ブランドは、競争の激しいデジタル空間で成功するために、ニュースパブリッシャーのプレイブックを参考にしている。

画期的なマーケティングはこれまでに以上に難しくなっている。そして、その重要性はさらに増している。

消費者は、いたる所でマーケティングメッセージに遭遇する。しかし、一人の個人に関心を持ってもらうため、さらに、消費者に商品を購入してもらうためには、キャッチーな件名や派手なソーシャルメディア・キャンペーンだけでは不十分である。新しいアプローチが必要であることに気づいたブランドが、持続的な顧客関係の構築に成功している。それは、価値を示し有益なコンテンツを適切なタイミングで提供することで信頼を築くことに焦点を合わせた、コンテンツ重視のアプローチである。

 

このようなコンテンツ活用は、まさに、何十年もの間、ニュースパブリッシャーが行なってきたことであり、ますます多くのブランドが、パブリッシャーと同じようにコンテンツマーケティングに取り組むようになっている。

 

迅速性を要する極めて複雑な世界でのつながり

このような環境で活動することは、パブリッシャーにとって当然のことである。ニュース速報、ライフスタイルトレンド、最新スポーツスコアや最新情報など、視聴者が求める情報を迅速に提供する一方で、ストーリーや続報によって読者との真の関係性を構築することに精通している。

 

パブリッシャーは、信頼性の高い魅力的なコンテンツを読者が必要とするタイミングで提供することによって、マーケティング担当者が自社ブランドと消費者の間に築きたいと考えるのと同じ信頼関係を確立している。この戦略を採用するブランドが、取り組みと投資を強化しているのは、まさにこの分野である。

 

専門知識による信頼性向上

米国日刊紙のThe Washington Postのスタッフは、読者との関係が持つ力を信じている。The Postでは、経験豊富で著名なジャーナリストがその日の出来事を伝えるだけでなく、慎重に導入したデータツールによって、緻密なファーストパーティデータのプロファイルを作成している。これにより、ビジネス 記事から社説に至るまで、組織全体が、実際のユーザーの行動に基づいて、読者のニーズや要望に合ったコンテンツを掲載することが可能となる。さらにデータを追加すると、コンテンツに対するニーズや要望が示され、それを根拠とする明確なロードマップが作成される。これらデータを分析することで、自社の視聴者がThe Postに何を求めているのかを正確に理解したうえで、同紙のコンテンツ戦略をさらに進化させることが可能となる。

 

ブランドがパブリッシャーのように思考することを選択すると、彼らの視点は、ビジネス目標から顧客の目標へとシフトする。ブランド中心の製品フォーカスなコンテンツを作成し続けるのではなく、買い手の視点を中心に据えることで、幅広いトレンドを取り上げ、ニッチ構築にきめ細かく取り組むなど、意義があり関連性の高いコンテンツを開発すること可能となり、それが信頼と継続的なエンゲージメントを生み出すこととなる。

 

また、パブリッシャーは、読者との関係は提供する記事ごとに時間をかけて確立され、深まっていくことを理解している。ブランドも、パブリッシャーと同様に、1つのキャンペーン単体で考えるべきではない。1つの商品オファーだけにとどまらない顧客との真の関係を形成することで、オーディエンスに対する信頼と実証された専門知識を確立することを考える必要がある。 見込み客は、自分が興味を持っていたり、見識を深めたり、問題を解決したり、体験を向上させたりすることができるテーマの魅力的なコンテンツを探している。マーケティング担当者は、好奇心旺盛な消費者の注目を集めるために、有益で質の高い、熟考されたコンテンツを開発しなければならない。セールスメッセージではなく、オーディエンスにとって有益な彼らのニーズにフォーカスしたコンテンツマーケティングは、持続的な信頼関係構築に役立つ。売り上げは、その後からついてくるものである。

 

ブランドは、パブリッシャーサイドの担当者に倣って、ブランドの価値観やコア・ミッションに基づいたコンテンツ戦略を立てることに最も重点を置くべきである。そうすることにより、ブランドは、自社ブランドに直接的に関係するトピック以外にも、コンテンツ戦略に含めるべきユーザーの関心事やニーズをさらに発見することができる。

 

消費者は、コンテンツから知識を得て、自分の課題が何であるかを認識するようになるが、その解決方法については明確ではない。そこでこそ、ブランドは、次のステップとして、より強力に製品詳細を紹介するコンテンツを提供することができる。また、同様に、比較対照ツールを使用したり、クリエイティブなデモを開発したり、実際のユーザー体験を共有することも有意義となる。

 

潜在顧客が意思決定段階に達したら、フリーミアム版(基本的なサービスは無料提供し、高位機能については料金を課金するビジネスモデル)、1対1のデモンストレーション、試用期間など、より具体的なコンテンツを提供するタイミングである。これらの各段階における消費者行動を注意深く分析することで、コンテンツマーケティング担当者は、最も必要なときに適切なレベルの詳細情報を提供することが可能となる。

 

最も求められている瞬間に買い手視点で作成したコンテンツを提供

多忙な顧客は、どのブランドを信頼して購入するか、あるいは見捨てるかを迅速に判断しているように思われる。しかし、顧客の判断は軽率ではない。彼らの判断は、コミュニケーションチャネル全体における企業プレゼンスに左右されている。一瞬のものでも、一つ一つのインタラクションが何かを印象付け、それが顧客を行動させ、または、行動させない要因となるのだ。

 

ニュースパブリッシャーは、読者が必要としている情報をリアルタイムにキュレートする方法をかなり前から理解している。国家的な悲劇であれポップカルチャー現象であれ、ニュースが流れれば、最も関連性が高く、うまく編集された情報を迅速に提供することで、メディアの強みとしてきた。読者は、ウェブサイト、アプリ、ソーシャルプラットフォーム、ウェアラブルなどで発信される、よく考えられたコンテンツに素早く目を通し、結論を出し、意見を形成することができるのだ。

マーケティング担当者は、パブリッシャーと同じ俊敏性をもって、コンテンツの作成と配信に取り組む必要があるだろう。すべてのマーケティングチャネルにおいて、関連性が高くタイムリーに作成した一貫性のあるメッセージングを実行することで、ブランドの認知度を高め、継続的なエンゲージメントにつながるインタラクションを構築することができるのだ。

 

コンテンツを作成する際、ニュースパブリッシャーもブランドも、分散したチームや複数のロケーション、多様な機能の管理に苦悩する。一方、ニュースパブリッシャーは、彼らのメッセージングの重要性とエラー発生時のリスクの高さから、複雑なコンテンツのワークフローの管理を余儀なくされたという独特の歴史を持っている。大規模なコンテンツチームが、多様なロケーションで、大量のコンテンツを制作していることが通常である(大手ニュースパブリッシャーの中には、1日に500本以上のコンテンツを制作しているものもある)。コンテンツ中心のマーケティングの価値を社内で共有し、強力なコンテンツマネジメントシステムと組み合わせることで、企業の最大限の努力をサポートすることができる。

 

ますます多くのニュースパブリッシャーやブランドは、デジタル・エクスペリエンス・プラットフォームを利用して、高度にパーソナライズされたコンテンツ制作を行い、より効率的なワークフローを構築して、ターゲットとするコンテンツをチャネル間で迅速に展開している。Arc XP などの DXP(デジタルエクスペリエンスプラットフォーム)は、単なる強固なコンテンツ管理システムというだけではなく、マーケティング担当者をコンテンツの世界の中心に据え、消費者に合わせた体験を提供することで、継続的な顧客関係の構築を可能にするものである。同時に、Arc XPのDXPアプローチには、ワークフローの最適化と技術的スケーラビリティを向上させるパブリッシングマインドセット機能が含まれている。

 

結論

ブランドが顧客を惹きつけエンゲージメントを獲得するためのマーケティング戦略を再考するなか、ニュースパブリッシャーが、制作から配信技術に及ぶコンテンツ戦略において築いてきた道筋は、貴重なロードマップとなる。

ニュースパブリッシャーは読者を熟知しており、膨大な時間とリソースを費やして、読者が知るべきことだけでなく読者が知りたいことを学び続けている。一方ブランドは、バイヤーズジャーニーを辿る見込み客のための強力なペルソナを開発するために、費用と社内リソースを投入している。ニュースパブリッシャーと同じ考え方で成功を収めているブランドは、目標達成を目指すキャンペーンに注力するのではなく、その考え方を捨てる代わりに、全体的に一貫性のあるメッセージングを展開するマーケティング施策によって、顧客との関係を深めることにフォーカスしているのである。

 

※当記事は米国メディア「Martech」の7/20公開の記事を翻訳・補足したものです。