CXがマーケティングを収益の原動力に変える主な戦略と実例を紹介。

私たちは常に最高マーケティング責任者(CMO)として、成長の促進と、マーケティングがコストセンター(収益を生まず、コストが集計される部門)とみなされることが多いという事実とのバランスを取ろうとしている。だが、この状況を変えることができるとしたらどうだろうか。マーケティングを、予算の浪費ではなく、収益の原動力とみなすことができたらどうだろうか。この認識を変える最も効果的な方法の一つは、カスタマーエクスペリエンスを活用することである。

本記事では、カスタマーエクスペリエンスによってマーケティング部門をプロフィットセンター(利益を生み出す部門)に変える方法についての戦略的な洞察を共有する。ステップバイステップのガイドではないが、CXを成長戦略の基盤として位置づけるための、実証済みの基本に立ち返った戦略を学ぶことができる。これらのアプローチにより、あらゆる顧客との対話を収益促進の機会に変えることができるだろう。


カスタマーエクスペリエンスが重要な原動力となる理由

あるブランドで最後に素晴らしい体験をしたときのことを思い出してみてほしい。それは、シームレスなチェックアウト、迅速な配送、あるいは完璧に対応されたカスタマーサービスだったかもしれない。それが何であったにせよ、その肯定的なやり取りは、あなたがそのブランドをリピートし、他の誰かに勧めたりするという決断に影響を与えた可能性がある。何百人、何千人もの顧客に対して同じ効果が及ぶことを想像してみてほしい。

CXとは、顧客を満足させることだけではない。リピーターや顧客ロイヤリティにつながる永続的な関係を構築することなのだ。CXに注力することで、顧客生涯価値(CLV)や紹介率などの主要な収益指標が向上する。カスタマーエクスペリエンスに優れた企業は、そうでない企業よりも常に優れた業績を上げている。データがそれを物語っている。

チャンスは明確である。パーソナライズされたシームレスな体験を作り出すことで、企業の収益に直接貢献することができる。しかし、この変革には、マーケティングの役割に対する考え方を変える必要がある。


CXを収益の原動力に変える戦略

次の革新的なマーケティング戦術を見つけようと競い合う中で、今でも基本が有効であることを忘れてしまうことがある。基本に忠実でシンプルであることが、最良の結果を生むことが多いのだ。ここでは、実践的で、基本に立ち返った戦略をいくつか紹介しよう。


大規模なパーソナライゼーション

パーソナライゼーションに優れた企業は、平均的な企業よりもこうした活動から40%も多くの収益を生み出していることが、McKinsey(米国の大手コンサルティング企業)の調査で明らかになった。考えてみてほしい。シンプルにパーソナライズされたメールや顧客の好みに合わせたページによって、顧客は特別な価値を感じることができる。顧客が価値を感じれば、エンゲージメントとコンバージョンは向上する。データを賢く活用してそれぞれの体験をカスタマイズすることで、顧客とのより強力で有意義なつながりを築き、収益に結び付けることができるのだ。

多くの企業は、カスタマーエクスペリエンスの向上におけるパーソナライゼーションの重要性を理解しているが、ほとんどはその導入に苦戦している。予算の制約や不十分なデータ分析能力、組織内部の障壁が妨げとなることが多い。

パーソナライゼーションへの意欲や効果的な実行能力との間には依然として大きなギャップがある。このため、多くの企業はパーソナライゼーションの力を十分に活用できず、顧客ロイヤリティと収益の成長を促進できないでいる。

パーソナライゼーションの拡大は、すぐに成果が得られるものでも、魔法の薬でもない。何百万人もの顧客に個別化された体験を提供するには、テクノロジーへの投資とそれを管理する熟練したチームが必要である。パーソナライゼーションは長期的な戦略なのだ。結果を出すためには、適切なインフラや忍耐力、リソースが必要である。


カスタマージャーニーの最適化

面倒なチェックアウトプロセスや一貫性のないWebサイトナビゲーションに悩まされた経験は誰にでもあるだろう。このような場面は、まさに顧客がジャーニーを放棄して立ち去る瞬間である。私たちの仕事は、カスタマージャーニーをマッピングし問題となっている箇所を解消することで、これらの摩擦点を特定し、排除することである。

カスタマージャーニーを最適化するということは、顧客が何度もリピートしてくれるような体験を生み出すということを意味する。AIと自動化はこれらのタッチポイントの効率化に役立つが、体験を継続的に微調整するには継続的な努力が必要となる。すべてのやり取りを摩擦のないシームレスなものにすることで、解約を減らし、収益を増やすことができる。


適切な指標の測定

インプレッションやクリック数といった従来のマーケティング指標は有益ではあるが、全容を語るものではない。ロイヤリティや長期的な収益の原動力を理解したいのであれば、もっと深く掘り下げる必要がある。これには、たとえば、以下の指標が役立つ。

  • ネットプロモータースコア(NPS)は、顧客が自社ブランドを推薦する可能性を示すもので、ロイヤリティの明確なシグナルとなる。
  • 顧客生涯価値(CLV)は、顧客の長期的な価値についての洞察を与えてくれる。
  • 顧客努力指標(CES)は、顧客が必要なものを得るのがいかに簡単か、あるいは難しいかを測定するのに役立つ。体験が簡単であればあるほど、顧客はロイヤリティを高め、定着する可能性が高くなる。


部門間のコラボレーション

マーケティング部門だけでは機能しないということは、紛れもない真実だ。収益を促進する優れたカスタマーエクスペリエンスを提供するには、組織全体のサポートが必要である。つまり、営業、カスタマーサービス、製品チーム、その他カスタマージャーニーに影響を与えるあらゆる部門と密接に連携する必要があるのだ。


組織におけるマーケティングの役割を変革する

変革を成功させるには、マーケティングチーム内のスキルを進化させることも重要である。データ分析、顧客インサイト、部門横断的なコラボレーションなどの分野で専門知識を高めることで、CXを向上させ、経営陣から他部門に至るまで、誰もが理解できる方法でマーケティングの影響力を示すことができるようになる。チームがこれらの分野に精通すれば、マーケティングは単なるもう一つの(コスト)部門から、企業全体の一貫した成長(利益)エンジンへと変化する。


CXが収益を押し上げる実例

顧客の利便性を第一に考えるAmazonは、まさにその好例である。ワンクリック注文、パーソナライズされたおすすめ商品、ほぼ即時の配達といった機能は、Amazonが世界で最もロイヤリティの高い顧客基盤を築くのに役立っている。

そして、Starbucksの例もある。同社のモバイルアプリは、単に注文を便利にするだけではない。魅力的でパーソナライズされた体験を提供し、リピーターを増やしロイヤリティを高めている。これらの企業は、CXを重要な収益源に変えているが、貴社でも同じことができるだろう。


要点

マーケティングチームがコストセンターと見なされるか、収益を上げるチームとみなされるかは、優れたカスタマーエクスペリエンスを創造できるかどうかにある。

顧客体験を戦略の基盤とし、マーケティングをコストセンターからプロフィットセンターへと変革することで、マーケティングを真の収益エンジンとして位置づけることができる。

この変革は一夜にして実現するものではない。新しいスキルの開発、先進的なテクノロジーの導入、カスタマージャーニーに関わるすべての部門でのコラボレーションの促進など、マーケティングのあり方を根本的に転換する必要がある。

顧客とのあらゆるやり取りを、エンゲージメントを高め、永続的なロイヤリティを構築する機会と捉えることで、マーケティングは従来の枠を超えて進化する。そうすることで、マーケティングは持続的な成長エンジンとなり、ビジネスの成功のための中心的な原動力となるのだ。


※当記事は米国メディア「MarTech」の9/18公開の記事を翻訳・補足したものです。