ヨーロッパのeコマース売上高は、2021年も成長し続けた。一方で、同年のオンライン買い物客の数はわずかに減少。2020年にeコマースのピークを迎えた後、成長は鈍化し、安定しつつある。

 

これは、業界の支持団体であるEuroCommerce(ヨーロッパの小売・卸売業を代表する組織)とEcommerce Europe(ヨーロッパのデジタルコマース部門を代表する組織)による報告書「2022 European Ecommerce Report」 の結果である。この調査は、アムステルダム応用科学大学のマーケットインサイトセンターが実施したもので、ヨーロッパ37ヵ国のデータが含まれている。

 

2022年に成長鈍化

2021年、ヨーロッパのeコマース売上高は、前年比13%増の7,180億ユーロとなった。成長率は前年よりわずかに増加し、安定的に推移している。2022年も上昇傾向が続くと予測されているが、成長率は11%の7,970億ユーロとなり、その成長は鈍化していく見込みだ。

 

「2021年の売上高は13%増の7,180億ユーロとなった」

 

売上は伸びたものの、2021年のオンライン購入はわずかに落ち込んだ。2021年は、ヨーロッパのインターネットユーザーの73%がオンラインで買い物をしたが、これは2020年の74%から減少している。報告書によると、ウクライナでの戦争やインフレ、サプライチェーンの問題などにより、消費者は出費に慎重になっている。一般的に、eコマースはパンデミック以前のレベルまで後退しつつある。

 

オンラインショッピング利用者が最も多いのは北ヨーロッパ

昨年は東ヨーロッパの方が高い成長率を示したものの、売上高に占める割合は西ヨーロッパが63%と、引き続き最も高い。ちなみに、東ヨーロッパでのeコマース売上高はヨーロッパ全体の2%である。

 

オンラインショッピングを利用する人の割合は、北ヨーロッパが初めて最も高くなり(86%)、次いで西ヨーロッパ(84%)である。最もオンライン消費者が多い国はオランダ(94%)で、次いでデンマークとスウェーデン(ともに92%)だ。

 

「クロスボーダーeコマースは購入の40%を占める」

 

最もよく購入される商品は、衣類やシューズ、アクセサリーで、過去3ヶ月間のオンライン購入の68%を占めている。消費者は依然として国内の販売者から最も多く購入しており(84%)、クロスボーダーeコマースは最近の購入の40%を占めている。

 

企業は2030年までにデジタル投資を倍増すべき

Ecommerce Europeの事務局長Luca Cassetti氏は「まだ評価は難しいが、ウクライナでの戦争は、ヨーロッパ経済だけではなく、eコマース市場にも重大な影響を与えるだろう」とコメントしている。「我々の会員企業の多くは、すでに消費者の購買力や信頼感の低下を報告しており、その主な原因は、エネルギー価格の高騰、インフレ、将来に対する不安である」。

 

「多くの会員企業が、消費者の購買力と信頼感の低下を報告している」

 

EuroCommerceの事務局長Christel Delberghe氏は「2030年まで企業はデジタル投資を倍増させなければならない」と述べている。「多くの企業にとって、デジタルプレゼンスを活かせるかどうかが、生き残るための課題となりつつある。我々の顧客は、オンラインとオフラインのインタラクションを様々に組み合わせて、シームレスな体験を提供することを期待している」。

 

さらにDelberghe氏は、「中小企業のデジタル化を支援するには、献身的なサポート、技術的なアドバイス、オンラインプレゼンスを促進する様々なツールに対する認識を深めることが必要だ」と言及した。

 

※当記事は欧州メディア「Ecommerce News Europe」の6/29公開の記事を翻訳・補足したものです。