経済的な困難が続く中、一部の起業家は、Amazonマーケットプレイスと連携した特別なマーケティングツールで成功を手にしている。これらのツールやその他のマーケットプレイスで提供されているものを活用することで、他の中小企業経営者は景気後退という課題をうまく乗り切ることができるだろう。

 

Jungle Scout(Amazonに対応する商品リサーチツールを提供する米国企業)がこの度発表した「2023年Amazonセラーレポート」によると、こうした小規模事業者の売上は大幅に伸びており、2023年は89%が利益を得ているという。この数字は前年の85%から上昇しており、非常に重要な意味を持つ。セラーは、商品そのものから配送、広告に至るまで、あらゆるコストの上昇を経験している。

 

Amazonにおける小売業者の販売成功の鍵は、Jungle Scoutのような起業家精神をサポートするプラットフォームから得られた後押しだ。Jungle Scoutは、5億点以上のAmazon商品のデータを処理している。同社のデータベースは、Amazonのカタログにある商品や商品の販売履歴を追跡している。

 

AmazonセラーであるJake Zaratsian氏は、マーケットプレイスのセラーや購買嗜好、その他の小売統計に関するインサイトを得るために、同社の調査を大いに利用した。

 

「Jungle Scoutのおかげで、2年以上にわたる過去のAmazonの売上と競合のデータから私の市場規模を定量化し、検索ボリュームの推定値から私のニッチ分野におけるトップキーワードを特定することができ、またAmazon FBAの手数料とROIがいくらになるかについて、明確なインサイトを得ることができた」と同氏は語った。

 

「FBA」は「フルフィルメント by Amazon」とも呼ばれ、小売業者がAmazonを利用して顧客の注文を保管、ピッキング、梱包、発送できるようにするサービスである。

 

Amazonセラーのマルチチャネル戦略と人口統計

Jungle Scoutのレポートによると、Amazonセラーは、他の分野と比較して、他のeコマースビジネスと同等の回復力を備えているという。これは世界中のeコマースにとって大きな意味を持つ。

 

マルチチャネルマーケティングがセラーの成功を後押ししている。たとえば、Amazonの小売業者の61%(前年の58%から増加)は2022年に少なくとも1つの他のチャネルを利用しており、半数以上は2023年に新しいeコマースプラットフォームや新しいグローバルマーケットプレイスを模索する予定である。

 

Jungle Scoutのレポートのベースとなる調査に回答したAmazonセラーは、自身のマルチチャネルマーケティングプランを実現するための代替プラットフォーム上位5つを挙げている。首位はeBay、そしてShopifyがそれに続いた。また、WalmartEtsy、Facebook Marketplaceが残りのマーケットプレイス枠を獲得した。

 

さらに、セラーの3人に1人は今年、他のeコマースブランドの買収に注力しており、業界の将来に対する全体的な自信を示している。このレポートでは、Amazonセラーのプロフィールにおける差異による成功の違いは報告されていない。

 

しかし、レポートによると、典型的なセラーは24歳から44歳(58%)で、圧倒的に男性が多い(72%)という。そして、Amazonで商品を販売することだけが彼らの収入源ではない。半数はeコマース以外のフルタイムまたはパートタイムの仕事に就いている。

 

販売戦略に不可欠な分析

景気後退時にeコマースビジネスを立ち上げ、成功させるためのZaratsian氏から起業家への最大のヒントの一つは、投資する前に市場を十分に理解することである。このアドバイスは、同氏がAmazonで小売ビジネスを立ち上げる際に直面したことを象徴している。

 

まず、商品が年間を通じて高い需要があることを確認しよう。そして、競合を分析し、定評のあるブランドがそのカテゴリーを支配しているのか、それとも新しいセラーが競合しているのかをチェックするのだ。

 

 

Jungle Scoutのeコマーストレーニングエキスパート Jake Zaratsian氏

 

「しかし、最も重要なのは、商品の販売に関連するすべてのコストと手数料を把握することだ。 これにより、予想される ROI (できれば100%以上がよい) が明確になる」と、Zaratsian氏は説明する。

 

セラーをサポートする企業は、Amazonへの新規参入者にとって重要な役割を果たしうる。また、Amazonも、セラーにトレーニングやマーケティングツールを提供している。

 

Zaratsian氏が簡単に説明してくれた2つのツールは、似たような響きの名称の「Jungle Scout」と「AMZScout」だ。

 

「AMZScout」は、主に商品リサーチを行うツールで、パラメーターを設定し、Amazonのデータベースから売れる商品のアイデアを探し出す。その後、ユーザーはキーワードを調査し、競合他社の分析を行う。

 

一方、「Jungle Scout」はセラーがすべてを明らかにし、数値化するのに役立つ、とZaratsian氏は話す。同社のAmazon FBAガイドはYouTubeで公開されており、Jungle ScoutのYouTubeチャンネルではその他にも多くの小売販売レッスンが公開されている。

 

Zaratsian氏はその後、Jungle Scoutとより密接な関係を持つようになった。両社の違いは、Jungle Scoutが商品とキーワードのリサーチツール以上のものをセラーに提供している点だ。

 

たとえば、Zaratsian氏によると、Jungle Scoutは在庫管理、売上、利益、広告分析、マーケティング、サプライヤーリサーチツールなど、ビジネスのあらゆる段階を効果的に管理・拡大するためのソリューションをセラーに提供しているという。

 

ドロップシッピングからプライベートブランドの成功へ

これらのツールは、Amazonのマーケットプレイスの利用前に小売業を全く経験していなかった訳ではなかったZaratsian氏にとって大きな助けとなった。まず、同氏はドロップシッピング(在庫を持たずに商品を販売するビジネスモデル)を数年間試してみた。

 

そのビジネスは大成功を収めたわけではなかったが、eコマースに足を踏み入れるのに役立ったと同氏は認める。Zaratsian氏はAmazonセラーになり、自分のプライベートブランドの商品を扱うことで、よりビジネスをコントロールできるようになった。

 

「私はドロップシッピングをやめ、それからはそれに戻ることはなかった。プライベートブランドと違って、私は自分の商品を所有していなかったのだ」と、同氏は語った。

 

同氏がプライベートブランド商品で最も楽しんでいるのは、いつかビジネス全体を売却して、別のことに集中したり、別のブランドを立ち上げたりできることだ。

 

「ドロップシッピングではそれができないので、切り替えてよかったと思う」と、同氏は話す。

 

Amazonで経験を積む

Zaratsian氏は、Jungle Scoutが提供するProduct Database(商品データベース)、Rank Tracker(ランキングトラッカー)、Extension(拡張)ツールに注目して、自身が販売する商品を探した。同氏は高度なフィルターを導入することで、競合が比較的少なく、高いROIを持続的に得られる、高需要の最高の製品だけを選別して、整理した。

 

「これらのフィルターを使うことで、Jungle Scoutは私の条件をすべて満たす商品の長いリストを提示してくれた。そして、数日かけてその結果を分析したところ、そのデータは私が今販売している商品にまっすぐ導いてくれた」と同氏は話す。

 

なぜ、同氏は自身が販売する商品をリサーチするのだろうか。それは、誰も欲しがらない商品を売ろうと、苦労して稼いだお金をすべて失ってしまうかもしれないという、内なる恐怖心を落ち着かせるためだ。

 

直感に頼ってビジネスをするのではなく、同氏は正確性を有する過去の販売データを頼りに、データに基づいた賢明な決断を下すことを選択したのだ。このデータ重視のアプローチこそが、Jungle Scoutが自身の成功に欠かせないものとなった理由だと同氏は付け加えた。

 

「Jungle Scoutはまた、過度に競争的なカテゴリーを特定し、どの商品が低コストで利益率が高いかを理解するのにも役立った。このレベルの詳細なインサイトを武器にしながら、大規模な投資の前の機会検証のためにできる限りのことはすべてやったと分かって、肩の荷が下りたように感じた」と同氏は述べた。

 

映画製作とeコマースへの情熱の融合

Zaratsian氏は現在、Amazonセラーであり続ける傍ら、Jungle Scoutのビデオチームで脚本家とプレゼンターも務めている。これらの役割により、同氏はこれまでのスキルを活かしてハウツービデオを作成し、新人や経験豊富なセラーがeコマースビジネスを成長させることを目的とした教育コンテンツを制作している。

 

Zaratsian氏は当初、映画製作(以前は小売業に手を染めながら携わっていた活動)から転身し、Amazonコンサルタントとして名を馳せているeコマース代理店に入社した。同氏は、小規模なスタートアップから複数のカテゴリーにおけるグローバルリーダーに至るまで、さまざまなブランドと仕事をする中で幅広い経験を積んだ。

 

これをきっかけに、同氏はJungle Scoutを商品リサーチに活用し、起業家としての道を歩み始めた。そして、そこから複数の小売ビジネスを成長させた。

 

「Jungle Scoutに参加することで、思いがけず、Amazonと映画制作への情熱を結びつける機会が訪れた。私の専門知識を分かち合い、私と同じようにeコマースビジネスを立ち上げ、成長させる人々を支援できるのは、まるで夢が叶ったかのようだ」と、同氏は話す。

 

楽しみと利益のために才能を組み合わせる

Zaratsian氏は、Amazonセラーを始めた当初、Jungle Scoutから提供された販売促進に非常に満足し、最終的に同社の運営に参加することになった。同氏は現在、Amazonの3つのブランドを管理している。

 

1つ目は、環境に優しく持続可能な方法で作られたヤシの葉の皿を販売するブランドNatural Eventsだ。同社はAmazon FBAを活用し、3つのSKUで初年度に15万ドル以上の売上を達成した。

 

同氏はまた、産業・科学カテゴリーで1,000SKU以上を販売し、月間売上が100万米ドルを超えるブランドのAmazonでのオペレーションも管理している。このブランドはすべての製品を米国で製造しており、注文の処理にAmazon FBAを利用している。

 

Zaratsian氏は、Jungle Scoutでのビデオコンテンツクリエイターとしての役割に加え、同社の社内FBAブランド「Jungle Creations」も管理しており、4SKUは竹製のローストスティックと最近発売された犬用の洗えるペットシーツとで分配されている。

 

同氏は、その新製品が最初の1年で20万ドルの収益を達成し、500件以上の製品レビューを獲得したと述べた。このブランドに関するさらなるインサイトについては、Jungle ScoutのYouTubeチャンネルでセラー向けの主な戦略を観てほしい。

 

eコマース成功のためのデータ駆動型戦略

変化し続けるeコマースの状況に適応するためのマーケティング戦略についてZaratsian氏が学んだ最大の教訓は、競合他社よりも顧客をよく理解することの重要性である。

 

「AmazonのファーストパーティデータとJungle Scoutのサードパーティデータを組み合わせることで、私は顧客や顧客が直面する課題、顧客が必要とするソリューションを360度把握できるようになった」と、同氏は話す。

 

顧客のニーズが変われば、マーケティング戦略も変わる。だからこそ、データはブランドオーナーである同氏にとっての最も重要な競争上の利点なのだ。

 

時間とリソースを効果的に管理することは、すべてのビジネスオーナーにとって最大の課題のひとつだ。Jungle Scoutのようなツールを使うことで、面倒な作業の負荷を軽減し、高くつくミスを避けることができる、とZaratsian氏は述べる。こうしたツールは、成功するビジネス判断を下すために必要となる重要なデータをセラーに提供してくれる。

 

「初めてのセラーであろうと、経験豊富なプロであろうと、最も包括的なデータを持つことで、競争上の優位性が得られるのだ」と、同氏は結論付けた。

 

※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の7/13公開の記事を翻訳・補足したものです。