PPC管理の自動化が進むなかでも、同じ自動化ツールを利用する他事業者と自社キャンペーンを差別化するためのコツはある。機械学習のおかげで、誰もが平均的な結果を得られるようになったが、より輝かしい成果を獲得したいのならば、いかにマシンと連携すべきかを知る必要があるだろう。

 

マシンを有効に活用する一つの方法は、マシンに自社ビジネスについて教育させることだ。つまり、現在最も人気のある自動化の背後にある、学習モデルのPPC教師になることである。

これまで最適化してこなかったが、今では極めて重要となっている2つの要素がある。それは、設定した目標の伝え方と、コンバージョン値のレポート方法だ。本記事では、これらの新しい最適化をスタートする方法を考えてみたい。

 

PPCの最適化方法の変化

目標とコンバージョントラッキングの最適化は、長年実行してきたPPC最適化作業とは異なるものかもしれない。しかしそれらは、今の新しい世界では、キーワードの選択、入札調整、広告の最適化など、広告主が以前からずっと行ってきた作業と同レベルの重要性を有している。

 

マシンを、自社チームの重要な新入社員として考えてみてほしい。新入社員に最高のパフォーマンスを発揮させるには、自社ビジネスについてくまなく教える必要がある。何を達成すべきなのか、そして、その成果をどう測定するのか。このようなトレーニングは、人間と同様にマシンに対しても有効であり、チームが追い求める結果を出せる可能性が高くなる。

 

価値に重点をおいたPPC最適化

Google Adsのような広告プラットフォームは、広告主が目標を管理し、価値あるレポート作成のためのツールを提供している。これらの利用方法を理解し、マシンにあなたが何をして欲しいと望んでいるかを教えることが重要である。

 

例えば、何千点もの商品からなるカタログを持つ小売業者がいて、彼らの目標は会社の利益を増やすことだとする。ROAS(広告費用対効果)の目標値という問題にすぐ直面するが、ターゲットとするROASは、広告主が収益性の高いPPCという真の目標を達成するために使用する一つの設定値に過ぎないことを覚えておくべきである。

 

この収益性目標達成のために、マシンを管理する基本的な方法は2つあり、どちらも広告主の損益分岐点をマシンに理解させることにつながる。

1. 1つ目のシナリオでは、広告主が多くのキャンペーンを実行し、それぞれに利益率に基づいた異なるtROAS(目標広告費用対効果)ターゲットを設定する。また、コンバージョントラッキングを使用して、各販売の注文額をレポートする。

2. 2つ目のシナリオでは、1つのキャンペーンのみを実行し、1つのtROASを設定する。そして、コンバージョントラッキングで利益額をレポートする。

 

シナリオ1:ゴール最適化による収益性向上

シナリオ1は、多くの広告主にとって、長年使用してきた既存のアカウント構造に基づいて構築されているため、より受け入れやすいものに感じられる。構造的精度が高く、キャンペーンごとに異なるtROASを設定するなど、要素ごとに異なるターゲットを設定することでパフォーマンスを最適化している。これは、広告主が手動入札時代に、広告グループやキーワードごとに入札額を設定していた作業とよく似ている。

 

注釈 :1つ目のアプローチでは、広告主は、既存のアカウント構造において収益目標達成のための異なるtROAS目標を設定し、既存のコンバージョントラッキング設定を使用する。

 

各キャンペーンのtROAS目標は、キャンペーン対象商品の平均利益率の要因となる。利益率の高い商品のキャンペーンは、利益率の低い商品のキャンペーンよりも低いROASで収支が合うようになっている。

 

コンバージョントラッキングでは注文額がレポートされるため、利益率ベースのtROASはキャンペーンを収益性向上に導く。例えば、利益率50%の商品を販売するキャンペーンでは、ROASが200%でも収支が合う。つまり、同じキャンペーンにおける100ドルの注文は、50ドルの利益に相当する。ROAS200%をターゲットとしているため、このキャンペーンは広告費1ドルに対して約2ドルの売上を達成すべきであり、100ドルの売上を得るために50ドルを費やすことも可能となる。つまり、100ドルの売上から50ドルの利益を得るために、50ドルの広告費が費やされ、このキャンペーンの収支が合ったことになる。つまり、目標達成である。

 

シナリオ2:コンバージョン値最適化による収益性向上

シナリオ2は、今の自動化の時代に、Googleが提唱している「フラットな構造」により合致している。しかし、うまく機能させるためには、広告主がコンバージョンから受け取る正しい価値をうまく伝えていることが前提となる。

 

注釈: 2つ目のシナリオでは、広告主はコンバージョン値のレポート方法を変更し、フラットなアカウント構造を導入することで収益性を向上する。

 

広告主がコンバージョントラッキングを使用して、コンバージョンからどれだけの利益を得たかをGoogleに伝えている場合、ROAS100%のターゲット以上のパフォーマンスを達成すれば、利益を得たという結果になる。一方、広告主が注文からの利益ではなく注文額をレポートしている場合は、利益率の高い商品と低い商品の売上が同じように扱われているため、100%のROASでは良い結果を出すことはできない。

 

シナリオ1の例で考えてみると、100ドルの販売で50ドルの利益が得られ、その50ドルがコンバージョン値としてレポートされたとする。すると、そのキャンペーンのtROAS100%とは、システムが売上を得るために50ドルを費やすことできることを意味する。これは、シナリオ1と同じ結果であるが、達成のために使用する設定が異なる。

 

コンバージョン値フィールドを使用した収益性レポートには、ユーザーがクリックした広告で表示されているものとは別の商品を購入するというシナリオに対し最適化できるという利点もある。これにより、ユーザーが、ある広告からサイトにアクセスした際に、利益率が異なる複数の商品を行き来するという問題に対処できる。

 

目標と価値のレポートの両方を最適化

上記の2つのシナリオは、広告主の真のビジネス目標である「収益性の高いPPCクリックの獲得」を達成するために使用される。しかしどちらの方法でも、本当に望む結果をマシンに教えるためのあらゆる方法を最大限に活用していないため、不完全である。

 

そこで、広告主が目標と価値の両方をコントロールする第3のシナリオを提案したい。つまり、ターゲットが真の目標を反映し、価値が真の貢献度を反映するシナリオである。

 

注釈: 完璧なシナリオでは、広告主は目標とコンバージョン値の両方を最適化し、自動化されたPPCに対するコントロールレベルを向上させる。

 

綿密なアカウント構造を持ち、最適化された価値のレポーティングが可能な広告主は、自社のビジネスゴールをマシンに教えるのに非常に有利な立場にある。

 

例えば、彼らは、ビジネスラインごとに異なる収益性目標を設定することができる。ある広告主は、パティオ用の家具の販売シーズンが終わりに近づいていることに気づき、冬に売れ残りの在庫を抱えるよりは、収益性を犠牲にする方が良いと考えるかもしれない。精度の高いアカウント構造を持つことにより、異なるアイテムを異なる目標で扱うことが可能となる。

 

しかし、彼らは、デッキチェア販売の真のビジネス貢献度もレポートしているため、パティオ用家具販売で利益を上げなくても収支を合わせられれば問題ないと言った場合、自動入札プロセスは適切な入札額を設定する。そして、同時に、アカウントの他の部分をより高い利益獲得のために最適化し続けることができる。

 

それでは、正しいビジネス目標の設定と真のビジネス価値を反映したコンバージョン値のレポートをサポートするアカウント構造に基づいて、PPC最適化戦略を実行する方法を見てみよう。

 

より迅速なPPCキャンペーン作成

多様なビジネス目標を達成するために数多くのキャンペーンを設定することは、PPC広告主であればよく理解できることである。しかしそれは、魔法のように実行することは不可能で、Optmyzrのようなツールを利用しない限り、ただ大変な作業の繰り返しとなる。例えば、Campaign Automatorを利用することにより、商品フィードのようなビジネスデータを、商品カテゴリ、ブランド、販売優先度などの一般的な要素にフォーカスして、複数のキャンペーンにおいて何千もの適切に整理された広告グループに変換することができる。Optmyzr Shopping Campaign Builder やRefresherでは、ショッピングキャンペーンや商品グループに対して同様の処理を行うことができる。また、PPCチームが、異なる属性に基づいて戦略を方向転換するために、異なる構造が必要となる場合、これらのツールを使用すればキャンペーンを簡単に再構築することができる。

 

注釈: 理想的な構造構築のための自社ビジネスルールに基づいたキャンペーン作成をスピードアップするツールを使用する。

 

広告主は、自社のビジネス目標をサポートする完璧な構造を構築してから、Googleへのコンバージョンレポート方法の最適化を始めるべきである。

 

価値レポートの最適化

コンバージョン値の最適化は、多くの広告主にとって新しい領域である。価値データは、すでにコンバージョントラッキングに流入している。そのため、従来は、多くの広告主にとって、価値データを最適化の手段として使うことは最優先事項ではなかった。

 

しかし、今日では、優先順位は高くなっている。そして、広告主には、コンバージョントラッキングピクセルで正しい値をリアルタイムに送信できない場合に、より正確なコンバージョンデータをGoogleにレポートするための3つのオプションがある。それらのオプションは、次の通りである。

 

  • オフラインコンバージョンインポート(OCI)によって、広告主は、GoogleクリックID(gclid)を使用した追加のコンバージョンシグナルを作成することができる。
  • コンバージョン調整によって、広告主は、トランザクションIDとともにコンバージョン値を修正することができる。
  • コンバージョン値ルール(ベータ版)によって、広告主は、オーディエンス、ロケーション、デバイスなどの基準に基づいてレポートされた値を修正するルールを構築できる。

 

まとめ

自動化された世界におけるPPC最適化においては、マシンに自社ビジネスについて教えるハイレベルなインプットをどのように設定するかがますます重要になっている。真のビジネスゴールとコンバージョンから得られる価値をより明確に伝えることで、マシンは、適切なコストで適切なタイプのコンバージョンを優先することを習得する。そのためには、ビジネス目標に沿った高度なアカウント構造を作成するOptmyzrツールや、コンバージョンの質をより正確に把握した上でコンバージョン値を修正するGoogleの無料ツールなどのソリューションを、組み合わせて導入していくこともできるだろう。

 

※当記事は米国メディア「Martech」の7/13公開の記事を翻訳・補足したものです。