世界的に見て、中小企業(SMB)は、依然として不安定な経済状況に直面している。調査によると、現在の市場環境は中小企業の収益に対してプラスの影響をほとんど与えていないことが明らかになっている。しかし、経営者は会社を倒産させることなく、経済的な困難を乗り越えることができるだろう。
デジタルマーケティングツールを開発するConstant Contactは9月に、「Small Business Now」レポートを発表した。それによると、マーケティング予算は増加傾向にある一方で、その効果に対する自信は低下しているという。
米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの2,500人以上の中小企業経営者と、8,000人の消費者を対象にしたこの調査で、自社のマーケティング活動の効果に「非常に自信がある」と答えた中小企業経営者は5人に1人未満だった。
本調査によると、中小企業のマーケティングに対する取り組みと、有意義なビジネス成果を得られるという自信との間に、ギャップが広がっていることが明らかになった。マーケティング予算の増加や、メールマーケティング、AI、動画などのツールの導入が進んでいるにもかかわらず、マーケティングの効果に「非常に自信がある」と答えた中小企業はわずか18%(2024年の27%から減少)に留まっている。
Constant Contactのレポ―トによれば、経済的なプレッシャーが中小企業に戦略転換を迫っており、各国の回答者の44%が「最も信頼できるチャネル」として選んだ「メール」が、再び首位に返り咲いた。また、中小企業の半数がマーケティングにAIを活用し、78%が動画を活用しているが、こうした導入が進んでも確固たる自信にはまだつながっていないという。
不確実な状況への適応に「十分準備ができている」と感じているのは、わずか17%。米国の中小企業は、AI導入において世界の同業他社よりも遅れを取っている。一方、カナダでは「Buy Canadian(カナダ製品を買おう)」運動に積極的に取り組む企業が多く、オーストラリア、ニュージーランド、英国の中小企業は将来に対してより楽観的である。
Constant Contactの最高マーケティング責任者、Smita Wadhawan氏は、中小企業はマーケティングの成果を上げるプレッシャーに直面しているものの、努力に見合った成果が得られていないと感じていると指摘する。
「彼らはこれまで以上に懸命に働いているが、成果に導くための時間や専門知識、データが不足している。何が顧客の心に響くのか、多くの企業が依然として手探りの状態である」と同氏は述べる。
中小企業のマーケティングに対する自信が低下する理由
Constant ContactのCEO、 Frank Vella氏によれば、ますます多くの中小企業の経営者が感じているマーケティングへの自信の低下は、経済的なプレッシャー、複雑さ、そして不確実性が重なった「完璧な嵐」によって引き起こされているという。彼らはコストの上昇に直面しており、44%がそれを最大のストレス要因として挙げている。
「このプレッシャーにより、マーケティングに使うすべてのお金が効果につなげられる必要があるが、結局何が効果的なのか分からないということが彼らの最大の不満になっている。彼らはまるで推測だけで進んでいるように感じ、たとえ一生懸命努力をしていても、その不確実さが自信を失わせてしまうのだ」と同氏は言う。

Constant ContactのCEO、 Frank Vella氏
このレポートによると、米国の中小企業におけるAIの導入率はわずか37%で、調査対象国の中で最も低く、世界平均の48%を大幅に下回っている。Vella氏は、これは関心の欠如ではなく、むしろ意図的な姿勢の表れであると見ている。
米国の中小企業は、スピードよりも安定性を優先する。多くの企業が最小限の体制で運営しており、実験的な取り組みに割ける時間がほとんどないため、確実に成果が出る手法に固執してしまう傾向がある。
「自動化によって自社ブランドの差別化要因である『人間らしさ』が失われることへの健全な懐疑心もある」と同氏は述べる。
最大の障壁は、AIの学習に必要な時間である。さらに、データのプライバシー、コンテンツの正確性、ブランドの声の保護に関する懸念も加わる、とVella氏は付け加える。
Vella氏は一方で、AI導入の勢いが高まっていると見ている。AIを利用する中小企業は、メール、有料ソーシャル、検索マーケティングでより高いパフォーマンスを報告している。「米国でもこのAI導入が加速すると確信している」と同氏は断言する。
中小企業がメールに立ち返る理由
中小企業は、よりコントロールしやすく、成果が明確に見える実績あるチャネルへと回帰しつつある。Vella氏によれば、現在では44%の中小企業がメールを「最も効果的なマーケティングチャネル」と回答しており、これは昨年の23%からほぼ倍増している。
「これは偶然ではない。ソーシャルメディアは重要だが、その効果は予測困難だ」と同氏は指摘する。
一方、メールは中小企業にとって、顧客と直接つながるフィルターのかからない連絡手段を提供してくれる。これは企業が所有するチャネルであり、特に売上の一つ一つが重要な状況においては、即時的なコミュニケーションと顧客関係の維持を可能にする。
「何が効果的なのかが分からないことが最大の不満である今の環境では、メールは彼らが切実に必要とする明確さと成果をもたらしてくれる。『確実に効果があるもの』への回帰なのだ」と同氏は付け加える。
メールを活用した顧客との信頼の構築
Vella氏は、メールマーケティングのよくある失敗を避けることが中小企業の信頼構築の成功の鍵であると指摘する。重要なのは、メールを単なる販売ツールではなく、直接的でパーソナルなコミュニケーション手段として活用することだ。特に新しい技術を導入する際にも、ブランドの「本物の声」を失わないことが重要である。
たとえば、中小企業のほぼ半数がメール作成にAIを活用しているが、Vella氏が指摘するように最大の懸念はブランドの声とズレが生じることである。
「最大の過ちは、自動化によって自社のユニークさを生み出す『人間らしさ』が置き換えられてしまうことである。AIをアイデア出しや着手段階に利用するのはよいが、最終的なメッセージが真に自社の声と合致していることを常に確認すべきである」と彼は述べた。
またVella氏は、顧客を単なる数字のように感じさせることで、信頼を損なう危険性についても中小企業に注意を促す。顧客の要望を推測するのは避けるべきである。
「重要なのは、顧客の反応に注意を払い、それに合わせてアプローチを改善することだ。そうすることで、自社の取り組みが真に顧客と繋がっていると確信できる」とVella氏は提言する。
中小企業向けマーケティング技術の次なる変革
Vella氏は、Constant Contactの調査から、次なる大きな変革は「新しい技術そのもの」ではなく、中小企業が既に導入しているAIなどのツールの「インテリジェントな統合」にあると指摘する。次世代のテクノロジーは、「何が効果的なのか分からない」という企業が直面する最大の課題に対処しなければならない。
「それは単にコンテンツ作成のスピード向上を手助けするだけでなく、真の明確さと実行可能なインサイトを提供し始める必要がある」とVella氏。「中小企業が今すぐ取るべき最も重要な行動を一つ挙げるとすれば、それは自分たちがコントロールし、測定できることにしっかり集中することだ」。
Vella氏は、Constant Contactのeコマースプラットフォームが提供する直感的なAIツールは、マーケティング戦略の代替ではなく、アシスタントとして機能すると説明する。このツールは、リアルタイムのデータと明確なインサイトを活用して、メールやSNS投稿の下書きの作成を支援する。これはAIの主要な活用例である。
業界アナリストは、中小企業がマーケティングプラットフォームを選択する際に重視するのは、機能の多さよりも、測定可能な成果をもたらす使いやすいツールであることだと指摘する。
出発点として、プラットフォームがなくても、中小企業はAIを活用してメールマーケティングを支援することができる。たとえば、白紙のページを見つめる代わりに、AIにアイデアのブレインストーミングや下書きの作成を依頼できる、と同氏は提案する。
「あなた自身が自分のビジネスの専門家である。だからこそ、そのコンテンツを編集・調整して、自身のブランドの声に合わせることができるのだ」と同氏は語った。
※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の10/24公開の記事を翻訳・補足したものです。