新型コロナウイルス感染拡大の影響で、従来型のジムやフィットネス、ヘルス&ウェルネスセンターは閉鎖している。その間、テクノロジーによって増加するオンライン買い物客に向けた代替品や選択肢が増えているという。
消費者がオンラインで、在宅エクササイズ授業を受けたり、自宅用エクササイズや健康器具を購入したりと、これまでの買い物ルーティーンに取って代わる新しい消費者トレンドが加速している。
eBayの売上データによると、2019年と比較して、新型コロナウイルスによるロックダウンの期間中のフィットネス用品の売上が、千パーセント以上増加していることがわかった。他のマーケティング調査でも、eコマースに関する結果は同様である。
これは誤植ではない。主な在宅用フィットネス用品の売上は、特に3月以降、すべての売上記録を更新していることが、eBayの売上データやその他のレポートから明らかになっている。
この6か月で、アメリカやその他多くの国での消費者習慣は劇的に変化した。この変化の大部分は、大量の消費者がeコマースへ移行したことを反映している。
世界で6,000以上の組織に電子決済システムを提供しているアメリカ企業のACI Worldwideは、6月にeコマースの売上が、新型コロナウイルスによる制限が始まって以来最大の増加となったことを明らかにしている。
この調査が示す最も驚くべき事実は、ベンダーの倉庫からアウトドアグッズと電化製品の在庫が消えたことだ。
数字は語る
例えば、eBayでの2020年のロックダウン期間中のダンベルの売上は、2019年の3月および4月と比較して1,980%増に。また、同時期のウエイトプレートの売上は1,355%の増加だった。
eBayの300万件以上の売上データを分析したところ、消費者がより健康を意識した結果、ロックダウン期間中に最も人気のあるアイテムは、ダンベルとアクティビティトラッカー(体重やスポーツのログ、脈拍などを記録するデバイスやアプリ)だったことがわかった。
アメリカでのフィットネス関連用品売上高の増加
2019年と2020年の3月-4月の比較
eBayで消費者が2019年に購入したフィットネス関連用品トップ10の売上高増加のグラフ
eBayの分析結果が例外なのではない。他にも、実店舗およびオンラインでの購入に関する消費者の新しいショッピングパターンを追跡するいくつかの研究があるが、内容は流動的だ。しかし、フィットネス関連用品や他のアイテムに関しても、実店舗での購入よりeコマースでの購入を好む傾向がはっきりしている。
この傾向がどこまで継続するかを見極めるには、時期尚早である。「従来型店舗は閉鎖している。まだ、営業している店舗は、eコマースの足場を築くために競い合っている」という考えに、アメリカの消費者インサイトおよび市場調査会社のKelton GlobalのパートナーであるAmy Rogoff Dunn氏は同意している。
「eコマースは拡大している。それは、同時に実店舗にとっては、新しい機会でもある。状況がどのような方向へ向かうかを判断するには、これから1年はかかるだろう」と同氏は述べた。
オンライントレーニングクラスの急増
劇的に増加したのは、在宅フィットネス関連用品の売上だ。オンラインおよびデジタルビデオ製品についても同様だった。ライブ、バーチャル、オンデマンドでのエクササイズプログラムの利用は、在宅エクササイズ用器具を購入する消費者向けの成長が見込まれる販路であるといえる。
「2019年の同時期と比較して、今回のロックダウンが行われてから、オンライン予約が2,000%増加している。これは信じられないほどの増え方であり、世界中の人々が健康を維持しようとしている証拠でもある」と、フィットネスビジネスのソフトウェア管理ソリューションであるGymcatchのCEOで創設者Ollie Bailey氏は、eBayのフィットネス商品の売上のリサーチについて言及した。
eBayによると、家庭用トレーニングマシンのオンライン購入は驚異的に増加しており、これは孤立した現象ではないという。トレーニングマシンの売上は、他の国でも同様の増加を示している。
ロックダウン中のフィットネス用品の売上トップ10
2020年の3月から4月の販売数
パンデミック早期のeBayにおけるフィットネス商品売上トップ10
この傾向は、トレーニングやフィットネススタジオが新型コロナウイルスの影響で閉鎖されていた、もしくは閉鎖されている他の市場でも同様だ、とeBayのPRチーム担当者Agustina Perez Derron氏は回答。
「2、3の具体例を挙げると、フランス、イタリア、英国で同様のパターンが見られる」とのこと。
eBayは、将来的にパンデミックが終息しても、消費者がオンラインでの購入を続けることを期待している。しかし、同社はこの購入傾向が永続的だとは考えていないようだ。
「全国のジムが再びオープンすれば、需要はロックダウン前のレベルに戻ると想定している。実際、すでにそうなりつつある」とeBayのチームは回答している。
その他の分析結果
2020年7月14日、ACI Worldwideは、自社の全世界での販売者ベースから収集した販売データをリリースした。レポートによると、運動関連用品は117%の増加。また、2020年6月は前年同月と比較して、全世界でのeコマースの売上が急増したことも分かった。
この増加は、3月に始まった新型コロナウイルスによる制限導入以来、前年比で最大の増加となった。ACIによる世界の加盟店の数億件ものeコマース取引の分析結果には、スポーツ用品、履物の売上高の大幅な増加が含まれていた。
同社によると、アウトドア用品は最も人気のあるカテゴリの一つだったという。個人用防護具やDIYアイテムは、6月も引き続き、オンラインで最も売れた商品だったようだ。
このACIによる売り上げの分析結果は、eBayの「消費者の最大の関心事はスポーツ用品の購入である」との分析を裏付けている。調査では、新型コロナウイルスによる制限導入以降、毎月スポーツウェアとスポーツ用品部門の売上が増加し続けていることがわかっている。
ACI Worldwideのグローバルフラウドプリベンションリスクサービスのバイスプレジデント、Erika Dietrich氏によると「4月にはスポーツウェアとスポーツ用品部門は114%増と飛躍し、5月にはさらに216%と大幅に増加した。6月には多少下落したものの、それでも117%の増加となった」とのこと。
サマーセールへの期待
ACIの売上分析によると、消費者が家庭用スポーツ用品をオンラインで購入するという傾向は落ち着く様子が無いという。
「新型コロナウイルスによる制限緩和されたが、6月の健康およびジム機器の売上は引き続き増加している。特に、規制緩和が夏のホリデーシーズンと重なったため、アウトドア用品が最も人気のカテゴリとなり、6月は10%増加、5月は8%増加となった」とDietrich氏は、ACIの調査結果について語った。
さらに、ACI WorldwideのエグゼクティブバイスプレジデントDebbie Guerra氏は「新型コロナウイルスによる制限が緩和されたにもかかわらず、多くの販売事業者において、前年同時期と比較して、アウトドア用品の購入率が高くなっている」と述べた。
eコマースの全体像から見えるもの
マーケティングリサーチャーによると、「この数か月のジムおよびスポーツ用品のオンライン販売の大幅な増加は、単発の出来事ではない」と言う。これは、eコマース依存への入り口になりつつある。
ACIのDietrich氏によると「新型コロナウイルスのパンデミックにより消費者の行動は変わった。そして、消費者の多くは以前の状態に戻ることは無いと思う」とのこと。
さらに「隔離中の生活に世界中の人々がどう適応しているのかが、いろいろな分野のオンラインショッピングの成長率によってわかる」と言及。アウトドア用品やスポーツなどの分野が増加し、消費者支出に占める割合が大きくなっている。
また、「数多くの消費者は、食料品や他のさまざまなアイテムまで、配送で購入し始めている。コロナ以前は現金に頼っていた消費者が、安全で便利なデジタル決済方法に切り替えているのだ」とDietrich氏は語った。
※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の7/20公開の記事を翻訳・補足したものです。