米トランプ大統領は2018年3月29日(木)、Amazonを非難するツイートを投稿した。それには自身の政権が何らかの規制をするかもしれないという含みがあった。

 

 

「私は選挙のずいぶん前からAmazonに関する懸念を述べてきた。他社とは異なり、Amazonは州政府や地方自治体にほとんど税金を納めておらず、国家の郵便システムをまるで配達少年のように扱っている。(それがわが国に巨大な損出をもたらし)何千もの小売業者を廃業へと追いこんでいるのだ!」。

Amazonの創設者兼CEOのJeff Bezos氏は、米国のトップ新聞社の1つであるThe Washington Postの所有者でもあり、またトランプ氏が大統領就任以来、トランプ政権にとって最大の悩みの種となる1人でもある。

米メディアサイトAxiosは2018年3月28日に、トランプ氏が最近Amazonの行動を非常に気にしており、別の規制の可能性を探っていると報道していた。

米大統領報道官Sarah Sander氏は、28日に行われたホワイトハウスの記者会見の際に、大統領がAmazonを追求しようとしているかどうかを聞かれると、「アメリカ政府はAmazonに関して何の声明もなく、具体的な政策や行動もない」と答えている。

「インターネット売上税を導入する可能性」について、米財務長官Steve Mnuchin氏による先だってのコメントについて尋ねられると、次のようにつけ加えた。

「考えて欲しい。トランプ氏はいつもすべてのビジネスにおいて公平な条件を実現させようとする前に、何度もつぶやいている。今回も同じこと。そして彼はいつも違った方法を検討しているのだが、現段階ではその件について具体的な政策はない」。

「トランプ氏のツイートはAmazonのビジネスモデルに対する深刻な懸念というよりは、政治をめぐるBezos氏との彼自身の問題を反映しているように思われる」と語ったのは、米リサーチ会社のマネージングパートナーであるPaula Rosenblum氏だ。

米ジャーナリズムPoynterのメディアビジネスアナリストRick Edmonds氏は、「トランプ氏の関心事はeコマースよりはむしろ政治やThe Washington Postの方である」と述べている。

 

実体経済での反響

中小企業を廃業へと追い込むAmazonに対する懸念から、地方自治体や州議会また連邦議会も“地元の小売業者の営業に重荷を背負わせずにeコマースを繁栄させる方法”を築くべく、努力を重ねている。

昨秋に発表された政府説明責任局の調べによると、もしB2BとB2Cを含めたすべてのオンライン販売業者から売上税を強制的に徴収していたとしたら、米国は85億ドルから134億ドルの追加収益が得られただろうと予測された。

米国郵便公社は、2017年に約195億ドルの収益があったが、そのうちAmazonの占める割合は定かではないものの、関係筋によると郵便規制委員会はAmazonとのサービス提携は収益性が高いとみなしていると言う。

しかしながら、「Amazonはビジネス市場において第三者の小売業者と提携しているが、その分に対し税金を徴収することにはむしろ消極的な態度を取っている」と、税経済政策機関 Institute on Taxation and Economic Policy のリサーチディレクターCarl Davis氏は語った。

「Amazonはそのような税を今すぐにでも徴収するために必要な情報を全て持っているが、ビジネス全般で価格優位性を保つために、ほとんどの州で遅延策をとっている」とDavis氏。

「Amazonは多くの市において売上税を払わなくてもよい。それはAmazonが税規制に逆らっているのではなく、州や地方自治体の法の欠陥によるものである」。

「米最高裁判所は、2018年中にはサウスダコタ州と米eコマース企業Wayfair間での訴訟を裁定する予定であり、それによりオンライン小売業者から売上税を強制的に徴収することで、州や地方自治体により権限を与えることになるだろう」とDavid氏は続けた。

これは従来の小売業者とインターネット小売業者との間で条件を公平化するために不可欠なことである。

州は地元の会社が何十年もの間徴収してきた売上税と同等のものを、州外の会社が徴収していないことに対し、徐々に苛立ちを募らせてきているのだ。

 

判例

「Wayfair社の判決は、1992年の米オフィス関連用品小売業者Quillとノースダコタ州の判決(実店舗を持つ小売店のみが売上税の徴収を求められるとこになった裁判)を覆すことになるかもしれない」と、超党派の公共政策シンクタンクであるRice大学Baker Institute for Public Policyの公共財政研究員Joyce Beebe氏が考察した。

「結局のところ、トランプ氏のコメントはAmazonの決定に重要なインパクトを与える事はなかったようだ」と米コンサルティング会社Aite Groupの上級アナリストThad Peterson氏。

「もしトランプ氏のコメントがAmazonに経済的影響があるとしても、それがAmazonのビジネスにおいて重要な影響であるとは思えない。同社がもたらす価値は、価格以前に多様性や利便性に富んでいるからだ」と同氏。

「究極的にはAmazonの価値は変わらないだろう。最も忠誠心の高いAmazon Prime会員が、彼らの購買習慣を変える事はほとんど考えられない」と加えた。

 

eコマースの世界全般に於いて言えるのは、たとえ全てのEC業者が、地元小売店のレジカウンターにて物理的に行われている取引に課税しているのと同様に税を徴収しなければならなくなったとしても、顧客がそれにより(オンラインショッピングを)ためらうとは思えない。なぜなら、概してオンラインコマースは価格以上に便利で、バラエティーに富んでいるからだ。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の3/30公開の記事を翻訳・補足したものです。