間もなく2017年。欧州の大手EC企業4社のCEOは、年の瀬に当たり来年のEC業界における新たな見解を話した。
サプライチェーンに注目
スイスのカーサービスポータル会社MeksterのCEO、Marcus Fredricsson氏によると、ドロップシップ(dropshipping、商品在庫を持たず、注文を受けた際にメーカーや卸売業者へ直接オーダーして販売するという取引形態)は消えていくとの事。これは顧客にとって輸送の便宜がより重要になっている現れ。「商品を一か所から発送せず、商品を直接卸売業者から別々に送らせるようなオンライン小売業者は、顧客から信頼されない傾向にある。」と言う。
Marcus Fredricsson氏は小規模のオンライン小売業に関し、顧客サービスなどを部分的に捨てる覚悟で、物流管理の方をより重要視する必要があると考える。それにより、GoogleやAmazonのように世界的な市場で自分たちの商品をうまく提供することが可能になるからだ。「顧客満足のためには、サプライチェーンロジスティクス(供給網物流管理)の大規模なコントロールが必要になる。」と加える。
更にヴァーチャルリアリティ(VR)にも注目。「まだこの技術を活用しきれていないEコマース業界は、来年より大々的に取り上げていくだろう。」と話す。
中間業者の排除
スウェーデンの最大手オンライン自転車販売店CykelkraftのChristoffer Tyrefors氏は、オンライン小売業者は、自分たちだけでできることはもっとあると提唱。配達業者にさえ支払いをすれば、後は自分たちで全てを賄えるとの考えだ。「Eコマースの事業者たちは自分たちの主要事業の基本的利益率を見出すべきだ。そのために仲介人への支払いは再度検討する意義がある。」と言う。
Googleに「食われない」ために
Tyrefors氏はまた、Googleの影響力の強大化、検索エンジンへのかつてないほどの依存に警鐘を鳴らす。「EC業界は検索に依存しない方法必死で探している。これにはブランドの構築が有効」とTyrefors氏。生産量が増えるに従い1単位あたりのコストが下がり利益率が高まるというスケールメリット(規模の経済性)の優位性を考えてのことだ。世界的な巨大オンライン市場におけるGoogleの支配力に言及しながらも、「食うか食われるか」のこの業界では「生産量」が重要になるだろうと考察する。
パフォーマンスと売上の2017年の更なる結びつき
プラットフォームのモニタリング会社Apica SystemのCEO、Sven Hammer氏は、企業間取引(BtoB)が、企業対消費者間取引(BtoC)化するだろうと予測。BtoC企業のビジネスモデルをBtoBに応用するからだ。
次に、残念ながら、DDos(Distributed Denial of Service attack、分散型サービス妨害攻撃)は引き続きEC企業のウェブサイトを標的にし続けるだろうと言う。
最後に彼は、アナリティクス(analytics、アクセス解析)にフォーカス。「パフォーマンスの高いプラットフォームがより高い売上を牽引する。ページの読込みが0.1秒早くなると売上が1%増える。組織が利益性向上のためにウェブ、クラウド、アプリのパフォーマンスにKPIs(重要業績評価指標)を設定しているので、パフォーマンスと売上はより連動してくるだろう。」と話す。
携帯電話アプリはECに更なる影響を与える
4人目のCEOはEコマース企業Nordic EtailのTorkel Hallander氏。ECサイトが“出来るセールスマン”のように振舞えば、顧客にはよりよい購買経験が残り、世界中に広がる。一方で小売業者もコンバージョン率が上げることが出来、更に高い利益が出せる。この「SMR(セールスマンのレプリカ)」という言葉は、新たな業界用語になるだろうと言う。
Hallander氏はまた、モバイルエンゲージメントがEコマース業界により大きな影響を与えていくと言う。「モバイルショッピングの機能は、商品の選択、ディバイス間の移動、支払いの簡易化などが急速に進んでいる。しかし、より重要なのは、自分の携帯でそれをすべて出来るということに人々が気づいたということ。つまり、一度自分の携帯で商品を購入すると、全てを携帯で済ませるようになるということだ。」
最後に、Hallander氏はオンラインストアやデジタルマーケティングが更にターゲットを絞っていくと予測。顧客満足とその結果の最大の売上の為に、オンライン小売業者はウェブサイトの見栄えや商品を、より顧客個人の趣向や行動、購買力に合わせてカスタマイズするようになると予測している。
※当記事は欧州地域向けメディア「Ecommerce News」の12/2公開の記事を翻訳・補足したものです。