米デジタル市場分析企業comScoreの新しい調査で、アメリカの消費者にとってモバイルアプリの利用傾向は習慣化されており、より固定化される傾向が強くなっていることがわかった。

スマートフォンやモバイル機器で動画や音楽、SNSに時間を費やすユーザーがますます増えている。しかし多くの場合、個人の中で(どのアプリを使うか)固定されており、新しいアプリを試すことには消極的であると調査結果は示す。

comScoreのマーケティングと分析担当上席副社長Andrew Lipsman氏は、「YouTubeで動画を観たり、SpotifyやPandoraなどのアプリで音楽を聴くなど、モバイルアプリユーザーの大半がFacebook、Snapchat、Twitter、Instagramのようなソーシャルメディア系アプリを利用している」と2017年8月24日に発表された2017年、米国モバイルアプリレポートに記している。また同氏は、「新しいカテゴリーのアプリをダウンロードするユーザーが少ないため、大きく飛躍するのはさらに難しくなっている」とも。さらに「厳しい市場であり、真に新しく、斬新なものを考え出さなければならない」と続けた。

 

固定化された習慣

このレポートによると、スマートフォンユーザーの大半は新しいアプリを1か月当たり1本もダウンロードしていないという。新しいアプリは、アプリストアや口コミ、広告など複数のチャネルにて見つけられている。

ミレニアル世代は新しいアプリをダウンロードするが、年配のユーザーはアプリの追加にあまり興味がない。すべての年齢層においてアプリを削除する主な理由は、そのアプリが使用できなくなったためである。

アプリユーザーはスマートフォンの上位10個のアプリの利用時間が、そのデバイスを使用した時間の少なくとも96%を占め、1位のアプリに半分の時間を費やす。

FacebookとGoogle関連のアプリが上位6位までを独占。1位から順にFacebook、Google傘下のYouTube、テキスト通信および音声通信アプリのFacebook Messenger、Google Search、Google Maps、Instagramと続く。

 

開発の傾向

モバイルアプリ市場は依然として大きく、収益の観点では引き続き成長している。ゲーム市場調査およびコンサルティング会社New Zoo調査によると、2017年中に世界中の消費者はゲームやモバイルアプリに564億ドルを費やすことになり、その82%はゲームアプリからのものになるだろうと言われている。2020年までに、その収益は850億ドルに増加、そのうち76%がゲームのアプリによるものになるだろうとのこと。

しかし米のIT調査会社IDC調査によると、特定のスマートフォンにインストールされている新しいアプリの数は着実に減少している。

同社のモバイルおよび接続プラットフォーム担当副社長John Jackson氏は「スマートフォンはすべての市場で使用されるようになり、消費者は欲しいものや必要なものをもう長い間手に入れることができている」と語る。彼はさらに「新しい発見は難しい。変化はあるものの、これからもずっと難しいだろう」と続けた。

GoogleのAndroid Instant Apps、ウェブサイトから直接アクセスできるディープリンク、Android IntentsやiOS extensionsなどのアプリからアプリをつなぐコンセプトなどいくつかのイノベーションは、アプリ開発の課題を緩和することができる。

Andoroid Instant Appsはユーザーが自分のデバイスにアプリを完全にダウンロードすることなく新しいアプリを利用できるツールだ。

開発者にとってより重要なトレンドは、FacebookやGoogleのような大きなSNSや検索会社が新しいアプリケーションを多数取得し、それらを自分たちのエコシステムに組み込むことかもしれない。例えばFacebook内に自分たちの記事を配信できるFacebook Instant Articlesや、もっと最近では新しい動画プラットフォームのFacebook Watchなどがある。

米のIT調査会社Pund-ITの首席アナリスト、Charles King氏は、「新しいアプリがヒットすると、新しく面白いビジネスやプロセスに結びつく傾向がある」と語る。さらに同氏は「(相乗りマッチングサービスの)ライドシェアはこの傾向の中の上位に位置するが、限定的なサービスは下位に位置する」と続けた。興味深いことに、配車アプリ会社Uberの社内問題は新たなライドシェアアプリの競争相手に門戸を開いた。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の8/31公開の記事を翻訳・補足したものです。