市場の後発サイトがとるべきEC戦略3つの基本 - 特定セグメントでのリーディングカンパニーを目指そう

 

EC市場が一段落している中、既にシェアを大きく持っているそのジャンルの先行企業が明確になってきているケースも多いだろう。ジャンルによってはリーディング企業が複数あり切磋琢磨しているケースもある。リアルを含めた売上高ではリーディングカンパニーではあるが、オンラインでは他の企業が優位に立っているケースもある。そのような、ECで後塵を拝している企業(多くの場合EC後発企業)はどのようなEC戦略をとるべきなのだろうか。今回はそのような視点で戦略を考えていく。

※この記事はある条件下においての論説であり、全ての場合にあてはまるものではないことをご了承いただきたい。

 

 

後発サイトが置かれている市場環境

 

リアルではリーディングカンパニーなのにオンラインではどうにも競合に勝てない企業において、経営層からはECサイトでの売上を上げることのプレッシャーは相当高まってくるだろう。また、目の上のたんこぶ的な競合サイトが成功を積み重ねているのに、どうにも自社のECサイトは同様の手法を取ってもなかなか追いつけない、差が広がるケースもあるだろう。また、新たにECサイトの運営部署に異動となり初めて市場環境を目にして、手のつけられないほどのリーディング企業が育ってしまっていることに気が付いたケースもあるだろう。いずれにしても市場における大部分のECサイトはリーディングカンパニーではないはずだ。

このような状況においてどのような戦略を取るべきか、今回は代表的な3つのEC戦略を見ていきたい。

 

 

強みの明確化

 

オンライン上での後発サイトが取るべき戦略の第一歩としては、オンライン上での訴求ポイント(≒強み)を見つけることだ。すなわちリーディングカンパニーの真似をして同じことをすることは最もNGとなる。でもいまさら強みなんて見つけられない、強みなんて無いと感じる場合もあるかもしれない。しかし、どのようなECサイトにも必ず1つはどこにも負けない強みがあるはずだ。取り扱っている商品のうちのいくつかは売上シェアやユーザー認知度がNO1だ、という場合はそれほど問題は少ない。しかしそのような場合はそれほど多くなく、品質、価格、納期、サポート、歴史、専門性など様々な視点から強みを見つけていく必要がある。

出典:ネットショップマスター資格認定講座カリキュラム資料

 

また、自分たちではそれが強みだと思っていてもそれが潜在顧客からみたら強みには映らないケースも多い。強みを考えた後に、しっかり競合店舗を調査し、場合によってはメルマガに登録したり購入したりして本当にその強みが響いているのか客観的な視点で判断していく必要があるだろう。場合によってはユーザー調査などをしてもいいかもしれない。

出典:ネットショップマスター資格認定講座カリキュラム資料

 

他社には負けないNO1を見つけることが出来たら次はそれをサイトや施策に反映していかないといけない。潜在顧客にそのNO1を伝えることが出来ているのか。広告のクリエイティブや、自社メディアの内容などに反映をすることは必須だ。強みを訴求するためのオウンドメディアでブランディングと認知拡大を図り、市場においてどこよりもその領域について詳しくなり、その領域について詳しい情報発信を行い信頼を勝ち取ることが重要だろう。またサイト内でも強みを前面に押し出し、サイト構成や商品写真、商品訴求テキストなども細かく見直していく必要があるだろう。さらにリピート施策においてもそれらの反映は必要となるだろう。

 

<参考>

オウンドメディアを用いたコンテンツマーケティングを成功に導く3つの鍵 - 流行に流されずに地に足の付いた取り組みとしていくために

 

 

捨てること

 

戦略において最も重要で最も難しいものは捨てることと言われている。この商品も、あの商品も、このセグメントのお客様も、あのセグメントのお客様も捨てがたい。そのような状況においても、まず初期段階では「強み」がある領域以外は全てを捨ててもいいかもしれない。リアルだと全方位的に攻めることが出来ていても、オンラインでは絞込みは、少なくとも初期では必要だろう。

捨て方としては、商品を捨てる、一部の広告チャネルを捨てるなど様々だ。本当にゴミ箱に商品を捨てるのではなく、その商品へのリソースの投下を行わない、場合によっては掲載しないということも必要だろう。多くの商品を取り扱い、全てのチャネルで網羅的に広告を行ってきた場合でも見直しが必要な時が来ているだろう。

一般的には、販促効果は投じたリソースの2乗に比例すると言われている。例えば限られたリソース(人・モノ・金)を絞り込んだ商品に投じればその効果は上がるのは理解できるだろう。10のリソースがある場合、1つの商品に投下した場合の販促効果は100、2つの商品に投下した場合は25、3つの商品に投下 した場合は10.89となり、1つの商品の場合の1/10に減じてしまう。

出典:ネットショップマスター資格認定講座カリキュラム資料

 

ここでは分かりやすいように商品に強みがある場合で説明したが、強みがあるもの以外をしっかり捨てることは理に適っていると言えよう。

 

 

社内認知

 

後発サイトが後発サイトとなってしまっている大きな理由の一つに、企業全体でのオンラインへの取り組み姿勢の問題があるだろう。後発サイトを運営している企業の多くが、社内におけるECサイトへの理解が非常に低いことが多い。

例えば、経営層がECにただ出店しておけば、それほど予算をかけなくても勝手に売れるものだと考えている会社のECは伸びない。また、リアルでの成功体験、現状でのチャネルや商品ラインナップをそのままオンラインに持ち込もうとするケースも上述のように成功確率が低くなる。一方で、2番手であることを理解し、強みを体現したサイトに積極的に協力してくれる体制を敷けるところは伸びてくる。

 

1番手に大きく遅れていることを経営層が理解し、そのためにはそれなりのオンラインへの投資が必要であることを理解し、オンラインに特化した戦略をとれるかどうか、それが最も重要な成功の鍵となるだろう。そして忘れてはならないのが、広報部門の1部署や、システム部門内の組織で、その予算の中から施策費用を捻出しようとしても成果は一向に上がってこない。しっかりと社内的にしっかりとした立場の経営層の直轄チームとなり、施策を進めていくことが重要だろう。可能であればCMO(最高マーケティング責任者)がECサイトだけなく、他の全てのマーケティング施策をトータルでコントロールすることが出来る体制が望ましい。

 

 

特定セグメントでのリーディングカンパニーを目指そう

 

同じ領域でNO1を目指すのではなく、狭い領域での絶対的なNO1を作っていく。これはECに限らずどのようなビジネスでもいえることかもしれない。しかし、従来から集客を増やすためには商品数を増やせ、広告チャネルをとにかく増やせ、というようなことがEC業界では言われていた時代もあり、なかなかこのような戦略をとりにくい部分もあるだろう。

しかし、時代は変わってきている。一部の主要メディアの情報しか入手できず、そのメディアの情報に良くも悪くも踊らされていた時代から、ソーシャルや多種多様なメディアの勃興により、多くのオンライン上のユーザーが自分の細かい趣味・嗜好に沿った情報入手を行う時代が始まっている。そのため、商品レンジや網羅性などで企業や商品を選択する時代から、特定セグメントでの絶対的なNO1サイトを選択する時代に変わってきているのだ。

業界内で誰しもが知る特徴を持つサイトとなることを目指すこと。そうなったときに、はじめて潜在顧客からも特定セグメントでのリーディングカンパニーとして認知され、売上がしっかり作ることが出来るようになっているのではないだろうか。