IABによる最新レポートでは、消費者は特にデジタルビデオの広告に辟易していることが明らかとなった。

最新レポート「Outlook2022:The US Digital Advertising Ecosystem/米国のデジタル広告エコシステム」において、IAB(ネット広告業界団体)は、広告に対する消費者の期待の変化を単刀直入に示している。消費者は、従来型の広告にうんざりしており、デジタルビデオ視聴を中断して表示される場合は特にそうであるという。消費者の許容度の低下とブランドへの期待の高まりは、「広告収入で運営されているメディアおよびエンターテインメント・ブランドのオーディエンスの構成と規模」に影響を与えている。

 

サブスクリプションストリーミングチャネルなどの、広告のない、もしくは広告が少ないエンターテインメントソースが大幅に増加しているため、何も対策をとらなければ深刻な結果を招くことになる。そして、IABは「広告を、より幅広いメディアエクスペリエンスの一部としなければならない。つまり、よりホリスティックで価値主導型の体験を提供するために、さらにフレキシブルに、反復的に、アジャイルになり、そして企業が顧客のことを考え関わる際の『常時接続』される一部となる必要がある」と、提案している。

 

特に、広告コンテキスト内での価値交換に対する消費者の要求に着目しよう。IABのCEOであるDavid Cohen氏は、リリースの中で次のように述べている。「消費者は我々に対し、彼らのニーズに再び焦点を当て、広告フォーマットを再構築し、広告のあり方を新たに考案することを望んでいる。次のクリエイティブ革命は、賢さだけでなく有用性に関するものでなければならない」。

 

DEI(多様性、公平性、包括性)は成功へのもう1つの鍵である

消費者の価値観は、ブランドの価値観に反映されるべきである。現在は、優秀な人材を獲得し維持しようと奮闘しているが、ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)は、広告業界内で引き続き重視していく必要がある。レポートによると、「パンデミックは、米国内での社会的および人種的正義の要求と相まって、従業員が現在および将来の雇用主から提供される価値を認識し評価する方法に影響を与えている。そして、『The Great Resignation/大量離職時代』 は、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの実践への高い期待に応えることができる、再考された雇用機会を積極的に求めていることを示している」とのこと。

 

組織内でDEIを推進できない、あるいは、これに遅れをとれば、才能のある人材が競合他社に流れてしまうことになる。

 

政府とウォールドガーデンによる挟み撃ち

将来的に、広告業界は、少なくとも2つの側面において課題に直面する可能性がある。1つ目は、政府と規制当局が、消費者のプライバシー保護を理由に業界の既知のオーディエンスに関連する広告を提供するという能力をさらに制限する見通しであることだ。2つ目は、FacebookやGoogleなどテクノロジー大手のウォールドガーデン(またはウォールドガーデンになる予定の企業)が次に何をするかわからないということだ。

 

「パーソナライズされた広告エクスペリエンスを提供するための、消費者にとって安全な代替ソリューションが開発されなければ、経済的および経営的な混乱が近いうちに生じることになるだろう」とレポートは結論づけている。(レポートは、登録なしでこちらからダウンロードが可能)

 

気にかけるべき理由

私たちは、伝統的な広告の終焉の日を迎えているのだろうか?そうに断言するには時期尚早である。とりわけ、私たちの多くがさらに大量のコネクテッドOOHビルボードに囲まれ、動画中にスキップできない広告に悩まされている今日では、そうである。ストリーミングTVが、自発的に送信されたファーストパーティのデータ(Cookieを使用していない)を通じて家庭をターゲットにするという魅力的な方法を提供していることを考えれば、すべてが悲観的というわけではないのだ。

 

しかし同時に、消費者が価値の交換を求めていることが明らかになってきた。彼らは、その時々の自分の個人的なニーズに合った情報やコンテンツ、エンターテインメントを求めている。それを実現するためのメカニズムは存在する。しかし、オーディエンスが興味のない広告を強制的に表示させることは、その1つではない。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の10/18公開の記事を翻訳・補足したものです。