アパレルコーディネートのチャット型提案サービス - オンラインで理想的なコーディネートに巡りあえるのか

 

ECなどのオンラインだけでなく、実店舗においてもアパレルを購入する際に最も悩むことの1つにコーディネートがある。自分の持っているどの服と合わせることができるのか、着回しはきくのだろうかなど、購入したい商品を前に思いを巡らせることは一度や二度ではないはずだ。そして実店舗であればショップ店員に聞いてみることもできるが、ECサイトではなかなかそうはいかない。そんな悩みを解決するため、新たにどんな服を購入したらいいのか、または欲しい服には何を合わせたらいいのか、一人一人に合った提案をオンラインでしてもらえる「チャット型提案サービス」が登場している。今回はプロのスタイリストやショップ店員とファッションに関する質問をやり取りできるこれらのサービスの可能性についてみていく。

 

<参考>

アパレルECに横たわる根源的な3つの課題は解消するのか - サイズ・レコメンド・コーディネート

アパレルECでWEAR、Virtusize、VAULTが提案する次世代のオンライン商品選択の姿

 

 

PRIMODE

 

PRIMODEは、空色が提供するプロのスタイリストがユーザーが希望するシーンに合わせてコーディネートとチャットで提案し、そのまま気に入ったコーディネートやアイテムを購入できるアプリ。

 

 

現在はiPhone向けアプリのみ公開している。昨年末からβ版を公開していたが、5月21日に正式にリリースされ、サービス開始から約1か月で1万ダウンロードを突破した。

スタイリストは雑誌や広告、芸能人の専属など現場で活躍しているプロのスタイリストたち。参加ブランドは40ほどで、ブランドの垣根を越えた提案をしてもらえる。コーディネートのポイントや着こなし方などを相談することができ、商品を購入してからの相談も可能だ。会員登録時に、身長や靴のサイズなどをの体型の情報と好きなファッション誌やブランドなどファッションに関する好みを登録する。そして、予算やどんな時に着たいか、手持ちの服と組み合わせたい場合はその写真をアップすればスタイリストが提案をしてくれてチャットができるのだ。

 

 

実際に使ってみると、LINEのような親しみのあるUIで、気軽にやり取りができ、できるだけ好みに近いスタイルを提案しようとスタイリストが親身になって相談に乗ってくれる。いくつかのイメージ写真から好みのスタイルを伝えると、販売アイテムを使ったコーディネートを提案してくれる仕組みになっている。

サービスの利用は無料で、提案されたアイテムの購入をパートナーサイトを利用してもらい、そこで購入されると発生する成果報酬が空色の収益となる。購買行動のデータを解析して、ユーザー個々に合ったスタイリング提案をするパーソナルコーディネートAIの開発や、チャットを使ったネットショッピングサービスのシステム自体を他のECにも提供していく計画もあるなど、今後のアパレルECに変化をもたらすかもしれない。

 

 

BEST STYLE ME

 

BEST STYLE MEは、自分の服の写真を撮影するだけでコーディネートを提案してくれる男性向けのサービス。

 

 

はじめに好みのスタイルをシンプル、キレイ目、ちょい柄などから選択し、手持ちの服を撮影して登録する。そうすると、スタイリストからその服に合わせたコーディネートを提案してもらえるのだ。また、なぜその組み合わせがいいのかや、着こなしのコツもトレンドを交えて教えてもらえる。できるだけたくさんの服を登録すると、よりその人の好みがわかるため、自分にぴったりのコーディネートを提案してもらえる。さらに、買おうか迷っている服の画像を登録すれば、手持ちの服とのコーディネートを受けることも可能で、「新しい服を買ったけど合わせ方がわからない」という問題も解決する。顔が大きい、太っている、怖く見られるなどのコンプレックスを登録すればそれをカバーできる提案もしてもらえるのも嬉しいポイントだ。

 

 

実際にTシャツを撮影してコーディネートを依頼してみると、1時間ほどで3つのコーディネートが届いた。Tシャツに合わせるパンツとシューズを提案してくれ、コーディネートのポイントを教えてくれる。商品情報をクリックすると関連商品として、それに似た別のブランドのアイテムを見ることができる。購入ページボタンをクリックするとMAGASEEKSELECT SQUAREなどにリンクされて購入することができるようになっている。写真を撮るだけですぐに反応があるので、何か服を買い足したいと思ったときに便利で新しい発見があるかもしれない。

コーディネートは最短10分、最長でも24時間以内にスタイリストからの提案が来る。「スマホで簡単に依頼ができて、すぐに提案が来る」とても手軽なサービスとなっているため、これまでファッションにハードルを感じていた男性でも利用しやすいサービスとなっているのではないだろうか。

 

 

STYLER

 

STYLERは、アパレルショップとユーザーを繋ぐO2Oサービス。

 

 

ユーザーがファッションに関する質問や要望を投稿すると、それに答える形でアパレルショップの店員が自社の持つアイテムを紹介する仕組みになっている。買い物をしたいユーザーとそれを販売する店舗のマッチングが行えるサービスなのだ。

 

 

ユーザーは、「1万円以内で仕事でもプライベートでも履けるズボンが欲しい」「無地のTシャツに合う半ズボンが欲しい」などと要望を投稿する。すると、各ショップの店員がそれに合ったアイテムの提案をしてくれるのである。アイテムの質感などの詳しい説明や着こなし方、価格などのコメントがあり、実際にお店で接客されているときに説明してもらっているような感じでとてもわかりやすい。このやり取りは他のユーザーからも見られるオープンなもので、見ているだけでも楽しいし、ショップにとっては宣伝効果にもなる。投稿したユーザーとショップはクローズドなメッセージ交換をすることができ、実際に店舗に行って試着や購入をしたり、オンライン上で購入することができる。

現在はメンズに特化しているが、ウィメンズやキッズにもサービスを拡大することで現在は約30店舗だが、サービス開始から1年後に登録ショップ数200店舗を見込んでいるという。登録ショップには、有名ショップの他に、オシャレ上級者が通うようなセレクトショップなどもあり、新しいショップに出会える楽しさもある。

STYLERのオウンドメディアとして、STYLER MAGというファッションメディアがある。「イチから分かるファッション」をコンセプトに、初心者でもわかりやすい情報が掲載されている。ファストファッションなどの低価格ブランドに関するハウツーサイトは度々見られるが、セレクトショップなどの中価格帯ブランドや、百貨店やデパートにある高価格帯ブランドに関する情報を発信する初心者向けサイトは珍しい。STYLER MAGはLOW、MIDDLE、HIGHとカテゴリを分けてそれぞれの価格帯のブランドの情報を発信している。記事の最後には「STYLERで探す」ボタンがついていて、記事をきっかけにSTYLERで質問できるようになっている。

現在はまだβ版の公開となっているが、新しいO2Oの形として今後の動きに注目したい。

 

 

オンラインで理想的なコーディネートに巡りあえるのか

 

ファッションのプロと気軽にやり取りができる「チャット型提案サービス」。今回紹介したサービスは全て無料で利用ができる。ファッション誌を読んでも自分の好みのスタイルがあまりなかったり、実店舗でショップ店員との会話が苦手だったりする人は少なくないだろう。これらのサービスを利用すれば、自分の好みが詳しく伝えられるし、Web上なので気軽に会話が楽しめる。

WEARをはじめとしたファッションコーディネートアプリが充実してきているが、自分のコーディネートを投稿したり、他のユーザーの参考になるコーディネートを探すという仕組みのものが多かった。しかし、今回紹介したサービスはファッションのプロ達と1対1でコミュニケーションをとって自分ぴったりのコーディネートを教えてもらえるという新しい仕組みである。ITとアパレル業界を結び付けていくことで、今までになかった新たなショッピングやおしゃれの楽しみ方が生まれてきている。

しかし無料で提供している各サービスはそれぞれ異なるビジネスモデルでの収益化を目論んでいることも見逃せない。それほどファッションに積極的ではない層をターゲットにしている以上、ユーザーからの課金は考えにくい。一方でロボットなどではなくプロのスタイリストなどをはじめとした専門家の工数が発生しているためサービス運営の負担もそれなりに存在している。これらの状況を乗り越え、収益化することができるビジネスモデルはどのモデルとなるのか。更なるチャット型提案サービスの発展に期待したい。