米大手EC企業Amazonが製薬業界への進出に狙いを定めているのではないか、という噂が真実味を帯びてきた。

Amazonは数ヶ月前、Whole Foodsの買収で食料品業界を混乱させ、また米国第2本社建設を発表し、現在広範囲にわたって建設都市を選考中だ。

 

そのAmazonが現在医薬品販売開始に向けて歩みを進めていると各方面で伝えられ、将来的な競争相手となり得る(医薬品を販売する)企業間で懸念が広がっている。米ドラッグストアチェーン大手CVSが、医療保険大手のAetnaを6,600億ドルで買収する交渉を始めたのも、この動きが大きな要因であると言われている。

米国地方紙St. Louis Post-Dispatch伝えるところによると、Amazonは、ネバダ州、アリゾナ州、アラバマ州、ノースダコタ州、ルイジアナ州を含む12州において、医薬品を卸売販売するライセンスを取得している。

我々は、ニュージャージー州、コネチカット州及び、他2州における、Amazonの医薬品の卸売ライセンスの取得を示す文書を入手していた。しかしAmazonが、医薬品を消費者に直接出荷するためには、調剤薬局ライセンスを取得する必要があると、St. Louis Post-Dispatchは指摘する。

新たに取得されたライセンスはAmazonの急成長部門であるB2Bの一部であり、拡大中の医療用品供給事業に関連するものだと、Amazonの広報担当Lori Torgerson氏。同社は既に、医療用品供給事業の一環として業務用医療器具を医師、歯科医、その他の医療従事者に販売している。

「卸売の資格は、Amazon Business部門が業務用製品を医療企業に販売するために必要なものだ」と、Torgerson氏は補足する。

 

B2Bの急成長

2017年夏、Amazonは2015年に設立されたAmazon Business部門が100万社以上の顧客を獲得したと発表した。調達ビジネスは、85,000を超える販売事業者を対象とするまでに拡大し、医療関連及びその他多様な顧客企業に業務用製品を提供している。同社はほとんどの州で、病院、医師、歯科医、医療診療所などの様々な医療機関に販売するライセンスを保有。

10月末にWall Street Journalが伝えたところによると、CVS Healthが米国の3番手の医療保険会社Aetnaを買収する交渉を行っているという。買収額6,600億ドルと報道されており、Aetna株の評価額が1株あたり200ドルとの噂。CVSは最大の小売薬局チェーンの一つであるだけでなく、米国最大の薬局給付管理事業者(処方薬の適正管理プログラム。PBM)の1つである。

複数の報道によると、CVSのCEO、Larry Merlo氏と、AetnaのCEO、Mark Bertonlini氏という両社の幹部が直接交渉に関わっており、既に数か月間にわたり交渉が進められているという。

米食料品業界の基盤を揺るがすほど衝撃的なニュースとなったAmazonの137億ドルでのWhole Foods買収に続き、Amazonが処方箋薬事業に参入予定だという憶測が広まったことが、今回の買収交渉を進める大きな要因となった。

CVS関係者はこの報道についてコメントを避けている。Aetnaの広報担当者T.J. Crawford氏も「噂や憶測についてはコメントしない」と回答。

 

整っている参入態勢

小売薬局事業は競争が非常に激しい市場であり、収益の大部分は、医薬品自体からではなく、ドラッグストア店舗内通路に陳列された家庭用品やサプリメント、食料品の売上げ。その点から見ても、Amazonの参入態勢が整っていると考えられる。

リサーチ会社Constellation ResearchのプリンシパルアナリストCindy Zhou氏は、次のように述べた。「顧客の利便性と再注文、自動注文機能に重点的に取り組んでいるAmazonが、次に小売薬局事業に参入するのは非常に論理的なことだ。何十年間にもわたり、常用処方箋薬については、医療保険会社による大量注文がなされてきたが、Amazonは、消費者へ直接配送することができ、利便性が高い」

Zhou氏は、Alexaの音声コマンドやAmazon Dashボタンを使用すれば、処方箋薬を簡単に再注文することが可能だと言及する。

リサーチ会社RSR ResearchのマネージングパートナーPaula Rosenblum氏は、「ドラッグストアに処方箋薬を受け取りに行く消費者は、店舗の奥にある処方箋カウンターまで歩く際に他の商品も購入している。これこそがAmazonが参入しようとする理由であり、当然のことだ」と語る。

「ドラッグチェーンストアが実際に利益を上げているのは、医薬品以外の商品の売上げ。医薬品を受け取る際についでに購入する他の商品の利幅の方が、はるかに大きい。それは消費者の総出費のうち、ドラッグストアが獲得するシェアを増やす方法となっている」と、Rosenblum氏は加えた。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の10/31公開の記事を翻訳・補足したものです。