パンデミック、経済的不確実性、ソーシャルディスタンシング…。なんという騒動の渦中にいるのだろう。
我々はマーケティングリーダーとして、チームを指揮するには、信じられないほど困難な時期である。誰もが、現状をナビゲートするのに苦労しているだろう。しかし我々が今、あらゆる感情や家族について、ペットの犬のことからトイレットペーパー不足、そして電話会議でいっぱいに埋め尽くされたカレンダーをどう処理するかの方法を考えている間に、収益チームはパイプライン(見込み客を顧客に転換する段階的なプロセス)の構築と、予測どおりの成長の実現を推し進めなければならない。そして、それは今までと同じやり方では実現することはできない。
どのように潜在的な顧客と関わるべきだろうか?
多くの場合、チームにアクションプランを提供するということには慣れている。しかし、現在の状況には困惑している。つまり、このような時期に、自分のチームをどのような方向に導くべきだろうか?ということである。状況が日々変化している中で、どのように見込み客との関わりを維持するべきなのだろうか?「最善を尽くせ」とか「正しい判断をしろ」とか「共感しろ」と言えばいいというほど、単純なことでない。
もちろん、それら全ては、チームがやるべき有意義なことである。しかし我々は、現在の異常な状況をナビゲートするためには、真の戦略と、それをバックアップする公式(私は、正しい公式を非常に好んでいる)を持っていなければならない。この戦略は、行動上のインサイトに支えられた施策を伴わなければならず、次に何をするかは、バイヤーが実際に今何をしているのか、そして、自社ソリューションに対して、購買意欲が高いのは誰なのかという知識に裏付けられていなければならないものである。
自社のターゲティングと施策が、既にこれらの行動上のインサイトに基づいているという点で幸運にもマッチしていれば、不確実性という海の中で、インサイトは、見込み客への道を照らす灯台なる。
そのような場合、購買ジャーニー上の見込み客に対する優れたインサイトを獲得することに注力した方が良い。それは、現在の状況を評価する際に活用する必要があり、少なくとも100通りの方法ですべてを分析してもいいだろう。そして最終的に、「なるほどと思う瞬間」が訪れ、バイヤーに関するインサイトは、収益チームにとって、かつてないほどミッションクリティカルなものだと気がつくかもしれない。
価値あるソリューションを持っているのであれば、潜在的なバイヤーとつながりを維持し続ける必要がある。しかし、製品に価値があると信じるだけでは十分ではない。セールスチームやマーケティングチームは、自社のアウトリーチやメッセージに、新たな自信を持つ必要がある。以前に使用していた標準的なメッセージを発信すれば、今日では、ほぼ間違いなくブラックリスト載るだろう。最近では、一通のメールを間違えれば、LinkedInにて「鈍感で無神経だ」と長文の投稿で会社を罵倒される時代である。
業界のイベントや展示会が、あちこちでキャンセルされているのも事実である。かつては、確実なリードジェネレーターのように見えたものが、当分の間は消滅してしまうわけだ。しかし、イベントが開催されないからといって、パイプライン目標を下げられるわけではない。依然として、予測どおりの収益成長を実現する責任があるのである。イベントマーケティングの資金を、他のマーケティング機能に費やすべきだろうか?このような状況で、何が一番効果的なのか?他の機能に費やすことができるイベント予算さえ、戻ってくることはあるのだろうか?
業界イベントやトレードショーがなくなり、日々業務が変化している今、どのようにしてバイヤーとつながり、今の状況に全くの無関心を装うことなく収益を生み出し続けることができるだろうか?
活用すべき「3つのI公式」
世界が、パンデミック渦の生活を経験し始めたばかりの3月に、私たちはバーチャルの旅をしながら、CMOとの朝食シリーズを開催した。そしてセッションでは、200人以上のCMOに、現在マーケティング予算をどこに集中させているか?という同じ質問をした。
重視している分野のトップ3は以下の通り(上位順)。
- アカウント・ベースド・マーケティング(ABM/企業が優良な顧客に対して、効果的にアプローチする手法)
- エグゼクティブ・ソート・リーダーシップ(特定の課題やテーマに対して、解決策やアイデアを掲げ、主導者となること)
- セールス・イネーブルメント(営業組織の強化、改善のための取り組み)
これは今、何を意味しているのか?ABM戦術、ソート・リーダーシップ・コンテンツ、セールスチームのアウトリーチは、どこをターゲットにすべきなのか?潜在的なバイヤーに見捨てられるのを避けるために、急に方向転換をしなければならないのだろうか?
ここで「3つのI公式」の出番がくる。現在の状況では、バイヤーに関するインサイトが非常に重要であることは既に述べたが、ターゲットとなるバイヤーと価値ある会話を生み出すための鍵となるインサイトには、具体的に3つのタイプがある。
第1の「I」:Intent (インテント:意図)
バイヤーインサイトに関しては、何よりもまず、現在、誰が購入を検討しているのかを見極めることができなければならない。あなたの業界のビジネスが停止していないとすれば、自社が提供するものと同様のソリューションを積極的に求めている企業は、依然として存在するということだ。課題は、ほとんどのバイヤーが購買ジャーニーの後半まで匿名のままでいることである。そこで、インテントデータの出番となる。
インテントデータによって、ターゲットアカウントが何に関心を持っているかを可視化することができる。それは、非常に重要な質問に答えてくれる。「このアカウントは何をしようと”意図”しているのか」。アカウントのインテントは、どの購買ペルソナが貴社のウェブサイトを訪問したり、特定のキャンペーンに参加したりしているかといったファーストパーティデータと、B2Bウェブサイトでリサーチしているトピックなどのサードパーティデータの組み合わせから抽出される。
そして、以下を知ることで、収益を生み出す境地に到達することができる。
- ターゲットオーディエンスが調査している正確なトピック
- ターゲットアカウントが訪問しているWebサイトページ
- アカウントのどの購買チームのペルソナが最も関与しているか
- どの地域の顧客が最もアクティブであるか
これらの情報を有していれば、マーケティングチームは、オーディエンスにとって最も重要なトピックをよりよく理解することが可能となる。一方で営業チームは、誰が、また、何が自社の顧客アカウントに最も関連性高いのかを把握し、適切なバイヤーとの価値の高い会話の場を提供するリーチアウトを実行することができる。一番の利点は何だろうか?それは、これらのインサイトがリアルタイムで提供される点である。なぜなら、毎日変化があるからである。
第2の「I」:In-Market(イン・マーケット/購買意欲の高いこと)
インバウンドのボリュームが減少しているかもしれないが、イン・マーケットのアカウントはまだ存在している。それらのアカウントを発掘し、価値ある関係を築くことが自社チームの仕事である。インテントデータを活用することによって、チームが取り組むべきアカウントを理解するための道筋が示される。予測分析により、アウトリーチを完璧なタイミングで実行しつつ、最適なアカウントとコンタクト先にリソースを集中させることが可能となる。
予測分析によって、バイヤーの活動パターンを見つけることができ、あるアカウントを自社の理想的顧客プロファイル(ICP)と比較してどう評価できるか、どのコンタクトに関与することが最も重要であるか、彼らが購入ジャーニーのどの段階にいるのかをよりよく理解することができる。
予測分析ソリューションは、パターンを見つけるためにさまざまなシグナルを使用する。ファーストパーティ・インテントとサードパーティ・インテントは、予測を加速するための重要なデータソースである。しかし、自社で利用する予測分析ソリューションは、営業およびマーケティング戦術に対する現時点の見込み客のエンゲージメントレベル、さらに、それが過去のオポチュニティ(機会)データとどのように比較されるかという点も考慮するものでなければならない。
あるアカウントが、自社が販売するソリューションへの購買意欲が高いと予測される場合には、自社チームがリーチアウトすべき極めて重要なチャンスあるといえる。見込み客とコンタクトをとる場合は、早い者勝ちである。ベストなタイミングのアウトリーチでアカウントにコンタクトすれば、バイヤーが最初に話をするベンダーになることができるのだ。
最初にコンタクトを取ることで、競合他社よりかなり先を行くことができ、他社がターゲットを特定する前に、自社の見込み客との強固な関係を構築することが可能になる。
第3の「I」:Industry(業界)
バイヤーの業界を理解することは、現在の状況では、特に重要である。ある特定のアカウントの業界は、COVID-19によってポジティブな影響を受けているのか。あるいはネガティブな影響を受けているのか。その状況は、業界全体やビジネスモデルにどのような影響を与えているのか。業界についてのインサイトを持つことで、その時の状況がどのようなものであれ、アカウントが、その状況にどのように適応しているかを知ることができるのだ。
ひとまず、私たちが現在経験している世界的な健康上の危機を例に挙げてみよう。COVID-19の影響を、地震に例えてみる。ある産業はどのくらい影響を受けているのか?旅行業界は、震源地のちょうど真上に位置することになる。しかし、日常的に食するコーンフレークの生産者は、わずかな揺れを感じるだけかもしれない。このような影響の大きさと、異なる業界がどのように状況に適応できているかによって、ターゲティングの対象を決定しなければならない。
また、現在、自社のCRM(顧客関係管理)に接続されているアカウント以外を観察することも重要である。ある特定の状況でどれだけ変化するかによっては、以前にターゲットとしていたアカウントが、今は自社との関連性がない可能性もある。パイプラインを適切に埋めたいのであれば、自社CRMデータ以外のバイヤーのパターンをよく認識できるようにしておく必要がある。
ミッションクリティカルなバイヤーインサイトの解明
「イン・マーケット」、「インテント」、「業界インサイト」(5回早口で言ってみよう)を同時に用いることにより、どのような状況でも、効果的なマーケティングを行い、ターゲットアカウントに商品を販売するために必要なすべての情報が提供される。
紹介した「3つのI公式」は、CMOにとっての最重要項目3つをサポートしている。
- ABMマシンを整備することは、アカウントレベルで、バイイングチーム全体のインサイトを把握することができることを意味する。購買意欲が高いアカウントが把握でき、そのアカウントの特定のビジネスニーズに付加価値を提供することができれば、購買プロセスを簡単に誘導することができる。
- マーケティングチームは、営業チームがアウトリーチを行う前に、ソート・リーダーシップ・コンテンツを活用して、ターゲットの購買ペルソナに好印象を持たせることができる。適切なバイヤーインサイトがあれば、マーケティング担当者は、見込み客の切実な疑問にすべて答えるだけでなく、見込み客が自社のソリューションについてより深く学ぶように誘導するコンテンツを配信することが確実に可能となる。
- 営業チームの強化とは、アカウントをファネルの下位に進ませるために必要なインサイトを営業チームに提供することを意味する。「3つのI公式」を活用したセールス ・イネーブルメント・ソリューションによって、営業チームに、購買チーム全体に関わり、購買に至るまでのジャーニーを完了させるために必要なアカウントレベルのデータを提供することができる。
どんなに好調な時期であっても、見込み客との有意義で価値ある会話を生み出すためには、3つの「I」が不可欠である。収益を生み出す機能として、自社チームの全員が常に、見込み客が何を求めているのか、どのように自社のアウトリーチをターゲティングし、正しいメッセージを発信すべきかを理解している必要がある。
困難な時には、「3つのI公式」を使うことで、失敗を限定的にし、限られたリソースを有効に活用することができるだろう。
とにかく、見込み客との有意義な関係を構築し、収益を上げるための追求を、さらに推し進めよう。「3つのI公式」は、購買意欲の高いアカウントや彼らのインテント、そして、アカウントの業界におけるインサイトを提供し、自社パイプラインを満たし、厳しい時代を新たな自信を持って乗り切るために役立つものなのである。
※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の5/28公開の記事を翻訳・補足したものです。