50社以上の企業と団体が、イギリス政府の人口知能(AI)産業への約10億ポンドにのぼる投資への参加を約束した。

イギリスをAI産業の最前線に押し上げることを目標としたこの国と産業界の大型投資の取り決めは、AI研究に新たに割り当てられる政府からの資金提供3億ポンド以上を含む。

デジタル・文化・メディア・スポーツ大臣のMatt Hancock氏は「イギリスは、先端技術開発の先頭に立ち、限界を押し上げ、人々の生活をより良くするためにイノベーションを活用しなければならない」と語った。「イギリスをデジタルビジネスの起業と成長に世界中で最も適した場所にするという計画の中心にあるのがこのAI産業。イギリスには大きな実績があり、例えば人工知能のDeepMindやAndroidスマートフォン向けキーボードアプリSwiftKey、翻訳ソフトウェアのBabylonなどの”AI界の世界的大企業”を誕生させた地である。しかし、できることはもっとたくさんある」。

「AI技術とデータ駆動型技術を強化することによって、未来を形成していく上でのイギリスの地位を確かなものにできるだろう」と続けた。

今回のイギリスAI産業への投資には、日本のベンチャーキャピタル会社Global Brainも参加。ディープテック(技術的なイノベーションもしくは科学的発見を礎とするテクノロジー、AIやロボット工学、バイオテクノロジーなどに関するもの)スタートアップ企業に3,500万ポンドを投資し、イギリスに最初の欧州本部を設立した。

ケンブリッジ大学は、1,000万ポンドのAIスーパーコンピューターを設置し、そのインフラストラクチャーを企業が利用できるようにする。

カナダのベンチャーキャピタル会社Chrysalixは、AIとロボット工学に1億1,000万ポンドを上限として投資し、こちらも欧州本部を開設。

イギリスの研究機関Alan Turing Instituteとイギリスのエンジン製造会社Rolls-Royceは、データ科学やAI、データ分析を研究するプロジェクトで協力する予定だ。

 

この投資に基づく出資金は、8,000人のコンピューターサイエンス専門教師や、2025年までの政府出資AI博士号取得者1,000人の育成、グローバルなTuring Fellowship(データ科学と人工知能の国立研究所)プログラムの開発に充てられる。さらに会計事務所Sageは、イギリス中の150人の若者を対象にAIの試験的なプログラムを立ち上げるとのこと。

イギリス政府は、法律関連や保険を含むイギリスサービス産業に2,000万ポンドを提供し、AIが実際の事業運営にどのように利用できるのかを明らかにする予定である。さらに政府構想「Tech City UK(ロンドンのテックシティ構想)」を「Tech Nation」と改称。2,100万ポンドを費やし、イギリス全体に技術拠点を創出することで企業のAI採用をサポートする。これに加えて、すべてのAI開発が高い倫理基準を遵守できるよう、政府は900万ポンドをかけてデータ倫理・イノベーションセンターを設立する予定だ。

「人工知能によって、新しく、効率的で、尚且つアクセスしやすい、人々の生活や働き方を変える製品とサービスを開発する無限の機会が広がるだろう」と、ビジネス・エネルギー・産業戦略大臣のGreg Clark氏。「今回の産業界との新たな提携は、イギリスが人工知能技術の開発と商業利用における原動力となるための適切な投資やインフラストラクチャー、高度に熟練した労働力の確保を確実なものにするだろう」と語る。

「しかし、すべてのイノベーションと同様に、AIセクター全体を厳しい監視下に追いやり、国民の信頼を損なうという悪用の可能性もある。全員の利益となるAIアプリケーションデータの倫理的な使用を確実にするため、我々は世界をリードする新体制を確立する」と続けた。

 

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の4/26公開の記事を翻訳・補足したものです。