B2Bマーケティングにおいて有意義な成果を上げるために、慣習を見直し、新たなベストプラクティスを検討しよう。

B2Bで長期的な成功を収めるためには、時代の先を行くことが不可欠である。2023年が終わりを迎え、2024年を見据える今こそ、マーケティング戦略を評価し、今後に向けて備えを万全にする時だ。この記事では、B2Bマーケターが2024年を前向きにスタートさせるために注力すべき6つの重要分野について解説する。

 

1.アッパーファネルの期待に応える

マーケティングの初期段階では、従来からブランド認知に焦点が当てられてきたが、このアプローチ方法を見直す必要がある。B2Bバイヤーの認知度を高めることが、かつてないほど重要になっている。

米国のコンサルティング企業BainとGoogleが実施した調査によると、バイヤーの90%はリサーチを行う前からベンダー候補が頭にあり、そのうちの90%は、初日の候補からベンダーを選ぶという。

バイヤーが市場に参入する前に、あなたがバイヤーに認識されていなければ、あなたが顧客を獲得できる可能性は低いということだ。

アッパーファネルやB2Bの活動を追跡することは難しいが、実現可能である。多くのメディアプラットフォームがブランドリフト(ブランディング広告の効果を調べる指標)調査を行っている。担当者やカスタマーサポートにアドバイスを求めよう。

 

また、ブランドリフトをより深く理解するために、ハロー効果(ある対象を判断する際、その一部の目立った特徴に引きずられて、全体としての評価が歪められる現象)の研究やインクリメンタリティ(広告費が全体的なコンバージョン率に与える増分)テストのような高度な分析を行うこともできる。

 

・ハロー効果の分析では、独立変数と従属変数の間の相関関係を調べ、それらに正の関係があるか(戦術が収益やリードにプラスの影響を与えているか)を判断する。

・インクリメンタリティテストでは、マーケティングキャンペーン全体と、トラフィックを促進する個々のキャンペーンコンポーネントの影響を測定する。

 

 

2.アッパーファネルにおけるコンテンツの役割を果たす

アッパーファネルについて考える際には、質の高いコンテンツに焦点を当てよう。戦略的なコンテンツアプローチは、オーディエンスとの永続的なつながりを築くのに役立つ。

コンテンツをカスタマイズして価値を提供し、ブログ記事、ビデオ、ウェビナー、インタラクティブな体験などの形式を使って潜在顧客を惹きつけ、エンゲージメントを維持しよう。

B2Bマーケターの多くは、Webサイトのデザインや機能性など、出来の悪い、魅力的でないクリエイティブ要素に頭を悩ませている。Microsoft Clarityのようなヒートマップ(ユーザーがWebページ上でとった行動や反応を確認できるツール)や行動分析ツールを使って、改善の機会を見つけよう。

また、バリュープロポジション(顧客に提供する価値の組合せ)を見直してみよう。多くのB2Bマーケターは、自身が発信するメッセージにあまりに注意を払っていないものである。

 

3.市場外バイヤーへの投資を構築し、継続する

Linked In Researchよると、B2Bバイヤーの95%はいつでも市場にいるわけではない。“営業に相談する準備ができている”バイヤーのみをターゲットにすることは、SAM(Serviceable Addressable Market/実際に顧客としてアプローチできるターゲット層)の95%を逃してしまうことを意味する。

この大きなグループを構築し、投資にコミットすることは、メンタルアベイラビリティ(顧客にそのブランドを買いたいと想起させる能力)を確実に生み出す唯一の方法である。つまり、貴社ブランドは、ブランド認知のキュー(きっかけ)を必要とすることなく記憶されることになるのだ。メンタルアベイラビリティは、記憶に残り、刺激的で、ターゲットオーディエンスのニーズに直接応えるユニークな体験を創造することによって実現されるものである。

Nielsen(世界最大級のマーケティング調査・データ分析企業)によると、マーケティングを成功させるために最も重要となる要素は創造性(47%)であり、それにメディア(38%、リーチ、ターゲティング、リーセンシー(同じユーザーへある広告を再度表示させるまでの間隔)やコンテクストを含む)が続く。

しかし、B2Bコンテンツの大部分は、退屈で刺激に欠け、オーディエンスに生身の人間として語りかけることができていない。

 

以下に、刺激を与えるB2Bメッセージングの例をいくつか紹介しよう。

 

Intuit Mailchimp(メール広告サービスの自動化プラットフォーム):“Turn Clustomers Into Customers”(「顧客集団を顧客に変えよう」)

LinkedIn(米国に本社を置くビジネス特化型SNS): “No One Knows What You Do”(「誰もあなたの仕事を理解していない」)

・その他、Oktopost(B2Bソーシャルエンゲージメントスイート)によるB2B TikTokの例

 

4.パーソナライゼーション:体験をカスタマイズして効果の最大化を図る

B2Bマーケターにとって、カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上は最優先事項である。Contentsquare(フランスに本拠を置く顧客体験分析プラットフォーム提供企業)の調査によると、読み込み時間の遅さは最も大きなフラストレーション要因であり、B2B訪問者セッションの18%に影響を与えているという。

この他にも、レイジクリック(ボタンやリンクと思われるものを押しても動作しない状態)やマルチユースターゲットなどの問題点がある。これは、顧客満足度を向上させるために、最適化されたWebサイトのパフォーマンスやユーザーフレンドリーなデザインが必要であることをさらに浮き彫りにしている。

デスクトップであろうとモバイルデバイスであろうと、顧客とのやり取りはすべて重要である。我々は、あらゆるタッチポイントにおいて、一貫したポジティブな体験を提供する必要がある。

モバイルでのやり取りを楽しいものにすることは、より多くのB2B顧客を惹きつけるための素晴らしい方法となる。携帯電話で閲覧しているバイヤーに対して、パーソナライズされたポジティブな体験を提供しよう。これは、デスクトップ以外の媒体でメンタルアベイラビリティを生み出すことにも役立つ。

 

5.バリューベースビッディング(価値に基づく入札): 効率とROIの向上

次は話題を変えて、B2Bマーケターにとって最も重要な新機能となりうるGoogle広告のバリューベース入札(VBB/ value-based bidding)について説明しよう。

基本的に、VBB を使用することで、貴社ビジネスにとってどの顧客がより価値があるかを Google に伝えることが可能となり、アルゴリズムがこのインサイトに基づいて入札単価を高くしたり低くしたりできるようになる。

出典:Optmyzr(リスティング広告最適化AIプラットフォームを提供する米国企業)


タグやオンラインコンバージョンを使って、顧客がフォームを送信したり、デモをリクエストしたり、購入したりしたことをGoogleに通知することができる。

多くのB2B取引は依然としてビジネス開発担当者を通じてオフラインで行われているが、Googleはプロセスを簡素化し、SalesforceHubSpotのようなCRMとのダイレクト・インテグレーションを提供している。

VBBを活用していない場合、Tinuiti(米国のマーケティング代理店)による以下のケーススタディが示すように、大幅な改善を見逃していることになる。

 

・コンバージョン率が38%増加

・適格オポチュニティ率が48%増加

・適格オポチュニティあたりのコストが23%削減

 

6.ハイパーターゲティングからの脱却

アカウントベースドマーケティング(ABM)のようなハイパーターゲティング戦略はB2Bで人気があるが、欠点がないわけではない。

ハイパーターゲティングに対する強力な反論は、そのコストへの影響である。ターゲティングの粒度が細かく、具体的であればあるほど、関連コストは高くなる。

これにより、マーケティング予算が圧迫される可能性があり、場合によっては、投資対効果が経費の増加に見合わないこともある。

ハイパーターゲティングに無駄がないとしても、LinkedInが「2030 B2B Trendsレポート」で説明しているように、顧客獲得単価は依然としてより広範なターゲティングを目指す場合よりも高い。

 

さらに、ハイパーターゲティングは重要な盲点を見落としている。

オーディエンスを絞り込むことで精度が確保されると仮定すると、今後4年間で個人の40%以上が仕事や業界、肩書きが変わると予想されている事実を無視することになる。

このような絶え間ない変化は、予測不可能性をもたらし、動的な変化に適応しないハイパーターゲティングはその効果が低下するのだ。

こうした課題を踏まえ、プロの道における可変性やサードパーティデータの制約を考慮した柔軟なアプローチへの関心が高まっている。

ある程度の柔軟性を備えたより幅広いターゲティング戦略を取り入れることで、B2B広告主は変化する状況をより効果的に乗り切ることができ、精度と適応性についてより良いバランスを取り、より持続可能で費用対効果の高い成果を達成できる可能性があるだろう。

 

振り返り、準備し、計画する

2024年を見据えると、B2Bマーケティング環境が変革の時期を迎えていることは明らかである。アッパーファネルの最適化からパーソナライゼーションの強化、ターゲティング戦略の転換まで、我々は効率性と持続可能性を高めるためにアプローチを進化させることができる。

これらの重要なトレンドと、それが貴社ビジネスに与える影響について考える時間を今取ることで、最適化され、先回りした状態で来年をスタートさせるために、十分な情報に基づいた意思決定を行うことができるのだ。

慣習を再考し、新たなベストプラクティスを検討することで、時代を先取りしながら有意義な成果を導き出そう。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の12/4公開の記事を翻訳・補足したものです。