アパレルをオンラインで購入する際のサイズ問題をクリアする3つの処方箋 - アパレルECの難題を乗り越えることが出来るのか

 

アパレル商品をオンラインで購入する際に、気に入った商品があったとしても1番不安になることは「サイズが自分に合っているのか」だろう。特にアパレルはちょっとしたサイズの違いによっては全く使い物にならない商品になってしまうケースも多く、非常に根が深い。そのため、インターネット上だけでサイズ感を完全にイメージすることが難しく、購入を躊躇してしまう原因の1つとなっている。今回はそんなアパレルECの最大の課題であるサイズ問題を払拭するための3種類の処方箋ともいうべきアプローチを紹介していく。

 

<参考>

アパレルECに横たわる根源的な3つの課題は解消するのか - サイズ・レコメンド・コーディネート

 

 

ロコンド - 30日間返品無料

 

ロコンドは「買ってから選ぶ。」をコンセプトにした30日間返品無料の通販サイト。気になった商品を一度購入し、届いたら自宅で試着して気に入らなければ返品することができるという新しい取り組みを行っている。

 

 

自宅で試着ができることによって、手持ちの服とのコーディネートを好きなだけ楽しめたり、家族や友人に相談することができる。そして何より、ECサイトでの購入で最も心配なサイズの確認がしっかりできるというメリットがある。そのため、色違いやサイズ違いで購入して、普段は着ない色に挑戦してみたり、実店舗のようにすぐに別のサイズを試したりすることが可能となる。

返品の際は、返品理由を記入して同封されている返送用の宅配伝票を貼ってヤマト運輸に発送するだけ。ただし、商品を届いた状態にして返品しなければいけないため、タグを切ったり梱包材を捨てたりしないように注意が必要だ。返品が確認されると、1週間後にはクレジットカード経由又は銀行口座への振込みで返金される。ポイントを利用して決済した場合でもきちんとポイントが返ってくるようになっている。ロコンドはこれらのサービスが購入金額に関わらず無料で行っている。また、過去1年間で1000点以上返品されたブランドの返品理由を集計し、返品レポートを発表した。各ブランドの商品が大きく感じたのか小さく感じたのかの割合を表示することによって、サイズ感がわかるようになっている。これを見ることによって、比較的小さめに作られているブランドだから1サイズ大きいものを注文しようなどとサイズを選ぶ際の参考にすることができる。

ロコンドはアウトレット商品を扱うLOCOLET、雑貨類を扱うLOCOPLA、スポーツ用品を扱うLOCOSPOも展開しており、それら全てでロコンドと同じように返品サービスを行っている(ただし、購入金額が3000円以上の場合)。

 

 

LOCOLETは、有名ブランドの正規品を最大80%オフで購入でき、これまで返品は可能とされることの少なかったアウトレット商品の返品を可能とした。LOCOPLAは雑貨類や下着、化粧品などを扱う。化粧品は、同梱されているサンプルを使用し、合わなければ本体を返品できるようになっている。LOCOSPOはロコンドとスポーツ用品店などを展開する株式会社アルペンが資本・業務提携をしてオープンし、アルペンがメインの出店社として参加している。また、この8月にも30日間返品無料のLOCOMALLを楽天市場に出店した。

アパレル商品の返品可能サービスから始まったロコンドは、アウトレット商品や化粧品など販売するジャンルを拡張し、ECサイトで購入する際に不安になるそのほかの商品の返品も可能とした。EC利用の障壁を解消するためのサービスの1つとなるかもしれない。

 

 

Original Stitch - カスタムオーダー

 

Original Stitchは、オーダーメイドのシャツをWeb上で注文できるサービス。いわゆるカスタムオーダーECだ。生地や柄、ボタンの色や襟の形など細部まで自分好みに組み合わせてオリジナルのシャツをデザインできる。注文したシャツは日本人の職人がひとつひとつ仕立てあげるハンドメイドだ。

 

 

生地は約200種類から選ぶことができる。生地の厚みや柄、価格帯などから絞って選択することも可能だ。生地を選んだら、細かいデザインをする。襟や袖の生地やその裏地、刺繍のフォントや色など18もの項目をカスタマイズできるため、誰とも被らない自分だけのデザインが簡単にできる。

 

 

サイズは首回り、裄丈、胸囲、ウエスト、着丈など11か所の採寸をもとに作成される。身長と体重、普段のシャツのサイズと好みのフィット感を入力すると自動で計算されるので、メジャーで測る手間がいらない。もちろんそのあと0.5cm単位で変更していくことができる。それぞれのサイズの測り方を動画で紹介されているため、より自分にぴったりなサイズのシャツをオーダーすることが可能だ。裄丈とカフス回りは左右別で入力ができるため、好みのフィット感を追求することができるのである。しかも、30日間の無料交換保証がついており、仕立て直しをしてもらえるのも嬉しいポイントだ。

 

 

販売価格はデザインによって異なるが9,000円~12,000円程度。注文から約3週間で配送される。今年9月に会員登録者数はグローバルで10万6千人を突破し、そのうち国内は4万3千人だという。登録者数10万人突破の特設ページには、自分流のドレスシャツをデザインする人が52%で、シンプルなフォーマルシャツをデザインする人は25%、カジュアルなシャツをデザインする人は17%と発表されている。どんなシーンで着用するシャツでもオーダーでき、シンプルな中にも自分らしさを出すなど新しいおしゃれの楽しみ方が提供されている。

 

<参考>

用途の広がりを見せるカスタムオーダーEC - オンラインでの個別ニーズ対応の終着点となるのか

オンラインでモノをデザインしてそのまま売る - C2CとソーシャルコマースでカスタムオーダーECの新しい波を作る

カスタムオーダーEC - どこまで消費者の想像力と購買意欲を刺激し続けることができるか

 

 

Virtual Fitting Room - バーチャル試着

 

今年7月、楽天がイギリスでバーチャル試着サービスのVirtual Fitting Roomを展開するFits.me社を買収した。Virtual Fitting Roomは、身長や体重、体格などを入力して自分の体型のバーチャルマネキンを作り、服のサイズ感を確認することのできるサービスだ。

 

 

フィットするサイズを提案してくれたり、それぞれのサイズを試着させたりすることができる。

 

 

このサービスは、いわばオンライン上に自分自身のサイズと全く同じ人形を作り上げ、着せ替え、その様子を第三者的に確認することを可能としている、アバターのリアル版ともいえる近未来を感じさせるものだ。同社は楽天に買収されても独立の事業として展開していくが、今後楽天が同社のサービスを導入し、楽天のEC事業拡大を支援していく可能性もある。楽天は力を入れているアパレル部門の購買率を向上させるため、サイズ問題を解消する動きに注力している側面もあるためだ。

 

<参考>

アパレルECでWEAR、Virtusize、VAULTが提案する次世代のオンライン商品選択の姿

 

 

アパレルECの難題を乗り越えることが出来るのか

 

ここ数年のテクノロジーの急激な進歩により、オンラインでモノを購入するためのハードルの多くは払拭されつつある。しかしいまだにアパレルECにおいては「サイズ問題」の抜本的な解決策が見当たらない。そんな中、手持ちの服とサイズを比較してサイズ感を測れるVirtusizeや、愛用のブランドのサイズを登録することで自分のベストなサイズを選出してくれるTrue fitなど、これまでもサイズ問題の解消を後押しするサービスは登場し、導入先を拡大してきていた。

今回紹介した3つの“処方箋”は、それぞれ問題解決方法が異なっている。ロコンドは返品送料を無料にすることで、1度購入して家で試着することを気軽にできるようにした。Original Stitchはきちんと採寸されて作るイメージのあるオーダーメイドのシャツを自動計算を利用してインターネット上で注文できるようにした。しかも、30日間の無料交換保証がついているので、自分好みのフィット感を追求できる。Virtual Fitting Roomはビジュアルでサイズ感を選ぶことができる。

 

 

しかしそれぞれの取り組みには、まだ一長一短があるのも事実だ。そのようなことを考えると、どれか一つがその求められている解決策となるのではなく、それぞれの解決方法を組み合わせ徐々にサイズ問題が気にならなくなってくる、という方向性が一番現実味があるのかもしれない。アパレル商品だけでなく、家具や雑貨などでも質感や大きさがわかりにくいなどオンラインでの商品購入には不安な点がないとはいえない。新しいテクノロジーやサービスでこういった問題も解消され、今以上に快適にオンラインでの商品検討が行われるようになる未来を期待したい。