ソーシャルからコマースへの系譜

~PinterestからSumally、FANCY、そしてOrigamiへ~

 

今や生活にしっかり浸透してきているeコマースとソーシャルメディア。

このインターネットの発展の中で、別々の道を歩んできた2つの大きな潮流が、ここ数年で大きく歩み寄ろうとしています。

今回はこの流れを、ソーシャルメディアからeコマースへの系譜と題し、PinterestSumallyFANCYOrigamiの4サイトを取り上げ、各サイトがどのような特徴を持ち、どのようにソーシャルメディアからコマースへ歩を進めていっているのかを見ていきます。

 

ソーシャルからコマースへの系譜 PinterestからSumally、FANCY、そしてOrigamiへ

ソーシャルからコマースへの系譜

 

前編ではまずPinterest、そしてSumallyについて紹介していきます。

 

 

そもそもこれらのサイトは何のジャンルと言えるのか

 

この4サイトは、ソーシャルコマースと呼ばれたり、見方を変えるとキュレーションと呼ばれるジャンルのサービスとなります。

ソーシャルコマースとは、オンライン上の消費者同士のコミニュケーションをダイレクトに購買につなげるというもの。

コマース機能を持ったSNSであり、SNS機能を持ったコマースサイトとも言えます。

これまでのSNSはただマーケティングをする場で、そこからECサイトやアプリに誘導して購買に結びつけるという流れが主流となっていました。

しかし、ソーシャルコマースは特定の誰かがリコメンドした商品が一目で分かり、それをすぐにサイト内で購入できるという画期的なサービスで、従来のECサイトと異なり、信頼している人が薦めたことによって購入につながる仕組みは、新しい形のコマースといえます。

 

また、一方でキュレーションとは、Webサイト上に流れているありとあらゆる情報をとりまとめるサービスの総称です。

これらのサイトには、その特性が色濃くあり、それぞれのサービスの特性や趣味・嗜好に応じたまとめ方を提供する、新しいジャンルのサービスといえます。

 

 

 

Pinterest (ピンタレスト) - コマースへの流れを作ったソーシャル

 

まず最初に紹介するのは、2010年にアメリカで誕生した画像に特化したSNS、Pinterest(ピンタレスト)です。

 

Pinterest (ピンタレスト)のメイン画面

Pinterest (ピンタレスト)のメイン画面

 

本国では、ECサイトへのユーザ誘導率がTwitterと並ぶほど影響力のあるサービスだと言われているPinterest。

2012年8月に招待制が廃止され、より多くのユーザーが気軽に始められるようになりました。

現在は英語版しか用意されていませんが、使い方はとっても簡単。

ユーザーはネット上で見つけたお気に入りの写真を自分のページのボードに貼り付けたり(pin=ピン)、他のユーザーがPinterest内で投稿した写真を自分のボードに貼り付けて(Repin=リピン)、自分の好みに合った写真や動画をテーマごとにどんどん集めていきます。

このPinterestは特に女性に人気で、画像キュレーションサービスとも呼ばれ、Pinterest内で活躍する人気キュレーターも登場しています。

 

人気キュレーターJennifer Chongのボード

 人気キュレーターJennifer Chongのボード

 

Pinterestでのコマース機能

 

では、Pinterest上でどのように商品を購入/販売するのでしょうか。

Pinterestには綺麗な風景写真や愛らしいペットの写真など、お金を出しても買えないものがたくさん溢れています。

 

 

その中で販売可能なアイテムには、画像提供者がECサイトのリンクを貼っているものがあります。

 

 

そこをクリックすればすぐに商品が購入可能というわけです。

とはいえ、Pinterest自体に決済の機能などはなく、あくまで誘導先のECサイトでの購入という形となります。

 

 

Pinterestを活用した企業の取り組み

 

アメリカを拠点としたハンドメイドアイテム専門のECサイト“Etsy(エッツィ)”にはPinterestへの投稿機能があり、出店者の間では商品を広めるのPinterestは最適の場だと言われています。

そのため、多くのEtsyユーザーがPinterest上にボードを持ち、集客・マーケティングの場として活用。

ユーザーの相互流入も多いため、両メディアに相乗効果が出ています。

最近ではPinterestからのアクセスが大幅に増えたというECサイトも増加しており、GoogleやFacebookなどの大手検索エンジンやSNSサイトに次ぐ流入数となっているというデータもあります。

アメリカにおいては、大手百貨店やアパレルブランドも等も公式Pinterestページを用意するなど、積極的に活用されています。

 

大手百貨店NordstromのPinterest公式ページ

 大手百貨店NordstromのPinterest公式ページ

 

国内では、これまでPinterestは画像収集サイトという点ばかりがフィーチャーされてきましたが、2012年5月に楽天がEコマースに絡めたPinterestのビジネスモデルに目を付け、1億ドルもの出資をしました。

これに伴い、楽天はワンクリックでPinterestサイトに商品を追加(pin)することができる“Pinボタン”を楽天モール内の店舗に追加。

商品の隣にボタンを配置し、Facebookのいいね!同様多くのユーザーに拡散させる仕組みを構築しました。

現在は楽天だけでなく、サンリオや資生堂、ユニクロ、ル・クルーゼといった女性向けの商品を扱う企業がPinterest内に公式ページを立ち上げたり、自社サイトに“Pinボタン”を導入するなど、徐々に企業の参入も増えているようです。

 

楽天のPinterest公式ページ

楽天のPinterest公式ページ

 

今後、国内のPinterestを活用したソーシャルコマース化も注目していきたいところです。

 

<参考>

加速するソーシャルメディアとECの直結化 - 満足度の高いフィードと「BUY」ボタンの融合は実現するのか

 

 

 

Sumally (サマリー) - コマースへの流れを具体化したソーシャル

 

次に紹介するSumally(サマリー)は、ソーシャル時代における“モノの百科事典”を作るべく、2011年に日本の会社が立ち上げたSNSです。

 

Sumally (サマリー)のメイン画面

Sumally (サマリー)のメイン画面

 

Sumallyとは、“sum(足す)”と“all(すべて)”を合わせた“すべてを足しあげる”を意味する造語。

Pinterestと同様に自分のお気に入りを収集する画像キュレーションサービスですが、Pinterestと決定的に異なるのはそれがモノに特化しているという点です。

Sumallyは“モノで繋がるSNS”と称されるように、モノの単品の画像がタイムラインに流れてくる確率が高くなっています。

 

モノに特化していることもあり、販売されている商品であれば、画像左下に帯状の価格表示がされているのも、ソーシャルからコマースに歩み寄っている証といえます。

ユーザーはこれらの画像からお気に入りをピックアップし、“want it=欲しい”と“have it=持っている”に分類して自分のページ(マイサマリー)を作っていきます。

 

ソーシャルの機能を除けば、Amazonの欲しいものリストを作成する感覚と似ているかもしれません。

また、これらの画像には楽天やAmazonなどのECサイトのリンクが貼られており、リンク先に進むと簡単に商品を購入することが可能です。

タイムラインに流れている画像は食料品からブランドバッグまでさまざまですが、“ショッピング”という項目に切り替えればカテゴリー別にアイテムを表示させることができます。

 

 

Sumally (サマリー)のショッピング画面

 Sumally (サマリー)のショッピング画面

 

Sumallyのコマース機能

 

このように、もともとモノを売ることに前向きだったSumallyですが、今年から本格的にEコマース事業に乗り出しました。

1月には、Sumally内でアイテムを直接購入できる決済機能を搭載。

その第1弾として、“ソーシャルバレンタイン”と銘打ったSumallyと伊勢丹のチョコレート販売コラボ企画が開催されました。

目的の商品を選んで決済するだけなら通常のECサイトと同じですが、男性がショップ上で欲しいギフトを“want it”しておくと、Sumally上やFacebook、Twitterで情報が共有され、それを見た女性がバレンタインにそのギフトを贈ってくれるという、ソーシャルならではのコミュニケーションが話題を集めました。

 

最近では、アパレルブランドなどによるSumally上でのオフィシャルストアの出店も増えてきており、企業における活用も今後進んでいく可能性もあります。

 

 HEADPORTERのSumallyオフィシャルストア

 HEADPORTERのSumallyオフィシャルストア

 

 

さらに5月には、独自機能である“want it”や“have it”のボタンを外部サイトにも埋め込めるように、Sumallyボタンの一般公開をスタート。

これにより、ユーザーはSumally内に未登録のアイテムを簡単に追加できるようになりました。

ユーザーがリンクを貼ることによって外部サイトの売上アップが見込めるため、Sumallyボタンは今後、ECサイトやメディア、ブログなどに続々と導入されていくでしょう。

 

<参考>

オンラインでの「衝動買い」のムーブメントはそこまできている - Sumally、WEAR、Antennaが提案するワクワク感

SumallyのC2Cコマース機能を徹底解剖 - 代表山本氏に未来を聞く

 

 

後編ではFANCY、そしてサービスリリースしたばかりのOrigamiについて紹介していきます。