コンテンツマーケティングは、より良いカスタマーエクスペリエンスを実現する。その理由と、成果を上げるためのヒントやツールを紹介しよう。
「コンテンツが一番大事である」、と何度も言われてきた。しかし、昨今では、より正確には「カスタマーエクスペリエンスが一番大事である」と言えるかもしれない。そして、このハイパーコネクテッドワールドでは、誰もが注目を集めるために争っているが、良いコンテンツこそが、良い体験を生み出す原動力となるのだ。
企業は、コンテンツマーケティング戦略によって、ブランドの認知度を高め、見込み客や顧客を教育し、信頼性を確立している。良いカスタマーエクスペリエンスを提供するということは、関連性が高く、パーソナライズされたコンテンツを、顧客に適した方法で提供することを意味することが多くなってきている。顧客が必要とするコンテンツを、顧客が必要とする時に提供することは、最終的にマーケティング担当者の成果を上げることにつながる。
つまり、消費者が企業と接する際に利用する多くのタッチポイントにおいて、常に新鮮で関連性があり、かつパーソナライズされたコンテンツを提供できるように拡張していくことだ。
コンテンツマーケティングにおけるパーソナライズの重要性とは何だろうか?米国の大手コンサルティング企業McKinseyの最近のデータによると、約71%の消費者は、企業がパーソナライズされたインタラクションを提供することを期待しているという。4分の3近くの人は、企業がこの期待に応えていないと感じた場合、必要な商品やサービスを他で探すという。
今回は、その内容をご紹介しよう。
・コンテンツマーケティングとは何か?
・マーケターがコンテンツマーケティングに関心を持つべき理由
・コンテンツマーケティングはどの程度有効なのか?
・コンテンツマーケティングツールを使用している、または取り組んでいるのは誰か?
・コンテンツマーケティングを可能にするツールやソフトウェアにはどのようなものがあるか?
・コンテンツマーケティングがマーケターの成功に貢献する方法
・コンテンツマーケティングの次なる展開
・その他の資料
コンテンツマーケティングとは何か?
コンテンツマーケティングとは、人々に行動(例:ニュースレターへの登録、注文、詳細情報の照会など)を起こさせることに焦点を当てた、さまざまな種類のコンテンツやアセットを開発することに依存するマーケティング手法または規律である。
コンテンツマーケティングは、有料広告とは異なり、主にオーガニックなアプローチで顧客を惹きつけ、エンゲージする。ここでいう「コンテンツ」とは、文章または映像のアセット(ガイド、記事、ブログ記事、グラフィック、ビデオ、ソーシャル投稿など)を指す。しかし、有料コンテンツのプロモーションがコンテンツマーケティングに含まれることもある。例えば、出版物のスポンサー付きコンテンツや、アクセスに料金を必要とするゲーテッドコンテンツなどである。
コンテンツマーケティングは、インバウンドマーケティングをはじめとするカスタマーエクスペリエンス型のアプローチと密接に関連している。見込み客を集め、リードや顧客にするためのトップオブファネル戦術として使われることが多い。それでも、既存の関係を育成し、リードを顧客に転換するためにも利用できる。
コンテンツマーケティング研究所(CMI)は、コンテンツマーケティングについて、以下の公式な定義を設けている。
「コンテンツマーケティングとは、明確に定義されたオーディエンスを惹きつけ、維持し、最終的には有益な顧客行動を促進するために、価値ある適切な一貫したコンテンツを作成し、配信することに焦点を当てた戦略的マーケティング手法である」。
コンテンツマーケティングモデルには、以下の3つのタイプがある。
・ペイド(有料):コンテンツがペイウォールの後ろにある、またはアクセスするために何らかの購入が必要なもの。
・オウンド(所有):企業が制作し、自社のチャネル(ウェブサイト、ブログ、ソーシャルメディアなど)で公開するコンテンツ。
・アーンド(獲得):企業以外が公開したコンテンツ(例:ユーザー作成コンテンツ、インフルエンサーコンテンツ、メディア掲載など)。
コンテンツがどのような場所に置かれているかに関わらず、優れたコンテンツマーケティング戦略を定義する2つの統一された特徴がある。それは「関連性」と「品質」である。
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マーケターがコンテンツマーケティングに関心を持つべき理由
消費者の購買サイクルは、複数のタッチポイントにまたがるセルフサービス化が進んでいる。
消費者の期待に応え、競合他社に遅れを取らないためには、マーケティング担当者は、多くの異なるチャネルで効果的に共有できる高品質のコンテンツを大量に作成する必要がある。
この乱立するコンテンツ・エコシステムの中で際立つには、パーソナライズされたコンテンツを大規模に制作する必要がある。コンテンツ・オートメーション・ツールやプラットフォームは、企業がコンテンツを制作、管理、共有、増幅することを可能にし、スケーラビリティ(拡張性)を促進する。つまり、現在のカスタマーエクスペリエンス主導の環境で競争するためにはコンテンツが必要であり、インパクトを与えるために必要な量のコンテンツを制作するテクノロジーが必要なのだ。
コンテンツマーケティングはどの程度有効なのか?
オールインワン競合分析ツールSemrushの「2022 State of Content Marketing Report(コンテンツマーケティングの現状に関する報告 2022年版)」によると、2021年にコンテンツマーケティングである程度の成功を収めたと回答した企業は約91%に上ったという。ほとんどの回答者が、2022年にコンテンツ予算を増やし、コンテンツ人材を採用する予定であると回答している。
現在、コンテンツマーケティング担当者は、トラフィック、検索順位、リードを見ることで成功を測定している。しかし、これは変わりつつある。コンテンツマーケターは、エンゲージメント、コンバージョン率、ROIなど、他の指標にますます注目している。もちろん、これを支援する技術的なツールもある。
コンテンツマーケターは、エンゲージメント、コンバージョン率、ROIなど、他の指標にますます注目している。もちろん、これを支援する技術的なツールもある。
例えば、米国のエクスペリエンスマネジメントプラットフォームを提供する企業Qualtricsのようなカスタマージャーニー分析ツールは、企業と顧客のやり取りをすべて監視し、ジャーニーの各パーツが販売、コンバージョン、資料請求などのアクションにどのように寄与しているかを分析することができる。
ジャーニー分析では、購買サイクル全体を通じて顧客が接するあらゆるコンテンツを評価し、それが測定可能な結果(販売、新規顧客、コンバージョンなど)にどのような影響を与えるかを分析する。
コンテンツマーケティングツールを使用している、または取り組んでいるのは誰か?
コンテンツマーケティングツールを使用する最も一般的なチームは、ウェブサイトのトラフィック、エンゲージメント、リード、セールスを促進することに対処するチームだ。これには以下が含まれる。
・マーケティング:コンテンツは、見込み客を惹きつけ、ファネルの最上位に位置するリードにするために使用される。
・セールス:見込み客が購入するために必要な情報を提供し、販売プロセスを加速させるために使用される。
・カスタマーエクスペリエンス:コンテンツは、購入後の顧客エンゲージメントを維持することで、顧客離れを減らし、アップセル(顧客の単価を向上させるための営業手法の一つ)やクロスセル(ある商品の購入を検討している顧客に対し、別の商品もセットもしくは単体で購入してもらうためのセールス手法)を促進することができる。
・サポートおよびサービスチーム:コンテンツは、顧客からの質問や問題に積極的に対応することで、サポートリクエストの件数を減らすのに役立つ。
コンテンツマーケティングツールを扱う職種には、以下のようなものがある。
・CMO(最高マーケティング責任者):コンテンツ戦略を指導し、他の経営幹部と協力してコンテンツ目標を設定する。
・コンテンツマネージャー:コンテンツの作成と配信を統括する。
・コンテンツプランナー:コンテンツ戦略を実行し、コンテンツカレンダーを企画する。
・コンテンツライター:コンテンツを作成する。
・編集者:コンテンツのレビューと承認を行う。
・デザイナー:コンテンツに応じたビジュアルを作成する。
・マーケティングアナリスト:コンテンツマーケティングのパフォーマンス指標をトラッキングし、レポートする。
・営業担当者または代理店:販売プロセスをサポートするためにコンテンツを使用する。
・カスタマーサクセスマネージャーまたはエージェント:顧客との関係を維持するためにコンテンツを使用する。
コンテンツマーケティングを可能にするツールやソフトウェアにはどのようなものがあるか?
企業が作成するコンテンツの作成、配信、ターゲット、測定を支援するさまざまなツールやプラットフォームがある。それらは以下の通りである。
・HubSpotやJoomlaなどのコンテンツ管理システム(CMS)
ウェブサイトのコンテンツ(ウェブページ、ブログ記事、eコマース商品ページなど)を作成、保存、管理できる。
・SitecoreやAdobe Experience Managerなどのデジタル体験プラットフォーム(DXP)
デジタル資産管理、顧客データ管理、パーソナライゼーションとテスト、マーケティングオートメーションなどの強固なコンテンツオーケストレーション機能を提供する。
キーワードリサーチ、コンテンツ最適化、リンク構築、SEOランク監視のためのツールを提供する。
・Sprout SocialやBrandwatch(旧Falcon.io)などのソーシャルメディアスイート
ソーシャルパブリッシング、キャンペーン最適化、ソーシャルエンゲージメントなどの機能があり、投稿のリーチとインパクトを向上させることができる。
・Ceralytics やParse.lyなどのコンテンツ・インテリジェンス・プラットフォーム
複数のチャネルやタッチポイントでコンテンツのパフォーマンスを追跡できる。
・AsanaやTrelloなどのコンテンツプランニングとチームコラボレーションツール
コンテンツチームがプロジェクトやワークフローの管理、ファイルの共有、エディトリアルカレンダー(コンテンツ制作や配信スケジュール管理のためのカレンダーツール)の作成、タスク/ToDoリストの割り当てを行うのに役立つ。
コンテンツマーケティングがマーケターの成功に貢献する方法
Gartner(IT分野の調査・コンサルティングを行う米国企業)は、成長性、利益率、収益性で成功を収めている企業は、一般的にカスタマー・エクスペリエンスを優先していると指摘している。これらの企業は、CXの予算が高く、見込み客が顧客になった後のことも含めて、カスタマージャーニー全体を重視している傾向が30%近くある。
コンテンツは、見込み客の獲得から顧客との関係構築まで、カスタマージャーニーのすべての段階において役割を担っている。高品質で関連性の高いコンテンツによってパーソナライズされたインタラクションを提供することに尽力する企業にとって、その見返りは大きい。
McKinseyの最近のレポートによると、急成長している企業は、競合他社と比較して40%も多くの収益をパーソナライゼーションから得ていることが明らかになった。
消費者はこのアプローチに反応する。つまり、彼らは、パーソナライズされた、関連性の高いコンテンツを企業に求めているのだ。McKinseyによると、約80%の消費者が、パーソナライズされたコンテンツは、ブランドからの購入または再購入の決定において重要な要因であると回答しているという。
正しく理解することは、規模に応じたコンテンツを作成することである。AIを活用したコンテンツがパーソナライゼーションの重要な原動力となる。コンテンツマーケティングに十分な投資を行ってきたブランドは、顧客によりパーソナライズされたコンテンツ体験を提供するために、現在AIに目を向けている。
コンテンツマーケティングの次なる展開
世界的には、コンテンツマーケティング産業は2023年までに96億ドルに達すると予測されている。この業界では、Oracle、HubSpot、Adobe、Salesforceなどが有力だが、コンテンツマーケティングには、マーケティングエージェンシー、リセラー、テクノロジーベンダー自身など、さまざまな種類のソフトウェアやサービスが含まれる。
高品質でパーソナライズされたコンテンツへの需要が高まるにつれ、コンテンツマーケティングとそれを促進するための技術は、あらゆる規模の企業にとってますます不可欠なものとなっていくだろう。タッチポイントとデバイスの普及、そして、カスタマージャーニーの「方法」と「場所」もコンテンツマーケティングの成長も重要な要因だ。
人工知能とコンテンツテクノロジーは、マーケティング担当者がパーソナライズされたコンテンツの需要に対応し、コンテンツの作成とプランニングに内包された多くのタスクを自動化するのに役立つ。しかし、効果的なコンテンツ制作と戦略には、人間の創意工夫と創造性が不可欠であることに変わりはない。企業がカスタマーエクスペリエンスに磨きをかけ、向上させていく中で、コンテンツマーケティングは今後も中心的な役割を担っていくことだろう。
その他の資料
コンテンツマーケティングのレベルアップに役立つ資料を紹介する。
・検索パフォーマンスに影響を与えるコンテンツマーケティングの機会を見出す
まず、既存のページから機会を見つけ、何らかの形で再利用、再フォーマット、更新を行うことが一般的だ。
・コンテンツマーケティングのアイデア発想。良いアイデアはどこから生まれるのか?
コンテンツの新しいアイデアを出し続けるのは簡単なことではない。ここでは、そのプロセスを支援するためのステップを紹介する。
コンテンツ需要の増大は、問題の増大を招く。
・コンテンツマーケティングのROIとROEの測定方法について
コンテンツマーケターにとってROIが不可欠な指標である理由。