、システムですべてを解決できると考える方がいる場合は、そうではないということをお伝えしています。EC化の推進はシステムだけを導入すれば完了するわけではありません。業務プロセス全体もそうですし、組織や社内外の仕組みを必要に応じて変える必要があります。また、カタログ販売に比べ、ECでは季節ものなどタイムリーな商品を都度陳列して売りやすいので、ECに合った商品開発も一緒に考えていくということもご提案します。

3つ目が、お客様には、『どうすればできるか』という発想を持つ人をリーダーに据えて欲しいとお願いしています。最初の人選で誤ると、システムを入れた直後に否定的な話を始めてしまうこともしばしばあります。

4つ目は、コストをシステムだけで見ないことです。売上対比でどれだけ投資するかが重要です。ECによって売り上げが増えるパターンもあるので、それをちゃんとROI等を指標としてしっかりと提案することが必要です。

5つ目は、BtoB ECは数カ月で結果を出すことは難しく、3〜5年ぐらいかけてジワジワと取引先が増えていき、注文単価が増えていくものだと理解していただくことです。ただ、それを頭で分かっていてもなかなか難しい部分があるので他社の事例も含めてご提案しています。強い想いを持って、長期的な視野で取り組んでいただくことが成功のカギだと思います。

▲左から アイル江原氏・ヤマトC岡本氏・Bカート鵜飼氏・コマース21小山氏・eccLab西澤

 

 

BtoB EC業界の未来

 

西澤 西澤

非常に大きなポテンシャルもあり、一方で多くの課題もあるBtoB EC業界の内情が浮き彫りになったと思いますが、今後BtoB EC業界はどのような未来が待っているとお考えですか。

 

アイル江原氏 アイル江原氏

先ほどから色々と話があるように、なぜBtoBの企業間取引にECを導入しないんだろうと不思議に思うくらい、導入すればメリットが出ると感じています。そこの浸透度合がまだ低いだけで、どこかのタイミングでグッと波が来るんだろうなというのを私も鵜飼さんも待ち続けています(笑)。ですから、今後はいろいろなプレイヤーが増えてくるのではないでしょうか。今は市場が大きく動き始めて少しずつ着目され始めたという状況のため、これまでBtoC向けを中心にやってきたEC系のサービス会社も最近どんどん参入してきていると感じます。システム会社の中でも我々のような基幹業務系のシステム会社がもしかしたら今後BtoB向けのECシステムの領域に参入してくるかもわかりません。また、Webシステム開発会社も出てくると思います。決済会社や物流系に加え、広告マーケティング系の会社などもtoC向けのEC領域はレッドオーシャンのため、どんどんtoB向けの領域にも参入してくると思います。ただ今日皆さんとお話ししたように、BとCの違いはいろいろ経験していかないと分からないことがあります。簡単には成功しづらいので、長年の培ってきた経験とノウハウを活かしてしっかり地道にやっている会社が生き残っていくと考えます。その意味でもここにいる4社が中心になって、市場を牽引していけるようになりたいと願っています。

 

西澤 西澤

サービスの展開としては、そういったことを踏まえて考えていらっしゃいますか?

 

アイル江原氏 アイル江原氏

弊社はこれまで業務課題をシステムで改善する提案を重視して取り組んで来たので、おかげさまで既存業務の負荷が高い課題を改善していく点に関しては、強みを発揮してきたと思います。ただ、BtoC向けのシステム支援をメインにやってきたわけではないので、C向けECでよくあるマーケティング分析や販促などの領域は、弊社としても今後はもっと力を入れていきたいと思っています。

 

西澤 西澤

コマース21さんはいかがですか?

 

コマース21小山氏 コマース21小山氏

GoogleやFacebook、LINEといったtoC向けであったサービスもビジネスユースでどんどん使われているように、世の中的にもBtoCからBtoBに流れが来ると感じています。

先ほどマーケティングのお話が出ましたが、BtoCで活用されている様々なサービスが今後BtoBでも使うのが当たり前という流れになっていくのではないでしょうか。現在、BtoCのECサイトではCXやユーザビリティを考えた様々なツールや仕組みが使われています。表示スピードやレコメンドに関しても1消費者としてサイトを見た時に非常に便利です。アパレルであればWeb上で自分の身長を入力すれば、自分に合ったコーディネートが表示されて、そのコーディネートを購入できる便利な仕組みもあります。今後はこうしたマーケティング的な機能や仕組みがBtoBにも求められるのではないかと思います。

 

西澤 西澤

Bカートさんはいかがですか?

 

Bカート鵜飼氏 Bカート鵜飼氏

Bカートはユーザー数が一定の規模でおられるので、そういった今後の動向もつかみやすいですね。早い段階でBtoB ECに踏み切った企業は、受発注業務の効率化において一定の効果を享受して、次の展開としてデジタルマーケティングの領域を取り組み始めています。BtoBマーケティングといった流れで、MA、CRM、SFAといったツールがあり、利用している企業も多いと思いますが、それらのツールと受発注のところが分断されてしまっている現状がある。これはすごく課題だと思っていています。

ただ、世の中のトレンドを見ても、販売管理、物流、商流、会計、そしてHRなど様々な領域で、多種多様なBtoB向けのサービスがクラウド化していっています。それらに対応すべく弊社では「BカートAPI」を公開しています。今後BtoB ECに限らず企業活動の多くがクラウドに移行していくので、これから訪れるデジタルトランスフォーメーションに対応すべく、「BカートAPI」によってシームレスなデータ連携を実現できる状況を整えていきたいと思っています。

 

西澤 西澤

ヤマトさんはいかがですか?

 

ヤマトC岡本氏 ヤマトC岡本氏

BtoB市場は今後さらに成長すると考えています。ここ1、2年様々な取り組みをしてきて分かったことは、BtoBを通じて多くの価値を提供できるということです。それは売り上げアップ、業務の効率化、利益率の向上、働き方改革の4つがあると思っています。

もう1つお話ししたいのは、集客の手法としてのBtoBのデジタルマーケティングはBtoCとは明確に違う部分があり、状況によってアナログも少し交えていかないといけないということです。マーケティングオートメーションに関しても、HubSpotやSFAなどがあります。それらをちゃんと組み合わせて、ご提供していきたいですね。我々は幸いにして、多くのお客様とお付き合いさせていただいていますが、まだまだ私たちのサービスをお伝えできていないお客様も多いので、今後はさらにBtoBに注力していくためにも、こちらから積極的にお客様にサービスを提案していきたいと考えています。

 

 

※今回参加された各社のサービス導入事例はこちらからダウンロード出来ます。

 

 

BtoB EC向けサービス紹介

 

今回対談にご参加頂いた各企業の提供しているサービスについて紹介していく。

 

アラジンEC

株式会社アイル

アラジンEC

アラジンECは、アイル社が28年間5,000社以上のBtoBのノウハウをベースに構築した、BtoB専用ECパッケージ(Web受発注)システムだ。

企業ごとの商習慣に合わせてカスタマイズ対応が可能なBtoB専用ECパッケージシステム「アラジンEC」は、注文・問い合わせ業務の負荷削減だけではなく、売上アップ・他社差別化のための営業販促ツール、本部と店舗間の出荷指示ツールとしても利用することが可能。非常に特殊な商習慣が根強く残るBtoBの取り引きの細かなニーズへのきめ細やかな対応が可能なシステムだ。
アラジンECの資料をダウンロード

 

クロネコ掛け払い

ヤマトクレジットファイナンス株式会社

クロネコ掛け払い

クロネコ掛け払いは、ヤマトクレジットファイナンス社が提供するBtoB決済における業務負荷とリスクを一気に解消する決済サービスだ。

与信から請求書発行、集金、入金管理、督促まで代行するので、決済に関わる業務効率化を一気に実現することが出来る。また、ニーズの多い、初回取引からの売掛対応が可能であったり、最短5分での与信判定などが強みとなっている。
クロネコ掛け払いの資料をダウンロード

 

Sell-Side Solution

株式会社コマースニジュウイチ

Sell-Side Solution

コマースニジュウイチ社が提供するECパッケージCommerce21 Sell-Side Solution(コマース21セルサイドソリューション)は、柔軟で拡張性の高いシステムを提供。ECサイト上の物販のみならず、あらゆるチャネルのオーダー受付ハブとなるデジタルコマースプラットフォームとして活用できるCommerce21 Sell-Side Solutionでは、BtoBに必要な法人管理や掛け売り設定をはじめ、販売製品制御、基幹システムとのリアルタイム連携、またBtoC ECサイトと合わせたサイト運営など、クライアントのビジネスや業種業態に合わせたカスタマイズでの機能開発が特長。また、ソースコードの開示により内製化支援も行っているので、運用保守を自社内や既存ベンダーで行うことも可能だ。
Sell-Side-Solutionの資料をダウンロード

 

Bカート

株式会社Dai

Bカート

株式会社Daiが運営するBカートは、BtoB取引を前提として開発された、BtoBのためのECサイト構築サービスのため、BtoC向けのショッピングカートシステムでは対応が難しい複雑な取引条件やシステム要件にも対応し、システムのスクラッチ開発・カスタマイズではネックとなる開発コストや納期といったリスクも、ASPサービスだから最小に抑えることが強みだ。導入社数は500を超えており、BtoB向けでは運営実績NO1を誇る。 Bカートの資料をダウンロード