米国B to Bマーケティング会社Demandbaseは今週、「人工知能(以下AI)は今後5年間でマーケティングに革命を起こす」との調査結果を発表した。

 

米国のリサーチ会社Wakefield Researchが先月行ったオンライン調査によると、参加したB to Bマーケター500人のうち80%が、AIによるマーケティングの革命を期待していると回答。しかしAIをどうマーケティングに利用できるか確実に理解している人はたったの26%、AIを既に利用していると答えたのは10%にとどまった。

Demandbase社の技術上席副社長Aman Naimat氏は、AIが可能にする「超個別化された顧客体験が、マーケティングとセールス分野にとって大きな救いになる可能性」を示唆。AIにより「ある見込み客と、その人物に関する必要な予備知識を持ったマーケターの1対1の会話を可能にする」と米国媒体CRM Buyerに語っている。

CRMのクラウディングサービス会社Salesforce社が今週初めに発表した新サービス「LiveMessage」が良い例。

「現実的に、セールスとマーケティング部門においてAIの持つ能力を最大限活用できる企業は1~2%に過ぎない」とNaimat氏は見ている。

 

AIの恩恵

Demandbase社が行った調査によると、回答者の60%がAIのもたらす何らかのプラスの作用を期待していることが明らかに。

AIによる潜在顧客の特定を期待する人が53%、日々の作業の迅速化を期待する人が53%、マーケティングのより詳細な分析を期待する人は56%という結果。AIの活用により、より高い販売成約率をもたらすことを期待すると回答した人は59%であった。その他、58%は売上増、54%はWebサイトのエンゲージメント率増加、52%は見込み顧客の増加を期待するという結果も出ている。

 

来るAIの爆発的普及

「回答者の80%が“AIはマーケティングに革命を起こす”と信じているにも拘わらず、その方法を熟知していたり既に活用したりしている人はほとんどいない。まさにAI産業にとって好機到来直前といった状況だ」とB to B支援のソフトウェア開発会社Conversicaの製品マーケティング部長Gary Gerber氏は指摘。

AIは潜在顧客を獲得する過程では「たいていは平均2、3回で諦めてしまう」と話すGary氏。「獲得するのが難しい潜在顧客を、まだまだ多く残している」と加える。

2016年の販売実績レポートによると、Conversica社調査員が「購買意欲のある買い物客」のふりをして連絡をとった企業のうち、3分の1はまったく反応が無かったという。また3分の2以上の企業は、多くても2度連絡を試みた後、調査員にコンタクトすることを止めてしまったとのこと。

 

AIの懸念

Demandbase社による調査の結果、回答者の60%がAIを既存の技術に組み込む事を最大の課題としていた。54%が従業員の教育を最も懸念しており、46%が結果の理解や解釈に高いハードルを感じていた。

一方、AIを取り入れる費用面を懸念しているのはたった42%だけだった。

調査会社のConstellation Research社主席アナリスト、Natalie Petouhoff氏は、「AIと機械学習は企業の持つ顧客情報を変換できる」と言う。しかし「通常のビジネスユーザーにも簡単に使ってもらえるような進化がこの技術には必要だ」と語った。

そこには考慮すべき問題も。

「多すぎる情報が私生活やプライバシーを侵害するのはいつか」とPetouhoff氏は問いかける。「それは人によって異なり、一人ひとりに最適化したサービスを一度に広く提供することは難しい。」

 

将来は何が有効か

Conversica社Gerber氏は「現在AIは、IBMやエプソンのような企業に強い競争力をもたらしており、企業はただちにAI導入計画に注力し始めるべきだ」と力説。

Constellation Research社の主席アナリストCindy Zhou氏によると、AIを使った販売技術を提供する企業は、「購入の可能性の高い見込み客を選別するために人間のような会話型の電子メールを使い、その結果は販売員と共有している」そう。「企業の上層部の人々はすぐにでも、AI技術のマーケティングとセールスにおける活用法を研究しはじめるべきである」と語る。

 

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の12/16公開の記事を翻訳・補足したものです。