ECサイトのビッグデータから、イベント商戦時期の売上ピークと有名店の施策を見る

 

ECサイトを運営していると、競合店舗はどのような売上推移をしているのだろうか、どのような施策を行っているのだろうか、など非常に気になることが多いだろう。今回はそのようなデータをビッグデータ的に解析することで詳細の売上推計や施策まで分析する秀逸なサービスを用いて、イベント商戦における売上推計と有名店のオンライン施策を見ていきたい。

 

<参考>

ECサイトの競合比較調査を行う際に絶対に使いたいツール - どこまで競合サイトを丸裸にすることができるのか

 

 

今回の調査対象ビッグデータ

 

現在市場は母の日が終わり、父の日商戦へ向けた仕込の実施タイミングであるが、今回は、2月~3月にかけてピークを迎えていたバレンタインデー・ホワイトデーの商戦にスコープをあてていく。時期としては2016年1月1日~3月31日までの楽天市場におけるスイーツ・お菓子カテゴリのデータを、ECサイトのビッグデータ解析サービス、Nint for ECommerceを用いて解析する。

Nintは楽天市場のみならず、Yahoo!ショッピング、Tmall、Taobaoの各カテゴリ、各ショップ、各商品のデイリーでの売上や、広告施策などを全てビックデータ的アプローチで解析・表示するサービスとなっている。

それでは、実際のデータ推移を見ていこう。ただし今回の数値分析の元となっているデータについては、Nintの推計値であることに注意したい。

※当記事はNint for ECommerceを提供する株式会社アドウェイズからEC推計データ提供を受け企画・作成した。

 

 

スイーツ・お菓子カテゴリの売上高推計

 

まず、楽天市場のスイーツ・お菓子カテゴリの年間の売上高推計を見てみよう。

年間で見ると12月のクリスマスシーズン、そして1月~3月のバレンタインデー・ホワイトデーシーズンの売上が高いことが分かる。この時期は一番売上が凹む8月~11月の約倍程度の売上があることが読み取れる。カテゴリ別に見ると4月~7月は洋菓子カテゴリの売上が多いが、12月~3月はチョコレートカテゴリの売上が非常に多くなっていることがデータからも確認できる。特に2月はスイーツ・お菓子カテゴリの40%の売上がチョコレートとなっている。

次に、2016年1月~3月の売上高トップ20の店舗とその売上高推計を見てみよう。

最も売上を上げた店舗はこの3ヶ月で4.1億円、2位で2.7億円、20位で7,400万円となっている。この中から、バレンタインデー・ホワイトデー商戦を戦っているスイーツに特化した12店舗をピックアップしてデイリーの売上高推計を見てみる。

日毎に12店舗のデータを合計してみると、バレンタインデー・ホワイトデーそれぞれの商戦のタイミングが浮かび上がってくる。バレンタインデーの商戦は比較的長く1月中旬頃からダラダラと続いている。逆にホワイトデー商戦は短期集中で3月にはいってからの2週間で一気に盛り上がっている。それぞれのピークは2月7日と3月6日で、イベント当日の7~8日前となっている。

店舗による違いもあるが、イベント前1ヶ月の売上高は、バレンタインデー期間の売上を100とした場合、ホワイトデー期間は86.6となっている。しかし、イベント前2週間に限ると、ホワイトデー期間が103.3となりバレンタインデーを上回っている。市場ではバレンタインデーの認知をホワイトデーが後追いしている感じであるが、今や共に十分な売上を狙える大きなイベントとなっていることが分かる。そしてイベント間近だけで見ると、オンラインではホワイトデーの方が市場規模が若干ではあるが大きいことは興味深い事実だ。

 

 

有名3店舗の売上高推計と広告施策

 

続いて、バレンタインデー・ホワイトデー商戦において実店舗のブランド認知度が高い3店舗、ゴディバキハチモロゾフをピックアップして細かく見ていく。デイリーの売上高推計と各施策(メルマガ、PC施策、スマホ施策)の実施状況を見ていく。

上からゴディバ、キハチ、モロゾフとなる。それぞれの2016年1月~3月までのスイーツ・お菓子カテゴリにおける売上高のショップ順位は、6位、21位、23位となっている。

それぞれにピークの違いがあり、ゴディバはバレンタインデーの方が売上が高い。キハチはホワイトデーの方が売上が高い。モロゾフはバレンタインデーのみで、ホワイトデー商戦には全く参加していないようだ。

ゴディバとキハチはメルマガをしっかり打っている。施策に関してはキハチがかなり多くの施策を行っていることがわかる。モロゾフはもう少しメルマガと施策をしっかり打てばバレンタインデーだけでなくホワイトデーについても売上を上げられる伸びしろがありそうにも思える。

バレンタインデー期間1ヶ月の売上を100とした場合、ホワイトデー期間1ヶ月の売上はそれぞれ32.2、85.2、7.1となっており、まさに3者3様といった感じだ。バレンタインデー施策の開始時期はいずれも1月5~7日とかなり早く、2月15日になるとぴたっと施策を止める、もしくはホワイトデーに切り替える形を取っている。スイーツ・お菓子カテゴリをメインとする店舗においてはこの年始から3月14日までは非常に忙しい時期といえよう。

 

 

スイーツ・お菓子カテゴリ売れ筋商品の売上高推計

 

次は商品単位に見ていく。楽天市場のスイーツ・お菓子カテゴリにおいて2016年1月~3月までの期間の売上高推計トップ30の商品を見てみよう。

ギフトニーズで複数購入することが多いためか、単価は1,500~2,500円程度が多く平均は2,204円。4,000円を超える単価の商品はショップ順位3位の店舗が取り扱っている2商品のみ。また、ショップ順位トップ20に入る店舗が取り扱っている商品がほとんどを占め、21位以下からは2商品のみとなっている。ショップ順位トップ5の店舗に限ると17商品もランクインしており、売れる店舗作りのためには売れ筋商品の開発は欠かせないことが分かる。レビューについても最大で1.7万も付いている商品もあるなど、平均しても5,721と売上にはレビューの獲得が欠かせない。今回はこの中から、トップ10商品をピックアップしてデイリーの売上高推計を見てみる。

上段左から商品1位~3位、2段目左から4位~6位、3段目左から7位~9位、下段左から10位、10位までの合計売上高となる。こうしてみると、商品毎にピークの現れ方はかなり個性があることが分かる。バレンタインデーとホワイトデーを共に戦っている商品は6商品、バレンタインデーのみの商品は2商品、ホワイトデーのみの商品が2商品。売上1位の商品がホワイトデーのみの商品というのも興味深い。

 

 

イベント商戦時期の売上ピークと施策の考え方

 

肌感覚では分かってはいたものの、データから改めて分かることはいくつかあった。各商戦は、イベント当日の7日~8日前が売上のピークとなるようだ。しかし、おせちやクリスマスなど他の商戦ではまた違ったタイミングがあるだろう。バレンタインデーとホワイトデーは若干の義務感を伴うイベントであるので、このような駆け込み型のピークが存在するのではないだろうか。また思った以上にホワイトデーの市場規模は大きく、特に店舗で購入することが恥ずかしいと思う男性陣からするとオンラインでの購入は親和性が高いことが分かった。

また、この時期のスイーツ・お菓子カテゴリは類似のイベントが2ヶ月続く繁忙期だ。しかし実際には半分程度の店舗しか両方のイベントをしっかり活用しておらず、もったいなさを感じた。片方で売上を作れるノウハウがあるのであれば、それを他方で実践するだけで売上を作れる時期ともいえるのでしっかりこれらのイベントに乗っていきたい。

この期間の商品別の売上高トップの商品は店舗の売上高順位で見ても14位相当となる。このようなイベント時期には特に1つの絶対的に強い商品を作り、店舗の売上を牽引していく、という発想が重要になってくる。イベントに合わせてしっかりと消費者の心を掴む商品を作り、レビューを集め磐石のものとしていくことで、イベントでしっかり戦える商品、そして店舗を作っていけるだろう。

そして、なかなか競合店舗のデータを見ることが難しい楽天市場においてもここまで他の店舗や商品の状況、施策の状況まで分かることが可能であれば、それらを参考にすることで、もっと強い商品を作っていくことも可能になるのではないだろうか。