SEORadar.comの創設者兼CEOであるMark Munroe氏が、まもなく導入されるGoogleのモバイルファーストインデックスへの対策について語る。

 

Googleによるモバイルファーストインデックスの導入は、2018年のモバイルマーケティングとSEOの世界を揺るがす最も重要な出来事の1つとなるだろう。Googleは正確なスケジュールは明らかにしていないが、2018年中にはモバイルファーストインデックスを展開すると言及している。

詳しく知らない人もいるだろうが、モバイルファーストインデックス導入により、Googleの検索結果の提供方法そのものが変化するだろう。Googleはこれまで、デスクトップユーザーの視点からウェブサイトを評価してきた。サイトのコンテンツ品質、サイトに貼られた外部リンクやロード時間やその他の数多くの要素を考慮して、何百万ものウェブページを評価しているのだ。しかし、モバイルファーストインデックスの導入に伴い、Googleはモバイルユーザーの視点からウェブサイトをインデックスし、サイトのモバイルページを主要な検索エンジンインデックスとして使用することになる。

近年のモバイルデバイスからの検索件数の驚異的な急成長を考えると、当然の動きと言える。2015年時点でGoogleは、10か国においてPCよりもモバイル端末によってより多くの検索が行われたと発表している。更に最近の調査によると、一部の業界やトピックについては、モバイルデバイスでの検索が全体の検索件数の60%を占めるとのこと。ユーザーを最優先する企業であるGoogleが、ユーザーの検索方法の明らかな変化に適応する必要があることは当然である。

Googleは、一部のサイトにおいて、既にモバイルファーストインデックスの導入テストを開始しており、数か月後には完全に移行する可能性がある。対策はできているか?サイトをどのように変更するべきか?新しいモバイルファーストインデックス導入に向け、検索結果に正しく表示されるために確認すべき技術的な重要課題を次に挙げる。

 

 

モバイルサイトの配信方法

 

どのようにモバイルサイトをユーザーに提供しているだろうか?サイト構造によって、モバイルファーストインデックス対策も異なるため、サイトの提供方法をまずは確認しなければならない。一般的に、モバイルサイトエクスペリエンスには3つの異なるアプローチがある。

 

レスポンシブウェブデザイン

RWD(レスポンシブウェブデザイン)は、ユーザーの使用デバイスを特定し、CSS(ウェブページのデザインやレイアウトなどのスタイルを指定する言語。カスケーディングスタイルシート)を使用して、適切なユーザーエクスペリエンスを提供する単一のWebページを作成する手法である。サイトがレスポンシブであれば、モバイルファーストインデックス対策は非常に簡単である。一般的には、小さなフォームファクタに収まらないコンテンツは、リフォーマットするか、隠すことになる。

 

アダプティブウェブデザイン

AWD(アダプティブウェブデザイン)は、ユーザーのデバイスに基づいてサイトを動的に適応させる。ユーザーの使用デバイスがサーバー側で検知され、サーバーが適切なバージョンのページを配信する。通常は、異なるそれぞれのデバイスに適した複数のバージョンのサイトが作成される。RWDと同様に、AWDには、軽量ページを提供できるという利点があり、ユーザーのニーズに基づいて特定のデバイスごとに独自の価値を提供することが容易である。この場合、デスクトップとモバイルのURLは同一(別々のHTML)である(ただし、コンテンツは異なる)。

 

ディスティンクトモバイルURL

m.dot(ディスティンクトモバイルURL)は、モバイルユーザー向けに独自URLのウェブサイトを設定する。m.dotには、AWDと同様の利点があるが、個々のページのモバイルバージョンとデスクトップバージョンのマッピングが複雑になる。

 

Accelerated Mobile Pages

更に、AMP(Accelerated Mobile Pages)というオプションもあるが、もう一段複雑になる。AMPページは、表示速度の高速化を目的として設計され、制約が設けられた最低限のHTMLバージョンで構築されている。現時点で、AMPのコンテンツはデスクトップバージョンの標準的かつオリジナルのページコンテンツに相当するものであることを、Googleは推奨している。

 

 

ユーザーエクスペリエンスの優先

 

モバイルサイトの構成によってユーザーエクスペリエンスを向上させるために、異なる措置を講じる必要がある。例えば、レスポンシブサイトであれば戦術的に行うことは少ないが、モバイルサイトの構造にかかわらずモバイルエクスペリエンスの最適化を優先させなければならない。

Googleの検索結果ランキングは、単に関連性だけではなくユーザーの検索意図に対しての満足度に基づいていることに留意するべきだ。コンテンツ自体はユーザー検索意図に合致したとしても、エクスペリエンスはそうでないケースがある。ユーザーエクスペリエンスに重点を置いたいくつかの一般的な問題を次に考察する。

 

多量なコンテンツ

デスクトップサイトのコンテンツとUX(ユーザーエクスペリエンス)の容量を、小さなスマートフォンに押し込めると、ユーザーエクスペリエンスが損なわれる可能性がある。制限されたモバイル画面上では、ユーザーが検索したコンテンツやソリューションを見つけ出すことは容易ではない。Googleは、これまでこの点について注目していなかったが、今後は考慮すると思われる。

 

遅いロード時間

サイトの表示速度は、Googleのアルゴリズムの一部である。ユーザーは、スマホでは、より早いレスポンスを期待する。Googleは、モバイルサイトには、1秒未満のレスポンスタイムを推奨している。

 

最重要となるモバイル基準

Googleは、モバイルサイトについては、独自のパフォーマンス測定値を使用すると言及している。なぜなら、ユーザーはモバイルデバイス使用時には、異なる期待を持ち、すぐに耐えられなくなり、情報をより素早く見つけたいと思っている。単純な答えを見つけるために、何度もサイトをクリックしたくないのだ。モバイル基準によって判断されると、反応が遅く、設計が不適切なデスクトップサイトは、致命的なダメージとなる可能性がある。

 

広告の挿入

積極的な収益化やコンバージョン技術は、モバイルエクスペリエンスを台無しにさせる可能性がある。Googleは、既にモバイルサイトのインタースティシャル広告に対して、ペナルティを課している。もちろん、ビジネス上の目標は重要であるが、ユーザーエクスペリエンスと製品やサービスの宣伝とのバランスが取られている必要があるのだ。

 

 

個別のモバイルサイトに関する検討事項

 

当然のことだが、ユーザーエクスペリエンスの問題は個別のモバイルサイトにも同様に当てはまる。それに加えて、個別のモバイルウェブサイトを設定している場合は、すべての最適化作業が本質的に倍増する。なぜなら、タイトル、見出し、コンテンツ、リンク構造などの主要なSEO要素をはじめとするデスクトップサイト最適化作業に、既に数年とは言わなくとも数か月を掛けただろうと思うが、モバイルサイトでも同様にその作業が必要になるだろう。

 

ページ上の要素の同期

Googleがモバイルサイトを基準とした評価を開始した後、以前と同じキーワードとフレーズによって検索ランキング付けされるためには、デスクトップとモバイルサイトのコンテンツを同一(または可能な限り類似)にする必要がある。クロールツール(ロボット型の検索エンジンプログラムがWebサイトを巡回し、情報を複製・保存するツール)を使用すれば、デスクトップサイトとモバイルサイトの両方で主要なSEO要素のスプレッドシートを作成することが可能だ。更に望ましいのは、比較可能なツールを使用することである。次に、コンテンツを一致させるために何を更新する必要があるかを決定する。タイトルとメタディスクリプションは、デスクトップとモバイルサイトの両方で完全に同一でなければならない。

 

リンク構造

個別のモバイルサイトを設定している場合、これは困難な問題となるだろう。デスクトップサイトのクリックパス経由でアクセスできるすべてのコンテンツに、モバイルサイトでもアクセスできるようにする必要があるからだ。通常、モバイルサイトにはデスクトップサイトに比べてはるかに少数のリンクしか貼られていない。しかし、デスクトップサイトと同じクリックパスを実装することは必須となっている。

 

省略されたコンテンツ

モバイルサイトでは、デスクトップサイトに存在するコンテンツが省略されているか、完全に消去されている可能性がある。その場合は明らかに問題が生じるだろう。モバイルサイトから主要なページが省略されていないか、検証する必要がある。

 

隠れたコンテンツ

デスクトップサイトでは、タブやその他の隠れたデザイン機能を利用し、コンテンツをより動的に表示することがよく行われる。しかしこれはモバイルサイトでは機能しないため、削除する必要がある。

 

構造化データとhreflangタグ

Googleは最近になって、モバイルファーストインデックス導入に向け、構造化データとhreflangタグ(多言語サイトの最適化のために必要な要素)について公式ブログで言及した。Googleは、デスクトップサイトに設定された構造化データが、モバイルサイトに同様に設定されているか確認することを推奨している。構造化データ内のURLは、モバイルページ上ではモバイルバージョンに更新する必要がある。サイトがhreflangリンクを使用している場合は、モバイルページのリンクがモバイルサイトのインターナショナルページにリンクしているかどうかを確認しなければならない。

 

クロールレート(クロール速度)の向上

Googleでは、潜在的なクロール速度の加速に対応するために、ホスティングサーバの容量を十分に確保するように補足している。これは、モバイルページ用に別のアドレスを持つサイトにのみ適用される。

 

 

サイトスピード

 

ページの表示速度の重要性については既に上記で言及したが、再度本セクションで補足する必要がある。Googleはここ2、3年間で、AMPページを推進しており、表示速度はモバイルファーストインデックスの重要なランキング要素となる。それゆえ、サイトの表示速度についての評価を確認すべきだ。GoogleのTest My Siteツールを用いて、サイトのパフォーマンスを測定し、モバイル適合性とモバイルページ表示速度の分析ができる。Googleのもう1つの優れた無料ツールである、PageSpeed Insightsでも、表示速度を測定することが可能で、モバイル(およびデスクトップ)サイトのための特定の最適化手法が、優先度順に表示される。

 

次に、コンテンツとデザインを合理化しなければならない。サイトの表示スピードが基準に達しない場合は、不必要なページ要素や画像を削除し、大きな画像やファイルを圧縮することを検討する必要がある。ページの見た目が無駄のないものになるだけでなく、コンバージョンを増加させることができるからだ。

最後になるが、ブラウザのキャッシュも活用するべきだ。最新のブラウザでは、大きなファイルや画像を保存することができる。したがって、以前に同じサイトを訪問したユーザーは、ページを再度完全にリロードする必要はない。

 

 

継続的な最適化

 

単にモバイルファーストインデックス対策としてモバイルサイトとデスクトップサイトを同期させる必要があるわけではなく、サイトの主要な要素は常に同期させておくべきである。サイトの変更が発生した場合、両方のサイトで変更を行う必要がある。

そして、モバイルサイトのパフォーマンスを監視することがさらに重要になる。なぜなら、サイトの検索結果ランキングが著しく流動的になる可能性があるからだ。モバイルサイトのSEOパフォーマンスを個別に監視していない場合は、今すぐ実行する必要がある。

 

 

モバイルマイルストーン

 

Googleのモバイルファーストインデックス は、検索コミュニティのマイルストーンであり、一般的なモバイルマーケティングのマイルストーンだと言える。世界中の消費者と検索ユーザーのモバイルエクスペリエンスの重要性と価値を認識し、具体化した結果なのだ。

Googleは、「モバイルファーストインデックスは、現在の検索結果ページを大幅に変更することを目標にしているわけではない」と言及しているが、長期的に見ると、モバイルユーザーエクスペリエンスの強いサイトが有利であるのは当然のことである。企業はモバイルファーストインデックス 導入までに残された数か月間、モバイルサイト対策に注力し、サイト訪問者のデスクトップ、及びモバイルサイト双方のエクスペリエンス改善に時間と労力を費やすべきなのである。

 

 

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の1/3公開の記事を翻訳・補足したものです。