徐々に浸透するファッションレンタルECサービス - 主要12サービスまとめと今後

 

ファッションレンタルECサービスは数年前から米国で流行し日本にも上陸。ここ一年半程度で急激に国内でも提供サービスが増えてきている。多くのサービスは定額制や借り放題、返却期限無制限などユーザーに最大限のメリットを提供し差別化を図っている。ここ最近は一時期の話題性はなくなってきたものの、徐々にユーザーに浸透してきている様子も伺える。今回は7サービスの紹介と主要12サービスのまとめと今後の展開を考えていきたい。

 

<参考>

活気づくファッションレンタルEC市場 - 各サービスはどのように差別化を図り勝機を見出していくのか

 

 

Rcawaii(アールカワイイ)

 

ITベンチャーのグラングレスが、2015年12月よりサービス提供を開始した月額制のファッションレンタルサービスRcawaii

取り扱いブランドは、BEAMS、CECIL Mc BEE、DURAS、EGOIST、MOUSSY、SLY、snidel、UNITED ARROWS、ZARAなどで、全体的にギャル系のブランドやコーディネートが目立っている(雑誌『小悪魔ageha』への掲載実績もあり)。料金は送料込みで月額9,980円、レンタル期間は定められておらず、月に何度でも好きなタイミングでの利用が可能だ。また、初回登録時の好みの情報に合わせてスタイリストがレンタルする洋服を選択し、洋服とコーディネートパターンに対してコメントを添えてくれるため、手持ちの服との合わせ方や着回し方のヒントにすることができる。

 

 

メチャカリ

 

メチャカリはearth music & ecologyでお馴染みのストライプインターナショナル(旧クロスカンパニー)が、2015年9月にローンチしたスマートフォンアプリによるファッションレンタルサービス。

取り扱うのはearth music&ecologyやE hyphen world gallery、SEVENDAYS=SUNDAYなど、自社で展開する7つのブランドのアイテムだ。利用料金は月額5,800円で、最大3点まで借り放題(返却期限なしで、返却時に別途手数料500円が必要)。アパレルブランド発のサービスらしく、提供するアイテムは新品で、好きな色とサイズが選べるのが特徴だ。また、60日間同じアイテムを借り続けるとユーザーのものになるというプレゼント特典も設けている。アプリ内には多くのコーディネート例が掲載されており、それを見てセットで借りていくユーザーも多いのだとか。ターゲットは18歳〜24歳で、意外にも既存顧客以外のユーザーが約6割を占めているのだそう。システムは自社のECと連携しており、販売在庫をそのままレンタルに回し、さらに返却された商品は自社のECサイトで中古品として再販売している。

 

 

Licie(リシェ)

 

Licieは2015年12月に表参道にサロンをオープンした、実店舗型レンタルファッションサービス。

取り扱いブランドは100以上にも上り、洋服やバッグ、帽子、アクセサリーなどを月額5,500円で最大2点まで借りることができる。レンタル期間は最大14日間だが、初めてのユーザーには1泊2日で月額500円のトライアルプランも用意。Licieの最大の特徴は、他のファッションレンタルサービスと違い、実店舗で試着をした上で借りられる点だ。しかもその場ですぐにレンタルできるため、その日の予定に合わせて気軽に利用できるというメリットもある。ユーザーは20代後半〜30代前半の女性で、パーティーに着ていけそうなハイブランドのドレスから、アラサー世代が日常使いできるアイテムまでバランス良く取り揃えており、他のレンタルサービスとはきちんと棲み分けができていると言えるだろう。

 

 

EDIST.CLOSET(エディストクローゼット)

 

ソーシャルゲームアプリを手がけるenishが、2016年1月にローンチしたファッションレンタルサービスEDIST.CLOSERT

会員登録すると、「定番リッチコーデ」、「上品カジュアルコーデ」、「綺麗ハンサムコーデ」の中からいずれか1つのコーディネートが自動的に送られてくる。内容はトップス2点、ワンピースを含むボトムス2点の計4点で、それぞれモデルなどにも愛用者が多い大人向け通販サイト「STYLE DELI」とのコラボ商品だ。利用料は月額8,200円で(3ヶ月サービス利用継続のプレミアム会員は7,700円)、レンタル期間は最低1カ月。専用サイトでは、女性誌で活躍するスタイリストやアンバサダー監修による30日間分のコーディネート見本を公開しており、毎朝のコーデ選びにもう迷わない!を売りにしている。着回しの良さを売りにしていることからも分かるように、デザインはどれもシンプルなものばかり。ただし、利用できる3タイプのコーディネートはワンシーズンに1度しか変わらないため、自分のペースで次々と新しいアイテムを求めるユーザーにはやや物足りないかもしれない。

 

 

Cendrillon Homme(サンドリヨン・オム)

 

表参道に店舗を構える男性向けファッションレンタルサービスCendrillon Homme

扱うのは1着30万〜50万円の洋服・小物類で、グッチやプラダ、ディオールオム、サンローランパリ、バルマンなどのブランド品ばかりだ。Cendrillon Hommeは店頭でのレンタルしか行っていないということもあり、ターゲットは都内近郊の20代〜30代の男性に限定されている。会員には、レンタルのみ利用ができる一般会員と、レンタル+自分が所有している洋服の貸し出しもできるVIP会員の2種類が用意されている。一般会員はレンタルした分だけ料金を支払い、VIP会員はレンタル料に加えて月額1万円を支払う仕組みだ(ただしレンタル料金は20%オフ)。料金はジャケットなら2泊3日で6,000円〜、スーツなら7,000円〜と借りやすい価格で提供している。2015年12月にローンチして半年、今後は貸す人と借りる人それぞれのユーザー数をどこまで伸ばせるかがポイントとなる。

 

 

KASHI KARI(カシカリ)

 

ネクタイ、カフス、タイピン、チーフなど、スーツスタイルに合う2,500アイテムの中から好みの品をレンタルできる男性向けファッションレンタルサービスKASHI KARI

ブランド古着の買取・販売を行う株式会社タナクロと、メンズストール通販サイト「DAZZLE」を運営する株式会社T2が、2015年7月よりサービスを開始した。取り扱っているのは、Paul Smith、BEAMS、UNITED ARROWSなどのファッションブランドから、HERMES、LOUIS VUITTON、VERSACE、GUCCI、CHANEL、FENDI、PRADAといったハイブランドまで実に幅広い。利用プランは月額3,600円、5,800円、12,600円の3種類から選ぶことができ、それぞれ対象となるブランドやレンタル可能な点数が異なっている。レンタル期間は無制限で、気に入った商品は購入することも可能。実際の使用例がよりリアルに想像できるように、サイト上には32種類のコーディネートイメージ画像が掲載されている。

 

 

leeap(リープ)

 

女性スタイリストが提案するコーディネートがそのまま自宅に届く、男性向けファッションレンタルサービスleeap

ウェブサービス事業を行う株式会社キーザンキーザンが2016年6月にローンチしたばかりのサービスで、スタイリストにファッションの相談ができるほか、着こなし方のアドバイスなどももらえる。ユーザーの好みはスタイリストとLINEでやり取りしながら探ってもらえるので、自分に合わないものが来るのでは?という心配も無用だ。取り扱いブランドは、UNITED ARROWS、TOMORROWLAND、BEAMS、JOURNAL STANDARD、SHIPS、nano・universe、AMERICAN RAG CIEなどで、1回の利用でシャツ2枚とパンツ1枚といった2パターンのコーディネートが届く。アイテムは気に入れば購入も可能で、月に1回のベーシックプランが月額7,800円、レンタル回数無制限のプレミアムプランが12,700円となっている。他のレンタルサービスと異なり、レンタル期間中は自分で洗濯して何度でも着回すことができるため、より日常使いに適したサービスと言えるだろう。

 

 

主要12サービスまとめと今後

 

今回取り上げた7つのサービスだけでなく、当サイトでこれまでに取り上げた12サービス(air ClosetSUSTINALaxusFreshNeckDress StockRcawaiiメチャカリLicieEDIST.CLOSETCendrillon HommeKASHI KARIleeap)をここでまとめてみよう。

徐々に浸透するファッションレンタルECサービス - 主要12サービスまとめと今後サービス開始の時期の順に見てみると、一番古いFreshNeckが2014年10月からサービスを開始しているが、9サービスが2015年の1年の間にサービスが開始されている。昨年末から今年にかけてもまだまだサービスの提供が続いており、勢いが継続していると考えてもいいだろう。しかし、一方でアクセサリーの月額制レンタルサービスの「Lovin’Box(ラビンボックス)」やメンズ向けのファッションレンタルサービスの「bemool(ビモール)」が2015年中盤に相次いでサービスを終了(事業譲渡・ピボット等)しているなど競争も激化している。

メンズ向けサービスも増えてきており、12サービス中4サービスにのぼる。また、ファッション全般という切り口だけでなく、バッグ、ドレス服などの商品の利用シーンや目的の絞り込みや、ECサイト連動やスタイリストとのコミュニケーションを取れることなど、様々な切り口での差別化要素が見られる。その中でも今後の切り札となりそうなものはアパレルブランド自身がサービスを提供するものと、実店舗型のものではないだろうか。ファッションレンタルECサービスは一度使ってみると比較的継続率が高いことを考えても、いかに使ったことがないユーザーに接点を設けることができるかが鍵になるだろう。例えばアウトレットモールの各ブランド店舗内にレンタルサービスのスペースを設けたり、通常のブランドのECサイト内で購入かレンタルかを選べるような形でサービスを提供出来ると利便性も高く、接点も広がり、利用者も増える可能性も高くなるのではないだろうか。いずれにしても、消費型の社会から、時代は循環型の社会にシフトしようとしている。そのためこのようなシェアリングコミュニティの発達は各ジャンルにおいて見られる現象だ。アパレルにおいてもファッションレンタルECサービスの勃興は必然ともいえよう。今後のサービスの定着化に期待したい。