キュレーション型ECは「目利き力」でユーザーを虜にできるのか - Gonomee、MEETTY、fripieから学ぶ

 

EC事業者が独自にコンテンツや商品を収集することを強みとして、オンラインで商品を販売するキュレーションコマース。商品の選定の方法やテイストといった「目利き力」を強みとし、オンラインのセレクトショップからキュレーターがレコメンドを行う形式まで、多種多様な形態へと変化しながらますます盛り上がりを見せている。今回は新しい形でサービス展開をしている3つのキュレーション型コマースを紹介しながら、今後の展望を考察していく。

 

<参考>

キュレーションコマースへの進化の道程(前編)~藤巻百貨店からhatch、SumallyそしてSTYLESEEKへ

キュレーションコマースへの進化の道程(後編)~藤巻百貨店からhatch、SumallyそしてSTYLESEEKへ

 

 

Gonomee

 

簡単な質問に答えるだけで、自分好みの日本酒を見つけることができるコンシェルジュ型ECサービス「Gonomee」。

 

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日本酒を飲むときに、「どれが美味しいかわからない」、「以前飲んだものがあまり好きではなかった」、「商品説明が専門用語で装飾されすぎている」などと思う人も多いのではないだろうか。今年7月にリリースされたGonomeeでは、味や香りの好みに関する11の質問に答えると「テイスト・プロファイル」が作成され、それをベースとしたアルゴリズムが自動的におすすめの日本酒を提案してくれる。レコメンドされた商品はそのまま買うことができ、マイページを作れば「飲んだお酒」や「これから飲みたいお酒」をリスト化することもできる。Gonomeeチームが厳選した日本酒がテイスト・プロファイルによって提案され、それをユーザー自身が選択する”3度のキュレーション”を特徴としている。

また、Gonomeeは日本人ユーザーはもちろんのこと、日本酒の文化に触れていない海外ユーザーもターゲットとしてサービスを展開している。ユネスコにより「和食」が無形文化遺産に登録されたことが記憶に新しいが、近年の日本食ブームに追随するように、日本酒もまた海外でブームを巻き起こしている。Gonomeeはそれらのニーズにも目を向け、さらに日本食とセットでしか登場しないイメージのある日本酒を海外の文化に根付かせるための経営展開を画策しているようだ。7月のサービス開始から9月下旬現在まで、すでに5,000人を超えるユーザーがサービスに登録している。今後も規模・知名度の拡大に注目していきたい。

 

 

MEETTY

 

自分ぴったりの本やモノと出会うことができる知的ライフスタイル提案型ECサービス「MEETTY(ミーティー)」

 

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大日本印刷(DNP)が提供するMEETYは、自分が気に入った本や雑貨などを登録することで,ネット上に自分専用の本棚を作成することができるスマートフォン向けWebサービスだ。作成された本棚は他人が自由に閲覧でき、コメントやlikeを押すことで、自分と好みの近い他のユーザーを発見し新たな商品と出会うことができる。企業や店舗経営者だけでなく、一般のユーザーも書籍や商品の紹介をするキュレーターとなれる点がこのサービス最大の特徴だ。ユーザー自身があるときはキュレーターになり、またあるときは他のキュレーターが推奨する商品にコメントをしたりと、複数の視点でサービスを楽しむことができる。

またMEETTY自体には在庫管理や商品の発送・決済などのEC機能が備わっていないが、大日本印刷とNTTドコモの合弁会社である株式会社トゥ・ディファクトが運営するオンライン書店「honto」 のリンクから購入画面に進むことができ、その場で書籍を購入することが可能だ。ユーザーが自分の興味のある商品に出会えるだけでなく、ユーザー自身がキュレーターになることで商品の発信力を高めることができるうえ、メーカー側もユーザーのリアルなニーズを知ることができる。MEETTYを発信力や購買意欲の高いユーザーのコミュニケーションスペースとして発展させることによって、話題やブームの発信地となる可能性を秘めていると言えるだろう。

 

 

fripie

 

モデル自らが全身コーディネイトした古着をまとめて安く購入できるサイト「fripie(フリピエ)」。

 

 

 

流行や色合いを考慮して毎回着ていく服を考えるのは骨の折れる、という人も多いのではないだろうか。そこで全身コーディネイトされた服を購入する、いわゆる「マネキン買い」をECで実現させたのがfripieだ。人気読者モデル達の私物である国内外ブランドアイテムのなかでも状態の良い物を商品として取り扱っており、3人の読者モデルがトータルプロデュースしたコーディネートをセットで購入できるのが特徴となっている。セットの価格は主に2800円、4800円、7800円の3段階に分かれており、商品がすべて中古であるのを考慮しても、全身コーディネートを一式1万円以下で入手できるのは魅力的である。もちろんアイテム1点のみの購入も可能だ。

トップページにはモデルがセットを着用した写真がインスタグラムのように複数表示されており、ひとつをクリックするとそのセットの詳細なデータ(ブランド・サイズ・生地の成分など)とカートボタンが表示され、そのまま購入することができる。古着はブランド・コーディネイター(モデル)・スタイル・アイテム・サイズ・価格の欄からそれぞれ検索可能だ。スタイル欄をクリックすると「綺麗系・原宿系・ガーリー系・クール系・カジュアル系」と表示され、より自分に合ったコーディネイトを検索することができる。現在の掲載ブランドを見ると若干若めで、いわゆるスマホ世代をターゲットとしたサービスとなっているようだ。女性向けのファッション雑誌がいわゆる「冬の時代」を迎え次々廃刊を迎えている中、キュレーションコマースという新たな形でユーザーにアプローチする試みは非常に興味深い。現在は若年層の女性向けアイテムのみを取り扱っているが、今後の展開にも注目していきたい。

 

 

「目利き力」で更にユーザーを虜にできるのか

 

バイヤーの思いをコンセプトとして反映させたセレクトショップ型ECに始まり、専門家によるレコメンド型、好みのキュレーターを探すことができるキュレーションプラットフォーム型、ロボットによる自動レコメンド型など、キュレーションコマースは様々な形で進化を遂げている。今回取り上げたサービスもこれらのパターン(詳細はこちらの記事参照)に当てはめることができる。

Gonomeeは自動レコメンド型、MEETTYは好みのキュレーターを探すキュレーションプラットフォーム、fripieは専門家によるレコメンド型だ。

それぞれ日本酒、書籍、アパレルを販売するキュレーションコマースだが、どれもキュレーションという新たな形式を利用することで、今までとは違った形で消費者にアピールすることを意識している点が特徴的である。店頭や雑誌、広告といった既存のスペースや媒体では感じることのできない新鮮な体験としてキュレーションによる商品紹介を行うことで、新規の購買層を獲得出来るだけでなく、一度はそれらの商品から離れていってしまった人々の興味を再度惹きつけることも可能だろう。

 

キュレーションコマース型ECは「目利き力」でユーザーを虜にできるのか - Gonomee、MEETTY、fripieから学ぶ

 

キュレーションの形式を取るECサイトが今後さらに増加していくため、差別化を図ることは困難になっていくだろう。その中で、一時期のコンテンツマーケティングに見られたコンテンツの質の低下や、類似コンテンツの乱発といった問題は避けなければならない。商品選定の方法やテイストなどの個性で他との差別化を図るキュレーションコマースにとっては死活問題となるからだ。

コンテンツマーケティングが本来のコンテンツの在り方を再考するきっかけを与えたように、キュレーションコマースは本来のECサイトの在り方を再考する良いトレンドだ。すなわち、商品に対する深い造詣と愛着がしっかりとした売上を作るという、ECサイト本来のあるべき姿がそこにあるからだ。

キュレーションコマースはその目利き力を活かして、実店舗での展開に苦戦する企業の希望の光として発展していくことができるのだろうか。その動向に今後も注目していきたい。