一般的に「古典的なマーケティングファネルは時代遅れだ」と言われているが、ファネルマーケティングは依然として有益である。ここでは、その理由を述べていきたい。

 

Googleの主張も含め、現在では「マーケティングファネルは役に立たない」という見解を幾度となく目にする。もちろんコンシューマージャーニーの在り方は、時代とともに劇的に変化し、ユーザー行動はインターネットに適応したものとなっている。そして、コンバージョンまでの詳細なプロセスは、各個人によって異なるということを誰も否定はできないだろう。しかし本当に、ファネルマーケティングを完全に放棄すべきなのだろうか?筆者の個人的意見としては、そうは思わない。

 

マーケティングファンネルの利点は、新しい種類の技術指標を取り込みながら、多種のビジネスモデルに対応できるように修正できる点である。

 

購買ファネルの『認知>興味>欲求>行動』というフレームワークに従いつつ、独自の形態で実行することが可能なのである。確かに近代的なマーケティングは一層循環的になっている一方で、購買ファネルのフレームワークは直線的である。しかし、購買ファネルは、変化することのない人間の行動に基づいた顧客獲得の段階を示しているのだ。つまり、製品やサービスを認識していない人に、実際にその製品やサービスを購入したいという欲求は生じないのである。

 

特にデジタルマーケティングをこれから始める場合においては、キャンペーン計画を作成する際にオリジナルの購買ファネルを参照することが常に有益である。紙上で優れているように見えたとしても、ユーザー行動と関連性がない戦略を立てる意味はない。

 

自社のブランドと顧客のことを深く理解できていれば、自社のニーズに合わせて購買ファネルを調整することができるだろう。さらに、購買ファネルは“初心者”だけが参照するべきものではない。当マーケティング会社Brainlabsは、今日でも常に購買ファネルを活用している。

 

3つのパートからなる戦略

プログラマティック・ディスプレイ広告においては、このフルファネル戦略をどのように活用できるか?Googleの多くの機能を活用し、自社がターゲットとするファネルの各段階に、キャンペーンを割り当てる方法はいくつも存在する。

 

ここでは、非常に効果的に機能する方法を紹介しよう。ユーザーの認知獲得には動画を活用し、エンゲージメント向上にはインタラクティブなディスプレイクリエイティブとソーシャルチャネルを、そして顧客獲得には商品にフォーカスしたクリエイティブを活用するべきである。これは純粋なパフォーマンスベースのアプローチのためだけではなく、トラフィックとコンバージョンの増加と、前年度比の収益増加を促進するためにも有効である。

 

1.       ブランド認知度の向上のための動画活用

 

ファネル上流をターゲットとするためにYouTubeを活用し、標準的にレスポンスが高いオーディエンス以外にもブランドの認知度を高めるべきである。どのタイプのアセットを使用するかは、宣伝する商品やサービスによって異なる。その際、ブランドストーリーを新しいカスタムオーディエンスに効果的に伝えるために、徹底的にテストを行うことが必要だ。

 

例えば、ライフスタイルにフォーカスしたアセットである“製品やサービスを使用する顧客”にフィーチャーした、ユーザー発信のコンテンツを試すことも良いアプローチと言えるだろう。

 

2.オンサイトエンゲージメント促進する

 

補足的なディスプレイクリエイティブを使用して、YouTubeのブランドストーリーを継続させよう。ファネルの各段階において、それぞれ異なるクリエイティブやCTA(コール・トゥー・アクション)を使用することで、パフォーマンスが向上するかもしれない。しかし、複数のプラットフォームにまたがったとしても、顧客には確実に一貫したメッセージを伝えなければならないのだ。一貫したメッセージングと魅力あるクリエイティブ制作は、最も重要であると言える。さらに、カスタムオーディエンスを活用して視聴者基盤の拡大を図るべきだ。

 

3.関心の高い視聴者をコンバージョンに誘導する

最後に、焦点を絞ったクリエイティブを使用することで、サイト訪問者をコンバージョンに繋げなければならない。例えば小売業では、“商品”に焦点を当てたクリエイティブを活用すべきである。

 

そして、広告入札を最適化するための綿密なリターゲティング戦略とオーディエンスに適したクリエイティブ戦略を実行する。上流ファネルのアクティビティが下流ファネルアクティビティに与える影響が明確になるように、自社のアトリビューションモデル(コンバージョンに至った広告などの貢献度)を整理する必要もある。

 

低コストで優れた効果を得る

実際に我々は、小売業のクライアントにこの戦略を使用し驚くべき結果を得ている。彼らは優れたコンバーションアクティビティを実行していたが、リーチには限界があり、さらなる成長を望んでいた。そのため我々は、フルファネルアプローチを取り入れてブランド認知度と視聴者規模を拡大させた。

 

一年にわたるこの一連の戦略には、忍耐が必要だった。Googleのブランドリフト調査(YouTubeに表示される短いオンラインアンケート)を実施したところ、YouTube広告を見たグループにおいては、競合他社トップ3と比較してクライアントのブランド名を認知している割合が124%高くなったことが判明した。

 

Googleのカスタムアフィニティ(幅広い見込み顧客にオンライン上でアプローチする方法)およびカスタムインテントオーディエンス(理想的なユーザーを定義して、そのユーザーにアプローチする方法)を設定し、上流ファネルアクティビティを大幅に増加させ、エンゲージメントが高いユーザーの行動プロファイルに合致した層をターゲットとする。そうすることで、クライアントのサイト訪問者は、550%増加し、さらに、ファーストパーティオーディエンス層も増加した。

 

このクライアントにとって効果的だったのは、エンゲージメント向上のために、インフルエンサーが制作したクリエイティブを使用し、コンバージョン増加を目的としたオーディエンスのリターゲティングに、商品重視のクリエイティブを活用したことであった。

 

より多くのマーケティング予算が上流ファネルチャネルに割り当てられたにもかかわらず、「顧客獲得単価」は前年同期比23%も減少させることに成功している。これは、キャンペーン初期にブランドの認知を促進した効果であり、ディスプレイ広告オーディエンスがファネル下流へと移動したことによる影響を示している。そして、彼らは、よりコンバーションの可能性が高く、長期的にみるとコンバージョン達成用のコストが削減された。

 

結論

今回紹介した手順は、フルファネル戦略をどのようにディスプレイ広告キャンペーンに組み込むかという1つの例に過ぎない。しかしこれは、良好な結果が期待できるだろう。購買ファネルに沿って、自社の強みに応じたディスプレイ広告アクティビティを割り当てることは非常に理にかなっており、「ファネルモデルはまだ放棄するべきではない」という点を具体的に理解してもらいたいのだ。

 

初めてマーケティングキャンペーンを計画する場合も、何千回ものキャンペーン実行経験がある場合でも、購買ファネルは有益なものなのである。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の11/2公開の記事を翻訳・補足したものです。