本記事では、デジタルコマースの新時代に成功するために新しい戦略やツールを取り入れているビジネスオーナーを紹介し、そこから学ぶべきことを考察する。

 

オンラインでのビジネスのあり方に、この数年は多大な影響を与えてきた。そして、オンライン小売のピークは2020年5月のピークからは下がってきたというデータもあるが、ただ販売するだけでなく、オンラインで顧客と関わることの重要性に変わりはない。

 

このことは、インフレやコスト上昇によって顧客向けの価格を引き上げざるを得ないなど、企業が厳しい経済状況に直面している場合に特に当てはまる。このような逆境にもかかわらず、中小企業は非常にクリエイティブで機知に富み、顧客とつながり、大勢の中で際立つための新しい方法を見出し、その過程で新しい戦略やツールを取り入れてきた。

 

このようなビジネスオーナーの創意工夫、そして、デジタルコマースの新時代に後れを取らないだけでなく、往々にして、次世代のオンライン体験を提供するためにより高いレベルを求める彼らの姿勢に刺激を受けることも多い。

 

ここでは、世界中の中小企業がどのようにオンラインパフォーマンスと顧客体験を向上させているかを示す、3つの素晴らしい事例を紹介しよう。

 

リードジェネレーションに乗り出す

「リードジェネレーション」(リード獲得)は、昔ながらのイメージがある。1-800の番号(米国のトールフリー電話番号)に電話したり、静的なウェブフォームに入力して返事を待ったりすることを連想する人もいるかもしれない。そのため、はるかに現代的で、ダイナミックな、メッセージベースのパーソナライズされたブランド対応のリードジェネレーションの新時代を目にするのはエキサイティングなことである。

 

Cake MallのオーナーであるAnand Vaidhyanathan氏は、その好例だ。Cake Mallは、家庭やプロのパン職人向けにトレーニングを行うインドの機関であるが、パンデミック発生時には、実店舗の開設計画を中止せざるを得なかった。このビジネスはニッチなカテゴリーであるだけに、顧客ベースを拡大する方法を見出すことは、特に人々が自宅に閉じこもっている時期にあっては、大きな焦点となっていた。Vaidhyanathan氏は、試行錯誤の末に、見込み客との会話を大規模に行うことができるリードジェネレーションにたどり着いた。

Vaidhyanathan氏とそのチームは、これらのリード獲得ツールを使うことで、見込み客をよりよく理解するための重要な情報を収集することができた。Vaidhyanathan氏によれば、それにはある程度の時間と忍耐が必要であったが、それだけの価値はあったという。私と同僚がVaidhyanathan氏に話を聞いたところ、パンデミック時のCake Mallの顧客の80%は、リード獲得広告を利用したものであったという。

 

Cake Mallの経験は、戦略的なカスタマイズとコミュニケーションの重要性を示している。マーケティングとリードジェネレーションにおいて、画一的なアプローチは時代遅れであることを理解してほしい。顧客がどのようにあなたのビジネスを見つけたか、過去の購入履歴など、重要な要素に基づいて顧客をセグメント化してみよう。そして、さまざまなメッセージを検討し、この特定のオーディエンスの心に最も響くと思われるものを決定しよう。

 

これには試行錯誤が必要だが、メッセージや売り込みをカスタマイズすることによって、より多くの成果を得ることができるはずだ。

 

メッセージングの機会

かつて、中小企業の特徴は、フレンドリーな笑顔と握手だった。しかし、パンデミックにより、このつながりは急速にオンラインに移行し、中小企業の4分の3がデジタルファーストの新しいビジネスモデルを採用するようになった。そして、ビジネスメッセージングは今、このような中小企業の特徴をオンラインで実現するための中心的な役割を担っている。

 

交通事故、人身事故、その他の問題などについて、スペイン語を話す人々と適切な弁護士をつなぐことに焦点を置く代理店、Abogados Latinosの例を考えてみよう。同社は、看板や有料のテレビコマーシャルといった従来の広告媒体を活用するよりも、ビジネスにメッセージを送るためのアクションを提供する広告の方が、ブランドが潜在顧客のニーズに真に耳を傾けることができるため、より効果的であることに気づいた。

 

Abogados Latinosは、スペイン語と英語でカスタマーサポートを提供するべくトレーニングをカスタマイズすることで、同じレベルの人々と出会い、彼らが話を聞いてもらえていると感じられるようにし、ビジネスと顧客の関係を順調にスタートさせている。Abogados Latinosのマネージャー、Richardo Nunez氏によると、2021年の新規顧客10,000人の大部分は、このメッセージング戦略によって同社にもたらされたものであるという。

 

興味深いことに、革新的なメッセージングソリューションの利用は、中小企業が大企業よりも優位に立てる分野の一つである。レガシーシステム(過去の技術や仕組みで構築されているシステム)に縛られていない中小企業は、こうした新しいツールを自由に試すことができ、Abogadosの例のように見込み客とのコミュニケーションや従来のカスタマーサービス業務の支援など、さまざまな場面でそれがどのように役立つかを探ることができるのだ。

ビジネスオーナーには、特に忙しいホリデーシーズンの前に、パーソナライズと自動化が行われたソリューションを提供し、時間とコストを節約して規模の拡大を行うことができるビジネス・メッセージング・ソリューションを検討することをお勧めしたい。これは、注文の受付から、新しいホリデーディールの提案、出荷に関する最新情報の提供まで、あらゆることを処理するために顧客に直接関わることを意味する。また、返品や注文のキャンセルなどの問題に対処する際にも、企業とその顧客の双方にとって簡便となる可能性がある。

 

動画の新境地

2020年には、消費者の96%オンライン動画の消費を増やし、視聴者の10人中9人が「ブランドや企業の動画をもっと見たい」と回答している。実際、今年の時点で、平均的な人は1日あたり100分、オンラインビデオを視聴すると予測されている。言うまでもなく、動画はこれからも普及し続ける。そして今こそ、動画をオンライン戦略の一部に取り入れる方法を検討する時だ。

 

米国のコーヒーショップ、Swatara Coffee Companyの共同経営者であるJoanna Guldin-Noll氏は、夫のJohnと一緒に新しい動画形式を試すことに成功し、モバイルファーストで短編のリールが注目を集め、エンゲージメントを促進する素晴らしい方法であることを発見した。Guldin-Noll氏は、この形式を使うことにまだあまり慣れていないものの、同氏の投稿は、以前の投稿での1日のエンゲージメント数と比較し、数時間で平均4倍のエンゲージメントを獲得していると話してくれた。

 

Guldin-Noll氏の例は、これから動画を手掛けようとする人に、及び腰になる必要はないことを気づかせてくれるものだ。物事はシンプルでよい。携帯電話で録画し、使い勝手のよいエフェクトや音楽、テキストを追加して、動画に命を吹き込むのだ。高い費用をかけるよりも、関連性があり、本物のコンテンツであることに重点を置こう。オンラインオーディエンスにとって、コンテンツがよりアクセスしやすいものであればあるほど、より多くのエンゲージメントが得られるということを忘れないことだ。これはSwatara Coffee Companyが取った戦略で、同社では実際のメニューやショップでのイベント、地元の名物料理を準備する同社のチームの舞台裏を見せている。

 

今後数か月、そして数年にわたり、デジタル環境が急速に変化し続けることは明らかだ。Cake MallやSwatara Coffee Company、Abogados Latinosなどの中小企業も、それに合わせて進化し、適応し続けることは間違いないだろう。これらの企業が実証しているように、新しいツールを取り入れ、新しい戦略を試すことには大きな利点がある。このようなオープンな考え方を持ち続ける中小企業は、新世代のコマースで成長するだろう。

 

※当記事は米国メディア「Entrepreneur」の10/27公開の記事を翻訳・補足したものです。