これからリピート通販事業を開始し成功に導くために、考慮するべき4つの視点と12のポイント

 

コロナ禍により、ここ1年で世界は大きく変わってしまった。様々な事業が変革を余儀なくされており、その中でもリアルビジネスからオンラインビジネスへ活路を見出す事業者は非常に増えてきている。そのため、オンラインビジネス、特にeコマースビジネスへの新規参入企業は増加傾向で、その中でも顧客と継続的に関係性を築き上げるサブスクリプションモデルのリピート通販事業は選択肢の候補に上がることが多いオンラインビジネス形態と言える。そこで、今回は、これからリピート通販事業を立ち上げる際に必要な考え方や、注意すべき点について考えていく。

 

※当記事はリピート通販に特化したカートASPサービス「リピスト」を提供するPRECS社から情報提供を受け、リピート通販事業を成功に導くための方法論の一部を解説した記事である。

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リピート通販とは

 

リピート通販とは、定額料金を支払うことで同一の商品を一定の頻度で送ってもらうサービスだ。主に化粧品やサプリなどの消耗品を中心に多くの事業者がサービスを展開している。リピート通販、定期通販、リピート型ECなど、様々な表現方法で呼ばれる。また、リピート通販の派生形に頒布会と呼ばれるものもある。頒布会は、リピート通販の「同一の商品」の部分が「毎回異なる商品」となるもので、目利きがセレクトした商品が毎月送られてくる形態のサービスだ。

毎回購入するケースより安価になり、また買い忘れも防ぐことが出来るため消費者にも人気のサービス形態だ。事業者にとっても、一回受注をするだけで、一定期間の商品購入が約束されているため、毎回毎回新規顧客を開拓することと比較するとマーケティングコストが非常に安くなるというメリットもある。

 

 

リピート通販事業を開始し成功に導くために考慮すべきこと

 

このように、消費者にも事業社にもメリットが多いサービス形態ではあるが、各商品カテゴリには競合サービスも増加しており、事業を開始して成功に導くためには多くの障害を乗り越えていかないといけない。多くの難題がある中で、主に、商品・マーケティング・システム・体制の4つの視点について、考えていく。

 

 

商品特性について

 

4つの視点の中で、検討のスタートとも言えるポイントが商品特性だ。どのような商品・商材でもリピート通販で成功を勝ち取ることが出来るわけではない。ある程度、リピート通販にFITする商品特性と言うものが存在する。

 

定期的に購入する必然性

取扱商品の特性において最も重要なポイントは定期的に購入する必然性があるかどうかだ。定期的に使用され、定期的に補充のための購入が必要な商品が一番リピート通販事業にFITしている。そのため、化粧品やサプリ等、毎日あるいは短いスパンで常用される消耗品が理想的で、アパレルや雑貨などには不向きと言える。

 

商品の独自性

次に考えたいポイントは、その商品が独自性(オリジナリティ)を持っているかだ。自社以外でも取り扱える商品であれば当然他社と競合することになるので、販売価格を下げるか即日出荷や決済手段の多様化などのインフラ面で差別化が必要になる。販売価格の引き下げはそのまま利益率に直結し、インフラ面での差別化もコストとして跳ね返ってくるので、やはり利益を圧迫する。完全に独自の商品を販売すれば、こうした利益の圧縮合戦に巻き込まれずにビジネスを展開することができる。

 

課題解決 or 大きな経済メリット

これらのハードルをクリアした上で、”ユーザーの課題を解決する商品”か”大きな経済的メリットがある商品”のいずれかでないと成功は難しい。しかし、このポイントは考え方を変えるだけでクリアすることが出来るケースが多い。

例えば、今から「ソムリエが選ぶワインの頒布会」を始めたとしても成功するのは非常に難しいだろう。先行するサービスが既にあるという問題もあるが、根本的な問題は商品コンセプトがユーザーの課題を明確に解決出来ていないことにある。商品コンセプトが「ワインの選び方がわからない初心者のためにソムリエが選ぶ頒布会」や「1万円相当のワインが毎月5000円で届く頒布会」といったものになったときにチャンスが生まれてくる。

 

商品の保管設備

見落とされがちな項目だが、冷蔵や冷凍を要するものは保管できる倉庫が限られ、保管・維持費用も高くなり、送料も割高になる。相対的に保管・発送が容易な商品と比べて利益率が低くなるのだ。そのため、食品メーカーや飲食店がリピート通販に参入した場合に、商品価格に対して送料が割高になるケースが多く、利益率の確保が難しくなる。商品設計の際は送料と本体価格のバランスもしっかり意識しておきたい。

 

 

マーケティングについて

 

リピート通販でしっかりと売上を上げるためにはマーケティングについても初期からしっかり検討していく必要がある。この初期の設計段階でマーケティングを失敗すると立ち上げに完全に失敗していまう。リピート通販におけるマーケティングは、一般的なデジタルマーケティングだけでなく、大切な顧客接点となるパッケージや梱包物も含めて考える必要がある。ここではよくある失敗例とともに本来あるべき形を考えていく。

 

お試しからの引き上げを狙ってしまう

かつては非常に有効な施策だったが、現在ではCPO(定期の本コース購入1件獲得あたりにかかる広告費)と見合わないことがほとんどになっている。リピート型で販売する場合はお試しから定期への引き上げではなく、「いつでも解約可能な定期購入」を最初から販売するべきだ。両者のF2転換率(2回目の購入が起きる確率)は大きく異なり、前者では平均5%程度、後者では平均70%程度となっている。

 

簡素すぎるパッケージ

定期購入の継続率には商品の見た目も影響する。特に1回目→2回目の継続率に関しては、商品そのものよりもの見た目の影響の方が強い。明らかに廉価だとわかるパッケージだと2回目の継続率は如実に下がる。華美なものである必要はなく、「安く見えないこと」がパッケージの最も重要なポイントになる。可能であればパッケージだけでなく、配送時のダンボールにもデザインを入れておきたい。単色刷りならば費用も倉庫会社の資材費より安価になることが多い。

 

同梱物なし

箱を開けると納品書と商品のみという状況は極力避けたい。少なくとも挨拶状と商品の使い方や調理方法のガイドは同梱しておくべきだ。総合通販型の事業を行っているのであれば商品カタログ、ブランドの世界観を大切にするようなD2C型の事業モデルであればコンセプトブックなどをここに加えていきたい。ただしこだわり過ぎは禁物で、ある程度の形を決めたらまずは実際に配布する。事前にどれだけ検討を重ねても、一定以上の成果を得るためには実際に配布して最適化を行う必要があり、スタート時のクオリティに多少の差があっても、行う最適化の回数は変わらないためだ。

 

広告予算を計上していない

リピート通販事業等のeコマースの売上は、広告費に大きく依存するのが一般的だ。ブランドや商品の認知度が非常に高い場合などを除いてeコマースで広告費をかけずに商品を売ることは極めて難しくなっている。どれほど小規模なリピート通販事業であっても月間で数十万程度の広告費は予算として計上しておく必要がある。また、リピート通販事業では初回の購入額よりも、新規顧客を獲得するためのCPAの方が高くなるので、キャッシュフローにも留意しておきたい。

 

 

システムについて

 

システム面については、過剰に機能やプラットフォームを検討しすぎることなく、とは言え適切にしっかりと要件をまとめていく必要がある。使用するプラットフォームと、マーケティング系のシステムツールについて、その適度なバランスを考えていこう。

 

使用するプラットフォーム

初期に利用するショッピングカートなどのシステムプラットフォームは慎重に検討する必要がある。例えば、スモールスタートで、後からプラットフォームを変更しよう、と思って安易に決めると、移行時に多大な労力とコストがかかることになる。特にある程度の売上があり、業務フローなどもシステムに沿って構築されている場合は、移行までに半年~1年かかることも珍しくない。

しかし一方で、最初から高額なパッケージソフトの導入や、フルスクラッチでの開発を行うことも得策ではない。コストが膨らむだけでなく、eコマースの経験がないチームでは要件に必ず過不足が出るだけでなく、業務も徐々に変わってきて初期の要件からシステムへ対するニーズが大きく変わる可能性が高いからだ。

そのため、まずはASPやSaaSなどのプラットフォームからスタートし、どうしても不足する機能がある場合に、フルスクラッチでの開発を検討するのが妥当だろう。

ASP、SaaSの選定ポイントとしては、「3年後にどのくらいの売上規模になっていたいか」を軸に検討することが理想的だ。システムの費用が安いことはもちろんだが、3年後の売上規模でも十分に運用可能なシステムであること、3年後の目標を達成するために有用な機能が揃っていることを確認しておきたい。

 

マーケティング系のシステムツール

システムプラットフォームの他にCRMツールやMAツールなどのマーケティング系のツールをスタート当初から導入の検討を行うケースも多いだろう。しかし、少人数で運用する場合には導入はやめておいた方が良いだろう。eコマース事業の立ち上げ当初は新規顧客獲得のためのタスクが非常に多くなるため、既存顧客へのCRM施策等にリソースを割り当てるのはほぼ不可能になる。また、立ち上げ当初は顧客の絶対数が少ないので、ツールを活用できたとしても売上高に与えるインパクトは非常に小さくなる。毎月の売上高で300~500万円程度が安定的に出るようになってからがCRMツールやMAツールの導入を検討すべきタイミングだろう。

 

 

体制について

 

オンラインへの事業展開の際に必ずぶつかる壁は人材不足だろう。多くの企業において、現業を回すのにぴったりの人員で業務を行っているため、新規事業となるオンライン事業は当然兼任メンバーが検討を開始することになる。

 

専任の担当者

リピート通販事業の立ち上げ時は、ある程度兼業メンバーでプロジェクトチームを組むことは仕方のないことだろう。しかし、実際に運用フェーズに入った際には、専任の担当者を割り当てる必要がある。少なくともeコマース業務を最優先で行うメンバーを最低でも1名配置し、可能な限りその担当者にはeコマース以外の業務が発生しないような体制が重要だ。スタート当初は事業責任者が一人で全業務を行うケースも多い。

 

コールセンター

一方で、社外のコールセンターの利用を検討したい。お届け日の変更や住所変更などの問い合わせで、特に電話への誘導を行っていない状態でも概ね受注件数の5%ほどの受電がある。リピート通販の解約の受付を電話で行う場合にはこの数字は大きく跳ね上がるので、通常業務の傍らで受電していると担当者の負担が大きくなる。簡単な対応であれば非常に安価なコールセンターもあるので、毎月の出荷件数が200件を超える前に検討しておきたい。特に事業責任者が一人で全業務を行う体制の場合は、立ち上げ時からのコールセンター導入を考えておくべきだろう。

また、月商で数千万以上の規模まで成長した際には、CRM施策のひとつとしてコールセンターの内製化をぜひ検討したい。自社で採用を行うのでコストが大きくなり、採用、教育を行えるスーパーバイザーの雇用も必須条件になるが、適切に運用できれば極めて効果の高いCRM施策になる。

 

 

リピート通販事業を開始し成功に導くために

 

このように、商品・マーケティング・システム・体制の4つの視点でそれぞれの重要な12のポイントを見てきた。リピート通販事業を立ち上げ、成功に導くために12個も外せないポイントがあることが多いと感じるか少ないと感じるかは、それぞれの企業次第かもしれない。しかし、この12個のポイントをしっかりと踏み外すことなく留意すれば、少なくとも初期での大失敗は必ず避けることが出来るだろう。

商品特性や、体制など業種や社内環境などによっては、留意することが不可能なケースもあるだろう。しかしそのような場合でも、そのポイントをしっかり弱点として把握して、何らかの対策を打ちながら事業を進めることで、傷口は最小限に留めることが出来るだろう。

この4つの視点、12のポイントを参考に、オリジナリティ溢れるリピート通販事業を立ち上げ成功に導いていって欲しい。

 

 

※当記事はリピート通販に特化したカートASPサービス「リピスト」を提供するPRECS社から情報提供を受け、リピート通販事業を成功に導くための方法論の一部を解説した記事である。

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