本記事はオランダのテクノロジー企業Screen6の最高経営責任者兼創設者であるDavid de Jong氏による寄稿である。

 

私たちの業界において、二大巨頭であるGoogleとFacebookに関するニュースや意見に出くわさない日はほとんどない。この2社の潜在的な可能性に関する統計を必ず目にしているはずだ。GoogleとFacebookの2社のみで、2017年の米国のデジタル広告収入のおよそ3分の2を占めた。デジタル広告の増加分の全ては、実質的にはこの2大巨人の懐に直接入ることになっている。

 

この2社の見出しを見るたびに、オランダの昔のことわざ「二匹の犬が一本の骨を取り合うと、第三の犬がそれを持ち逃げする(漁夫の利)」が頭に浮かぶ。

 

現時点では、私たち業界のすべての目はその第三の犬に注がれている。その犬はGoogleとFacebookがお互い噛み付きあったり格闘しているすきに骨を持ち去ろうとひそかに忍び寄る。そして実際、好適な猟犬が影に潜んだ群れからすでに現れている。それはAmazonである。

 

 

Amazonに集まる注目

率直に言って、今や2巨人以上にニュースの見出しを飾っているかもしれない”Amazon熱”は、当然のことである。もし、「骨を奪う」ために良い位置につけている犬がいるとするならば、それはAmazonだろう。

 

Amazonは顧客との関係において独自のポジションをとっていることを考えれば当然であり、またその顧客が最重要である。GoogleとFacebookがメディア広告をめぐって小競り合いをしている間にAmazonは重要な顧客とのダイレクトな関係をすべて手に入れていた。確かにGoogleは顧客の意図を知っていて、Facebookは顧客の興味を知っている。しかし、Amazonほど顧客の実生活に組み込まれているものはいない。なぜなら現実に顧客に物を売っているのはAmazonだからだ。

 

Amazonは人々が何を買い求め、日々何を買っているかを理解しているだけではなく―そのデータは膨大な効力がある―ますます日常的に顧客の玄関へと颯爽とやってくるのだ。更に、アメリカのグローサリーストアチェーンであるWhole Foodsを獲得したことで、顧客の台所がより身近になっていくだろう。

顧客とAmazonの関係は比類がなく、それがとてつもない力となっている。

 

しかしそうは言っても、Amazonは全業界を再定義し続けている一大勢力ではあるが、メディア支出においては必ずしもGoogleとFacebookに取って代わる態勢にあるわけではない。世界的にEマーケターの予測では、Amazonの2017年の広告収入は18.1億ドルで、アメリカでの収益はおよそ16.5億ドルであるのに対し、同年のアメリカにおけるGoogleの収益は350億ドル、Facebookは170億ドルと予測されている。これを考慮するとAmazonが広告収入において真の脅威になるにはまだ遠い道のりである。

 

もちろん、Amazonの広告収入は2巨人のそれ以上に速いペースで成長しているが、それはAmazonがこの分野において超成長を目指しているという意味ではない。Amazonの現在の成長は健全で安定性のある印象だ。とはいえ広告収入の破壊者となるには程遠く、Amazonには他にやるべきこともある。

 

 

第三の犬はまだわからない

私たちの業界がAmazonに注目する理由がたくさんある一方で、二代巨頭の骨を奪おうとする、別の第三の挑戦者がいる可能性もある。その第三の犬はまだ誰だか分からない。

 

新しい競争相手が現れるとしたら、それは誰もが予期せぬ事態だろう。二大巨頭だけが顧客データの宝の山や洗練されたテクノロジーの山に座っているわけではないのだ。その点を考えると、アメリカの電話会社AT&Tやアメリカの電気通信事業者Verizon、アメリカの情報通信企業Comcastなどの大手通信会社は興味深い第三の犬になりうる。

 

さらに、2大巨人の脅威と関連付けて、実際の骨が示しているものに視点を向けてみると、全く新たな可能性が見えてくる。多くの人は、現在のメディア収入と関連付けて競争相手に焦点を当てているが、もっと興味深い考察として私が思うところは、メディアプランナーたちの注目を最も集めているのが誰かということだ。

 

その点では、市場にはたくさんのプレーヤーがおり、そのプレーヤーとブランドの意思決定者との関係はFacebookやGoogleのそれよりもはるかに深く、より信頼されたものである。そしてその関係は力を持つ。今日では、イギリスの会計・税務・アドバイザリーサービスを提供するサービス企業EYや総合コンサルティング会社Accenture、コンピュータ関連製品・サービス提供企業IBM、会計事務所Deloitteのような経営コンサルタントは、信頼のあるマーケティングパートナーとして市場に参入している。また一方では、クラウドコンピューティングサービス提供企業Salesforceやソフトウエア会社Oracle、ドイツのソフトウエア会社SAPのようなマーケティング広告テクノロジー企業もブランドとの関係を高めている。そしてもちろん、イギリスの広告代理店グループWPPやアメリカの広告・マーケティング企業Omnicom、フランスの広告代理店グループPublicis、日本の広告代理店の電通、アメリカの広告代理店Interpublicなど、信頼のおけるブランドアドバイサーとして長年サービスを提供している代理店もある。これらの企業は、それぞれ業界における中心的存在。どの企業一つをとっても、あるいはこれらの企業が連携すればますます、本格的な業界の波を作ることができるポジションにいるのである。

 

10年前を忘れないでほしい。そのころ二大巨頭は我々業界のレーダーにはまったく引っかかっていなかったものだ。つまり、デジタルマーケティングの破壊は瞬時に起きるのだ。次なるヘッドラインの寵児(第三の犬)は、言うなれば、全く想像もできないところからやってくるかも知れないのである。

 

※当記事は米国メディア「Mobile Marketing Watch」の3/14公開の記事を翻訳・補足したものです。