CCPA、BIMI、AMP、音声、AIなどのテクノロジー関連のトレンドが2020年のメールマーケティングへのアプローチをどのように変えるかについて、April Mullen氏(世界初の予測メールインテリジェンスプラットフォームSparkPost社のメールストラテジスト)から示唆を得た。

 

Q:CCPA(カリフォルニア消費者プライバシー法)が公式に発効されたが、 米国のプライバシー環境は変化し続けるのだろうか?

カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)が2020年1月1日に施行されたが、それに伴う変化はカリフォルニア州だけにとどまらない。その他のいくつかの州、さらには連邦政府でさえ、法律を制定、あるいは将来的な法律制定に向けて取り組んでいる。これは今後、米国でプライバシーの問題がさらに複雑になることを意味している。

 

ブランドは、最小限の実行可能なオプションを提供することにより問題回避を試み、新しいプライバシー法が制定されるたびにそのプロセスを繰り返すのではなく、より高い基準を設定する必要がある。私は、消費者情報の取り扱いに関して、ベストプラクティスの全面的な実施に焦点を当てているPrivacy by Design(個人情報を扱うシステム構築の際に、その構想段階から個人情報保護の施策を組み込むこと)を支持している。 高い基準を採用することで、プライバシー法が変更されるたびに、ブランドのビジネスが振り回される必要がなくなるのだ。

 

Q. BIMIについてよく耳にするが、実施する主なメリットとは?

BIMIは、Brand Indicators for Messaging Identificationの略で、特定のメールボックスプロバイダーの受信トレイにおいて、送信者のブランドロゴを表示できる新しいメール仕様のことである。BIMIのメリットには期待できる。その理由として、まず1つ目は、プライバシーが重要視される現在において、「送信元」の名前とEメールアドレス以外に、受信トレイでブランドを識別する別の方法が提供されることである。2つ目は、なりすましに対するブランドの保護につながる点である。最後に、BIMIをサポートするメールボックスプロバイダーの受信トレイに、企業からのメールを届けることが可能になるからだ。

 

BIMIを導入する場合は、まず、SPF(Sender Policy Framework:DNSを利用して送信元ドメインが詐称の検査をするための仕組み)、DKIM(DomainKeys Identified Mail:送信者のなりすましやメールの改ざんを検知できるようにするもの)、およびDMARC(Domain-based Message Authentication, Reporting, and Conformance:送信ドメイン認証技術の1つで、SPFとDKIM両者を利用しメールのドメイン認証を強化するもの)ですべてのEメール送信の認証確認を行う必要がある。そして DMARCの実行も確認しなければならない。すべてが完了されると、DNS上にBIMIレコードを示し、検証済みマーク証明書(VMC)を取得できる。

 

Q. AMPは電子メールにとって興味深い開発。実施しているブランドが増えないのはなぜか?

ユーザーがストレスを感じることなく、高速表示可能なWebページを実現するための仕様であるAccelerated Mobile Pages(AMP)は、Eメール関連の最も興味深い開発といえる。AMPを使用することで、ウェブサイトにクリックスルーしてコンバートする代わりに、メール内で直接コンバージョンが可能に。これは、Eメールの本文にコンバージョンエリアを正しく配置することで、Eメールコンバージョンファネル全体に変化をもたらす可能性がある。なぜもっと多くのブランドがAMPを実施しないのだろうか?

AMPには、解決すべきいくつかの問題がある。 以下にその課題を挙げていこう。

 

  • Eメール開発者は、AMP機能を持つすべてのEメールにおいて、3つのバージョン(HTML、テキスト、およびAMP)を開発する必要がある。時間に余裕がある開発者はそう多くはないのであろう。
  • AMPは、こうしたEメール難解な開発と追跡を行う少数のmatech(「Marketing」と「Technology」を掛け合わせた造語で、企業がマーケティングにITを取り入れることで高速で効果的なビジネスを展開できるようにするもの)ベンダーのみが提供。
  • AMPに対応できるメールボックスプロバイダーは限定されている。Gmail、米国の携帯電話事業者Verizon(大手インターネットサービス会社AOLとYahoo)、Outlook、そしてロシア最大の無料電子メールサービスMail.ru
  • 一部の業界専門家は、Eメールが安全な通信媒体ではないということを考慮して、セキュリティに関しても懸念を表明している。

 

これらの課題を考慮しても、AMPの開発はEメールにとって将来有望であり、2020年のイノベーション計画の一部としてテストすることを検討すべきである。

 

Q. 2020年の戦略の一つとして「音声」機能を検討する必要はあるか?

音声は、表面的には斬新に見えるかもしれない。SiriAmazon AlexaGoogle Assistantといった音声アシスタントを活用してメールを読む人は増加している。さらに重要なのは、視覚障害のある人にとって、スクリーンリーダーがメールを読むための唯一の手段であるということを考慮することだ。 2020年には、すべての人々がメールにアクセスできるようにすることが優先となる。障害のある人がコンテンツにアクセスできるようにするのは、すべき当然のことなのである。

 

音声の最適化に関する諸注意:

  • 音声に関するプライバシーおよびセキュリティポリシーについて、透明性を保つこと。 それらが実行されていることを確認する。
  • 「音声」に適したCTA(行動を促すフレーズ)を展開する(つまり、顧客は自分の声で「クリック」することはできないが、電話を掛けることはできる)
  • 「送信者名」、「件名」、「プレビューテキスト」を明確に記載し、メールは「テキスト」のみで作成する
  • 常に利用可能なEメールのテキストのみのバージョンを用意しておく

 

Q. AIに仕事を奪われてしまうのではないかと不安で、会社にAIを導入することを躊躇している。 AIはEメール関連の仕事に悪影響を与えるのだろうか?

メールマーケティングの仕事に関しては、AIが人間に取って代わるとは考えられない。 ただし、メールマーケティング担当者の役割の性質が変化する可能性がある。AIは、「オーディエンスの迅速な確立」、「コンテンツのパーソナライズ化」、「適切な時間とチャネルの決定をサポートする」という点で、ますます容易にキャンペーン開発のライフサイクルに多大な変化をもたらすだろう。AIは自己最適化が可能なため、人間が行うよりも迅速に、テストや学習がもたらすメリット実現することも可能である。

 

しかしながら、人間の介入や戦略的思考を伴わないAIは役に立たないだろう。AIアルゴリズムにおいて、適切な制御を行い、カスタマーエクスペリエンスにプラスの影響を与えられるのは人間なのである。 AIが将来さらに普及するとしても、データと戦略を理解しているマーケティング担当者には、まだ活躍の場があるだろう。現在AIは初期段階にあり、その機能は過剰に宣伝され過ぎている。AIが、マーケターの仕事を奪うことはないのだ。AIによって、従来の仕事は簡易化されるが、マーケティング担当者は、その運用よりも戦略に重きをおく業務に従事することになるだろう。

 

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の1/28公開の記事を翻訳・補足したものです。