経済産業省は7月27日、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の改定を実施。今回、AIスピーカーを利用した電子商取引に関する取り決めの他、国境を越えた取引に関する製品安全関係法の適用範囲に関してなどが新たに定められた。

同準則は、平成14年3月に策定以降、ECや情報財取引等の実務、関連する技術の動向、国内外のルール整備の状況などに応じて、随時改定を行ってきた。今回は、産業構造審議会商務流通情報分科会情報経済小委員会IT利活用ビジネスに関するルール整備ワーキンググループにおいて得られた検討結果をふまえた改定だ。

 

AIスピーカーの誤認識による注文は無効契約

AIスピーカーを利用した電子商取引に関して、AIスピーカーとAIクラウドによる基本構成による商取引を想定。ユーザーが手元におくAIスピーカーを通じて送信されたユーザーの指示をAIクラウドが処理し、AIスピーカーに返信するという構成だ。

この構成のもと、商取引が行われる場合において音声の誤認識や発注者の言い間違いが生じた場合の契約の有効性について新たに定めている。

AIスピーカーが音声を誤認識したとき、例えば、幼児が母親にお菓子をねだっている音声をお菓子の発注と誤認識して、注文してしまった場合だ。このような場合、法律行為として注文の意思表示はなかったと解釈されるため、AIスピーカーを通じた契約は成立していない。事業者としては、契約が成立しない事態を防ぐために、AIスピーカーが認識した注文内容をユーザーに通知し、ユーザーからの確認が得られた後に注文を確定するという確認措置をとることが有効となる。

では、AIスピーカーに対して発注者が言い間違いをした場合はどうだろう。「タイヤ」を注文しようとして「ダイヤ」と言ってしまったと場合などが相当する。このような時、発注者の意思表示は存在しているものの、民法第95条本文(「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする」)に該当し、契約は無効となる。言い間違いが表示上の錯誤に当たるのだ。ただし、発注システムに注文内容を確認する過程が組み込まれている場合、確認措置にも関わらず、間違いを訂正せずに注文すると契約の無効を主張できない可能性が生じるという。

 

国内事業者は輸出先の海外事業者が日本に商品を流通させるか注意が必要

既に世界各国で急速な伸びをみせる越境EC。既に日本でも越境ECへ着手している会社は多く見受けられ、以前よりも簡単に国境を越えた商取引が可能となっていることで製品安全関係法の適応範囲に関して追記された。

製品安全関係法には、消費者の生命・身体に危害を及ぼす恐れがある商品について技術基準を設け、適合しない商品が国内で流通することを防ぐ目的があり、PSマークがあるか否かがこの基準にあたる。

今回の追記により、海外事業者であってもPSマークの表示がない製品を流通させることは同法の適応対象となることが定められた。また、国内事業者が製品を輸出する際は、原則としてPSマークは必要とされないものの、輸出先の海外事業者が日本国内に向けて商品を流通させることを知っている場合、同法の適用対象となるのだという。

 

今回の改定により、AIスピーカーを利用した商取引の有効・無効や、越境ECの拡大を見据えた、製品安全関係法の適応範囲などが明らか後なった。AIスピーカーを利用した商品の受注において、事業者側は確認措置をとることは不可欠であることは間違いないだろう。また、海外への商品の輸出に関しても、取引先である海外事業者の動きを把握することはマストであり、簡単に越境ECに参入できる一方で、事業者側はルールに対する注意も必要だ。