コラムニストであるSam Welch氏は、顧客や見込み客へのメッセージング戦略について、マーケターが自らに問うべき5つの質問について述べた。

 

マーケティングの根本は、企業の製品やサービスの価値を伝えることである。成熟会社であるか、スタートアップであるかに関わらず、自社の価値を理解し、既存顧客や見込み客に正しく価値を伝える方法を知ることが、成功への鍵となる。

しかし、マーケティング戦略担当者が常に適切な価値提案を実行できるとは限らない。華々しい広告コピーのアイデアが、今まで何度失敗しただろうか?また、新しく再設計したランディングページによって、コンバージョン率が低下したこともあるだろう。それどころか、同じ業界のすべての企業が同じメッセージを発信していると、頻繁に感じていないだろうか?

顧客に正しいメッセージを発信しているからといって、競争の激しく混沌としたマーケットで、メッセージを届けられているとは限らない。

今回の記事では競合分析に焦点を当て、自社の製品が提供する価値を伝えて競合相手との真の差別化を図る方法を紹介する。

 

自社製品の価値を理解する 

効果的にメッセージを伝えるには、まず、顧客が自社の製品やサービスから獲得できる価値を、マーケター自身が十分に理解している必要がある。

言い換えれば、自社の製品やサービスが、どのようなメリットを顧客に提供できるのかを正しく把握するということだ。時間の節約になるのか?目標を達成するための動機付けとなるのか?治癒的価値があるのか、不安を軽減する効果があるのか?製品の使用事例だけでなく、より広い意味での製品が与える影響を考えることが重要だ。

2015年に、世界有数のコンサルティング会社であるBain&Coによって発表された「The Elements of Value」は、この思考プロセスを導くのに役立つフレームワークであり、私自身も繰り返し利用している。Bain&Coの研究では、消費者の関心が最も高い30の価値を定義し、それらの価値を、ファンクショナル(機能的)、エモーショナル(感情的)、ライフチェンジング(生活を変える)、ソーシャルインパクト(社会的影響がある)という階層に分類した。そして、これらの価値をより多く提供する企業ほど、売上成長率とネットプロモータースコア(NPS/顧客ロイヤルティの測定値)において、高い成果をあげていることが、Bain & Coの調査で示されている。

 

 

通常、「The Elements of Value 」は新製品開発に用いられるが、企業のメッセージングを分析し、改善するツールとしても活用可能だ。

 

メッセージングの妥当性

自社製品が提供する価値を明確にしたら、その結果をもとに、現在のメッセージングを査定し、整合性と改善すべき点を確認すべきだ。分析時には、内的および外的視点の両方に立つことが望ましい。

 

  • 内的視点:提供する価値に基づいて、どのようなメッセージを発信できるか。
  • 外的視点:競合他社はどんなメッセージを発信しているか。そして、顧客は何に関心を持っているか。

 

分析の目標は、次の5つの質問への回答を得ることである。

 

1.現時点で言及していない、製品価値があるか?

簡単な例として、「ジンジャーエール」を挙げる。ほとんどの人は、ジンジャーエールが好きであり、それは当然のことである。特にうだるような暑い日には、炭酸がピリッとして爽やかなジンジャーエールが飲みたくなるものだ。しかし、こういった価値提案のみを行うメッセージを発信しているとしたら、ジンジャーエールが胃のむかつきを落ち着かせることができるという事実を見落としている。親たちは正にその理由で、ジンジャーエールを愛し、購入しているのだ。

「気分の優れない子どもには、ジンジャーエールを与えよ!」

 

2.競合他社は、同じ内容のメッセージを発信しているか?

競合他社が広告コピーやオンサイトで、考えもしなかった価値に言及していることに気づくことがよくあるだろう。自社が特定の価値において明らかに優位であり、直接競合しているケースでも起こり得ることだ。

SubaruVolvoを比較してみよう。両社の車は、車内スペースがゆったりとしていて、雪での運転に優れ、田舎の生活に非常に適している。しかし、Subaruは自社の車が、犬とのドライブにぴったりであること強く訴求している唯一のブランドである。

下記の検索結果ページを参照してほしい。まずは、「suburu + dogs」の検索結果である。

 

 

そして、下図が「Volvo + dogs」の検索結果である。

 

 

これは、Volvo車が犬の飼い主にとって本質的に劣ったブランドであることを意味するのか?そうではない。実際のところは同等であると思う。ただ、Volvoが顧客基盤や顧客の重要視する価値を十分に理解していない可能性があるというだけだ。

 

3.競合他社は類似商品のメッセージングにおいて、重要な価値を見落としているか?

競合他社が価値提案のメッセージを発信していない場合、差別化するまたとない機会となる。前述の例が示したように、Volvoが人間の親友である犬への愛情が欠如していることを、Subaruは明らかに巧く利用している。

 

4.実際に顧客の関心がある価値を伝えているか?

前回の記事では、顧客が製品やサービスの購入や関与を決定する際の基準を理解することの重要性について説明した。

前回の記事で説明した項目リストは次の通り。

  • サービス/製品の品質
  • 価格
  • セキュリティ
  • サービスの全体的な利便性
  • カスタマーサポート

オンサイトや広告でメッセージを作成する際は、常に自社のリストを検討する必要がある。たとえば、自社の製品が、優れたコスト効率で出費の節約が可能であれば、顧客にとって価値がある。

反対に、理想的な顧客にとって関心がない価値であれば、異なる価値提案を行っていれば獲得できたかもしれない顧客を逃す可能性がある。

高級時計ブランドが、主要な価値提案として割引価格を打ち出し、RolexCartier と競争することを想像できるだろうか?確かに、その時計の価格が若干安くなるかもしれないが、高級時計マーケットの顧客が求める価値提案ではない。

 

5.価値提案は、いつ、どこで行うべきなのか?

カスターマージャーニーのどの段階にいるかによって、顧客が重要視する価値は異なる。たとえば、製品をまだ認識していない購買ファネルの最上位にいる消費者は、機能的価値提案によって影響を受ける。しかし、購入見込みが高い消費者には、感情的価値提案による訴求がより効果的だろう。

思い浮かぶ事例として、時々目にする(ヘルス領域の)”ライフチェンジング”テクノロジーを謳うSaaS製品のFacebook広告がある。心身調和を探求する消費者に対し、クラウドベースのカスタマーサービスと発券プラットフォームサポートが有益な解決策であると訴求しても全く意味がないのだ。

前述の5つの質問を組み合わせることで、より高い成果を生み出すことができ、すべてをメッセージング戦略に組み込むことで、最も高い効果を得ることが可能だ。実際に顧客の関心があり、競合他社が伝えていない価値をメッセージとして発信することが理想である。

 

本記事内容を活用して、テスティングロードマップに、新たな項目を追加できることを期待している。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の3/15公開の記事を翻訳・補足したものです。