オンラインショッピングは、少し人間味にかけると思うことがある。スクリーンを見ながらバーチャルなカートに商品を入れるだけ、というのは、豊かな(ショッピング)体験とは言えない。

多くのオンラインユーザーは実店舗の場合と同じように、店舗に立ち寄り、商品をみて、店員と話し、そして最終的に購入するかどうか決める、といったショッピング体験を強く望んでいるのだ。

そうした中、少なくとも昔からある商店と同じ程度にインタラクティブなオンラインショッピング体験を提供すべく、eコマースをパーソナライズ化するための技術が登場している。

ウェブサイトのA/Bテストや多変量テストなどのサービスを提供するSiteSpect社の取締役であるEd Burek氏は、「すべてのオンライン小売業者にとって、パーソナライズ化された顧客体験の提供は、最優先事項であるべきだ。デジタルプロパティ(ウェブサイトやアプリなどのデジタル資産)を活用し、個々の顧客のニーズに応えることができれば、ブランドは顧客をより満足させるだけでなく、売上をさらに伸ばすことができる」と述べた。

 

オンライン買い物客が切望する“パーソナライズ化されたショッピング体験”を提供するための5つの基本的な方法を見てみよう。

 

顧客を知ること

顧客を理解することはとても基本的なことであるが、オンラインショッピング体験を設計する際には忘れられてしまうことも。全てのデジタル手法を活用し、潜在的顧客の欲求と行動を追跡、調査、解釈することが必要だ。

「企業はオンライン顧客を徹底的に調査する必要がある」と、Burek氏は話す。「顧客調査によって、各購買層が企業の収益に与える影響を把握できるのと同様に、オンライン顧客層ごとに、行動や背景の特性がどのように異なるかも理解することができる。そして企業は、機械学習技術を活用することで、効率的に顧客データを取得し、実態を把握できる。更に傾向を分析し、顧客体験戦略がビジネスに実際にもたらす効果を理解することもできるのだ」と解説した。

 

実験を行うこと

実際に試さなければ、顧客に対してどのような手法や時期が有効であるかはわからない。多様なアプローチを試しながら、顧客が望むショッピング体験を提供するために最も効果的な手法を探る必要がある。

Burek氏は「顧客が誰であるか、また、注目すべき顧客の基本的背景をより良く理解したら、企業が次にやるべきことはターゲットを絞った新手法のテストの実施だ。具体的に言うと、企業は顧客の反応を把握するために、ユーザー層全体を対象とした様々な手法の“テスト”を実施するべきだ。そして、最も重要な点は、テストした手法がコンバージョン(商品の購入)を促進しているかどうかを観察することだ」と提案した。

また、企業は顧客の変化に伴いパーソナライズ化戦略も変更を迫られるので、「フレキシブルであるべきだ」と同氏は言う。

 

オムニチャネルの必要性

オンラインにおいてパーソナライズ化とは、常に顧客に対応できるようにし、顧客が利用しているテクノロジーを用いてサービスを提供するということだ。常に顧客のそばに存在し、利用が可能で、顧客の要望に対応できる体制をとるためには、ライブチャット、ソーシャルメディア、チャットボット(人工知能を活用した自動会話プログラム)など、さまざまなテクノロジーの活用を検討する必要がある。

「従来のCRM(顧客関係管理)システムは、ライブチャットに始まり、ソーシャルメディア経由のサポート、チャットボットのような人工知能といったあらゆるツールを提供する知的オムニチャンネルエンゲージメントソリューションによって補完され、置き換えられている」と、リモートデスクトップアクセスツールを提供するLogMeIn社の製品マーケティング、カスタマーエンゲージメント担当部長であるDave Campbell氏は語った。

「各ツールは、eコマースやあらゆる業界においても、それぞれ単独で有効な手法である。重要なのは、顧客が各ツールを常に利用できる環境を整えることだ」と同氏は補足。

そして、オムニチャネルアプローチは、買い物客が直面するかもしれない問題を解決する手段としても有効である。

「チャネルが利用可能であることだけではなく、それが実際に問題を解決できることが重要だ。各チャネルの有効性は、そのチャネル経由で顧客が必要なものを迅速に手に入れられるかどうかにかかっている」と、Campbell氏は述べている。

 

体験のカスタマイズ

おすすめ商品をそれぞれのユーザー向けに編集する機能は、eコマースのパーソナライズ化戦略の重要な要素になり得る。実店舗の顧客に特定の商品を試すことを提案する店員の役割がeコマースで言う“おすすめ機能”であり、これが有効に機能すれば、ショッピング体験を真にパーソナライズ化することができる。

「データ分析は、小売業者が所有するデジタルプロパティに取り込むことが可能な最も重要な技術の1つである」と、SiteSpectのBurek氏。

「データ分析テクノロジーをトラフィックの流れの中に戦略的に配置することにより、オンライン小売業者は、買い物客がどのような人物か、どのようにウェブサイト、モバイルアプリ、その他のデジタルプロパティとやり取りするのかをリアルタイムで把握できるようになる」と、同氏は指摘する。

「データ分析により企業は、顧客に対する実用的な見識を得ることができ、カスタマイズされた気の利いたおすすめ商品情報を提供し、顧客体験をパーソナライズ化することが可能だ。顧客の好みを理解しニーズを予測することにより、売上を伸ばし、顧客ロイヤルティーを高めることができる」と、Burek氏は加える。

 

顧客との対話

近年チャットボットは、知的能力や予測能力の向上により、より有効なツールとなっている。多くのeコマース企業は、チャボットの活用により売上が増加し、買い物客に企業とのつながりを与えることが可能であると実感している。

「チャットボットは、ワンストップのオンラインショッピング体験を望む社会的影響力を持つ現在の顧客にとって、魅力的な選択肢」と、デジタルコンサルティング会社The Social Clientの統括マネージャーGordon White氏。

「Facebook Messengerのようなソーシャルメディアプラットフォームを利用したチャットボットによって、ユーザーはFacebookアプリを離れることなく商品をブラウズし、代金を払い、友人とお気に入り商品や購入商品情報を共有することができる」と語った。

ライブチャットも、ショッピング体験のパーソナライズ化の重要な要素となり得る。

「人間のオペレーターとのライブチャットは、オンラインショッピング中にさらにサポートを必要とする顧客や、より複雑な質問をしたい顧客にとって最適な選択肢だ」と、White氏は述べた。

「人工知能によって、チャットボットやメッセージングアプリなどのツールは、かつてないほど洗練され、ダイナミックになっていることは確か。しかし“共感的で本当に人間味のある対応”という部分にはまだ改善の余地があり、人間のオペレーターが介入する必要がある」と指摘する。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の9/5公開の記事を翻訳・補足したものです。