ブランドストーリーの重要性

顧客は、サスティナブルな事業に取り組むアウトドアブランドPatagonia社に共感している。また、衣料品ブランドEverlane社と米国の日刊新聞紙The New York Times社は、消費者に共有するブランドストーリーが行動を起こすための呼びかけでなければならないことを、我々に思い起こさせてくれる。

都会のミレニアル世代(1980年代はじめから1990年代半ばに生まれ、10代からデジタル環境に馴染んだ世代)、そして自称”自然オタク”として、我々は自分達の考えや訪れた場所、重要と考えることを反映してくれるようなブランドを探し求めている。

そしてブランドも、そのことを理解し始めている。特に環境責任に関しては、ブランド各社が注目していることだ。世界中で親しまれている食品ブランドNature Valley社のシリアルバーから、自然派おむつや洗剤等で知られるSeventh Generation社のクリーニング製品まで、企業は我々ミレニアル世代の「環境破壊をせずに継続する(持続可能な)企業活動」という要求に応え始めている。

しかし、学者や批評家たちが指摘しているが、包装にリサイクルマークを付けることよりも他に、持続可能なブランドとなりうる方法がある。企業やその製品が実際よりも環境に配慮しているという誤った認識を与える可能性のある「グリーンウォッシング」ではない、ある2つのブランドの非常に異なるアプローチに注目した 。

 

Everlane社のブランディング取り組み

2019年4月、「徹底された透明性」というアプローチで知られる衣料品ブランドEverlane社は、The New York Times社と提携し、事実に基づく気候報告に関するマイクロサイトを立ち上げた。このサイトには、New York Timesのレポートとリンクされた一連の簡単な気候に関する話題が掲載されている。そして、読者にNew York TimesブランドのEverlaneスウェットシャツを購入するよう促している。スウェットシャツから得た収益は、公立学校でのNew York Times購読をサポートするために使われるという。

このアクティベーションにより、The New York Times社とEverlane社は大きな成功を収めた。しかし彼らはまた、いくつかの重要な部分を見逃してもいたともいえる。

このサイトでは、The New York Times社の象徴的な「真実」キャンペーンと、率直で積極的なEverlane社の言葉を、シームレスに結びつけることで、2つのブランドの主張のバランスを取っている。マイクロサイトは、倫理的なブランド活動のために最低限やるべきことを語っている。これは予想外のコラボレーションだったが、双方のブランドにとっては意味のあるコラボレーションだ。The New York Timesの長期にわたる事実を根拠とする報告、そして、Everlaneは持続可能で倫理的な生産に焦点を当てている。

マイクロサイトは、そのサイトを訪れる消費者にとって、正義に感じるものだ。メッセージは、Everlane社の教養のある都会の買い物客向けに、コーヒーや感謝祭のディナーの話題を提供している。スウェットシャツは、持続可能なヴァーチュー・シグナリング(自分は正しい概念をもっていると主張すること)のためのユニフォームだ。そして、それはすべて重要なのだ。消費者にとって、参加すべき説得力のある理由がなければ、活動は影響力を持たない。

しかし、これには矛盾が存在しているようだ。ページの上部に回転表示されているキャッチフレーズは、次のように述べている。「真実。知ることが、我々全員に影響を与える。どんな無駄な消費活動しているのか、何を購入しているのか。」 しかし、ページの下部には50ドルのスウェットシャツを買うためのリンクがあるのだ。

突然、メッセージが白っぽくなる。結局のところ、こうした不必要な消費は問題の一部といえるのではないだろうか。

そのサイトが我々に指摘するように、「真実が行動を促す」のであれば、Everlane社とThe New York Times社は、読者に彼らが主張する理念をさらに追究することを望んでいるのか?答えは簡単である。そうではない。

 

Patagonia社のブランディング取り組み

それと比較し、次はPatagonia社について考えてみたい。

正真正銘、Patagoniaは環境管理の”ポスターチャイルド”だ。持続可能性はPatagoniaの目的であり、約束、そして製品の核心といえる。彼らの目的である「我々は地球を救うために事業を展開している」という声明は、持続可能性と優れた事業への取り組みをまとめて示すものだ。

彼らのマーケティングは、ブランドの使命を明確に実現しつつ、ブランドとつながる新しい方法を人々に提供することで信頼性を約束する。注目すべきは、Patagonia社が過剰な製品購入を望んでいないことだ。同社はむしろ、顧客が商品を再利用し、再販し、それを共有することを望んでいる。「着用済み」の下取りを受け入れ、店舗で使用済みの製品を修理し、最終的には販売する製品の寿命を延ばすことで、サステナビリティへの取り組みという強力なメッセージを送るPatagonia。同社の古典的な“Don’t Buy This Jacket”キャンペーンは、このメッセージを簡潔に示すものだった。

そして彼らが販売している製品は、持続可能だが(リサイクルされ、耐久性があり、効率的に生産されている)、同時に流行のパフジャケットや企業ユニフォームよりも大きな意味を持っている。誰でも環境活動グループに参加し活動することを可能にするPatagonia Action Worksプラットフォームを通じて、目的に参加するための具体的な方法を顧客に提供することにより、消費者が住んでいる場所を問わず、アウトドアの保護を約束するライフスタイル、およびそのコミュニティの一員となる機会を生み出しているのだ。経験を通じた行動喚起活動は、購買だけでなく、誓約書署名、イベント開催、および請願署名に重点を置いている。

行動に言動を結びつけることは、Patagonia社が我々の惑星「地球」を支持しているという立場を明確にしている。あなたは冒険家であるかどうかに関わらず、そのアプローチに共鳴する。なぜなら、Patagoniaの活動が真実であるからだ。

 

メッセージングとエクスペリエンスのシームレスな連携

メッセージングとエクスペリエンスがシームレスに連携することで、ブランドは顧客ロイヤルティを獲得することができる。どちらかが欠如したものは、空約束、またはチャンスを逃すのいずれかだ。Everlane社とThe New York Times社の事例は、行動を呼びかけるだけでは不十分であることを示した。その行動により、自分が共有している物語を伝えていかなければならないのだ。

二面的なアプローチにより、Patagonia社は有言実行している。我々は、顧客と共鳴する持続可能性への彼らの持続的なコミットメントへ、拍手を送るべきなのである。

 

※当記事は英国メディア「Marketing Land」の5/10公開の記事を翻訳・補足したものです。