ChatGPTは、マーケティングコンテンツ制作の新境地の象徴である。その使用方法について深堀する前に、これから説明するアイデアを参考にしてほしい。

「ChatGPT」の話題は間違いなくもう耳にしているだろう。人工知能(AI)を搭載したこのツールは、人間が書いた文章と区別がつかないと言ってもいいほどのコンテンツを作成することができる。

当然ながら、学校や大学での盗作が懸念されている。しかし、このツールがさまざまな先進産業に応用されると気軽に考えている人もいる。ビジネス業界では、ChatGPTはマーケティングコンテンツ制作の新境地の象徴なのだ。それでも、ChatGPTにマーケティング計画をゆだねる前に、覚えておいてほしい要点がある。

 

ChatGPTとは何か

まず、このツールの詳細を知ることが役に立つだろう。

ChatGPTは、人工知能とリサーチを専門とする米国企業のOpenAIが開発した。同社はすでに、AIがアートを作成するツールの「Dall-E-2」で話題となっている。ChatGPTは、人間の言葉をうまく再現し、エッセイやメール、報告書などを簡単に作成することができる。

ChatGPTは具体的にはどのような仕組みになっているのだろうか。それは、機械学習により、ウェブ上を探し回り、既存のブログ投稿、エッセイ、オンライン雑誌などから「学習」するように設計されているボットである。その結果、このチャットボットは巧みに書かれたコンテンツを再現し、口語的な話し方やよく使われるフレーズまで再現することができるのだ。

ChatGPTが完璧というわけではない。実際、大学のシステムはChatGPTが偽の情報源や引用を作成することが多いことを発見しており、学術的な場面での使用にはおのずと限界がある。

しかし、現在のところ、正確さにかけるものの、その分スピードやアクセシビリティでそれを補っていると思われる。まさにその点が、便利なマーケティングツールとして事業主から注目されている理由なのだ。

 

マーケティングにChatGPTを使用する

ChatGPTがビジネスにどのように役に立つかを考えるとき、まず思いつくのはプロンプトを与えて、作業させることだ。ただし、企業のミッションや戦略に沿った形で利用することが重要だ。

これから説明するのは、ChatGPTをマーケティング手法に組み込むための3つの実用的な考え方である。

 

1. 非常に具体的な事例を探す

しばし、ChatGPTに関する誇大広告は忘れよう。

例えば「自動化の未来」や「AIが住宅ローン/小売/食品サービス業界を変えていく」というような一般論で語ることは簡単だ。夢を語るのは良いことかもしれないが、悪魔は細部に宿る、とよく言われる。

ChatGPTをマーケティングプランに組み込むには、非常に具体的な事例を考えることから始めなければならない。例えば、マーケティングプランにいくつか弱点があることがすでにわかっているとする。ウェブサイトの初回訪問者を引き付けることはできても、ページの直帰率に悩んでいると仮定しよう。

この事例では、ChatGPTを導入することで、ターゲット市場に関連する新しい言葉を作ることができる。さらに良いことは、企業のウェブページにAI搭載のチャットボットを使用することだ。そうすることで、ユーザーは生身の担当者と区別がつかないような相手とリアルタイムに対話できる。

これらは一般的な2つの例に過ぎない。また、ChatGPTを次のような機能に適応させることを検討してもよいだろう。

 

・検索エンジン最適化(SEO)のキーワードや検索ワードの作成

・ソーシャルメディア用の投稿記事を作成

・その他のコンテンツマーケティング用の説得力のあるコンテンツキャプションやタイトルの作成

・最適なブログ記事とオンライン記事の執筆

・動画コンテンツやポッドキャスト用のスクリプト作成

 

ChatGPTは、すでに取り組んでいるタスクやイニシアチブの補強に使うのが最適であり、そのために力を発揮する。自分のアイデアを指示するだけで、言葉を推敲し、ポッドキャストや動画などに使用可能なスクリプトを作成することができるのである(作成後の編集は必要)。

 

2. ChatGPTの利用者に役立つ新しいツールを探す

無駄な仕事を作らなくてよい。つまり、ChatGPTをそのまま利用する方法を探す必要はない。

その代わり、他社や他の開発者がこのテクノロジーを応用して、ChatGPTを使って特定の機能を果たすようにカスタマイズされたマーケティングツールを作成する方法を探すのだ。

例えば、米国に拠点を置き、多機能ドキュメントツールを提供するNotionは「WriteGPT」というツールを作成した。これはChatGPTを搭載しているが、ターゲットユーザーにパーソナライズされたメールを作成するように特化した設計となっている。

このツールは、受信者のウェブサイトをプログラムに入力することで、一致する領域のフレーズと語彙を使用して、「相手の言葉に合わせた」コンテンツを作成するため、より多くのコンバージョンにつながる可能性がある。

同様に、ChatGPT を活用して、「Hubble」というツールで顧客のフィードバックを継続的に収集することができるようになった。このフィードバックはターゲット市場のニーズや悩みの種を詳しく学習するのに役立ち、製品開発や将来のマーケティング提案の一部として活用することができる。

これらはほんの始まりにすぎない。繰り返しになるが、誰もが「AIの革命的な影響」について話題にしており、開発者がAIをビジネスツールに使用することで満たされるニーズも生み出している。

言い換えれば、マーケターができる最も賢明なことは、油断せず、マーケティング戦略を強化し、方法を洗練するChatGPT製品を探すことだ。場合によっては、すべてのプランを最初から作成するよりもこれらのツールを「そのまま」使用することも可能だ。

 

3. ユースケースを作り出さない

ユースケースが見つからない場合は、そもそもそれが存在しないという可能性がある。ビジネスに無理にChatGPTを取り入れようとすると、強化ではなく、邪魔になる可能性もある。

今日の消費者は、詐欺や操作的なマーケティング戦術に非常に敏感である。そのためマーケティング活動の変更が逆効果になることもあり得るのだ。

 

例えば、ターゲット市場と話す方法の学習にChatGPTを使うとする。しかし、自社製品がどう”イケているか”ということを、スラングや専門用語をあまりにも多用して表現すると、リーチしようとしている人たちに「必死である」、あるいはさらに悪いことに「時代遅れだ」と思われる可能性がある。

さらに、ChatGPTはまだ発展途上であることも忘れてはならない。

ChatGPTにエレクトロニクス事業用のマーケティングアイディアを10個作成するよう頼んだ場合、米国のすべての事業主が入手するようなありふれた10個のアイデアしか得られない可能性が高い。技術の進歩に伴って変わるかもしれないが、当面は、マーケティングプランにChatGPTを洗練された方法で使用するには注意が必要だ。

ビジネスのあらゆる側面にできる限りのAIツールを押し付けるのではなく、すでに行っていることを加速するようなChatGPTの使い方を考えよう。例えば、現在動画コンテンツを制作しているなら、ChatGPTにスクリプトの作成を依頼してみよう。ブログを書いているなら、独創的なタイトルの作成を手伝ってもらおう。

ChatGPTは、ボトルネックの解消や、現在の取り組みを全体的に強化・効率化するための手段だと考えてほしい。そして、新しいことに挑戦しなければならないというプレッシャーに負けないでほしい。思う通りにはいかないかもしれない。

 

AIを活用したマーケティングの未来

ChatGPTの未来には何が待っているのか。おそらくは激しい競争だ。Googleは直接のライバルとして、すでに「Bard」をリリースしている。とはいえ、ChatGPTは概念実証(PoC)として台頭している。今後さらに競合他社の登場や、前述のように特定の用途に合わせたプログラムが登場するのは時間の問題だろう。

ビジネスマーケティングに関していえば、可能性は無限だ。これらのAI製品は多くの業界に革命的な変化をもたらすかもしれないが、そのようなツールをどう活用するのがベストなのか、マーケターが判断しなければならないという新たな要求も生まれている。

結局のところ、AIの進歩には、マーケターが「人間の心」という最大のリソースすべてを活用することをもう一度必要としているのだ。

 

※当記事は米国メディア「Entrepreneur」の4/29公開の記事を翻訳・補足したものです。