より大きな目標のために、送料無料サービスの提供を再検討する必要がある。

 「送料無料」ほど、ホリデーシーズン中に購入をためらっている買い物客を決心させるのに有効なオファーはないであろう。特に、送料無料に加えて、セール価格や割引のプロモーションが組み合わされると、商品を比較検討している消費者の購買意欲を刺激し、1年の終わりの最後の売上を絞り出す要因になりうる。

 

競争のためにかかる費用は、小売業者にとってはもちろん無料ではないということが問題だ。ラストマイルデリバリー(物流における最終拠点からエンドユーザーへの配送)のコスト上昇に対応するためU.S.Postal Serviceや、FedExが料金を引き上げた影響で、配送コストが着実に増加している。こうした高騰するコストに影響を受けない小売業者はいない。Amazonにおいては、2017年に217億ドルの配送費が発生しており、これは2015年に配送にかかった費用のおおよそ2倍だったという。

 

eコマース市場における大手小売業者間のシェア争いによって、大小さまざまな規模の事業者が、コストのかかるこの「送料無料」サービスの提供を余儀なくされている。しかしながら、これらの事業者が「送料無料」を戦略的に利用して、ホリデーシーズン以降も損失を最小限に抑え、より広範なビジネス目標を達成できる方法がいくつかある。

 

1.平均注文額(AOV)を引き上げる

送料無料が適応されるための最低注文金額を設定するという手法は、何も新しいことではない。多くの小売業者は、収支がプラスとなる価格を送料無料となる最低注文金額として設定している。しかしより良いアプロ―チは、自社の店舗で取り扱っている商品のAOVを把握し、送料無料設定金額をそのAOVよりも5~15%高く設定することだ。たとえば、AOVが42ドルであれば、最低注文金額は49ドルに設定することを検討すべきである。

 

重要なのは、単に利益を確保することだけを考えるのではなく、AOVを引き上げ、今よりも多くの利益を出すことなのだ。このアプローチは、ほかにも二つのメリットがある。競合他社と同様に送料無料のメッセージングを行うことができる一方で、小規模な取引においては、収益の損失を防ぐことができるのだ。これにより、買い物客にとって自身のブランドを検討候補に留めることができ、クイックスルー率を上げることができる。さらに、送料無料設定金額に達するために、買い物客が他の様々な商品を閲覧することになるので、必然的にサイト滞在時間とページビューが増える可能性もある。

 

2.購買意欲の高い顧客を獲得する

買い物客は、送料無料サービスを受けるためには何でもする。個人のコンタクト情報の提供は、その一つと言える。初めてのサイト訪問者に対し、挨拶文とともに送料無料サービスへの登録を促す案内を表示するというオプションは、潜在的な新規顧客をすばやく獲得するために有効だ。

この送料無料サービスに登録した買い物客は、購買意欲が高いため、彼らを引き続きターゲットとし、よりパーソナライズされたオファーを提供することで関係を深めることができるだろう。また、顧客に興味や関心のある分野などの情報を追加してもらい、最高のエクスペリエンスを確実に提供し、登録解除率を下げることも可能である。さらに、カスタマージャーニーに沿って、競争力のあるロイヤルティプログラムの主な特典として、送料無料サービスの提供を検討してみてはどうだろか。

 

3.高益商品からより多くの価値をつくりあげる

「無料」とは非常に魅力ある言葉だ。消費者は無料の特典を得るために、特定の商品を購入する。自社の取り扱う商品毎の利幅が大きく異なる場合、より利幅の大きい商品を含む注文のみ送料無料とすることを検討するとよい。

利幅の大きい商品から得た利益で、配送コストを補填する。例えば、特定の利幅の大きい商品の紹介ページに送料無料のマークを表示するなどして、購買意欲を高めることができるだろう。

 

4.配送料の安い地域では送料無料を強化する

物流センターに近い地域は、送料が安くなる傾向がある。よって、(その地域は)無料配送を提供することを検討するとよい。このやり方は、コンバージョン率を最大化することが可能で、無料で配送ができない地域での利益の損失を相殺するのに有効なのだ。

同様に、送料を交渉できそうな地域では、送料無料を制限してみる。もう一つの方法としては、小さくて軽量な商品は送料無料にすることだ。こうしたものは大抵配送コストは低いはずだ。

 

5.送料無料の商品が2日で配達される必要はない

Amazonによって、消費者は、商品が「送料無料」で「2日以内に配達される」ことを当然の如く期待するようになった。これは、非常にコストがかかるもので、多くの小売業者にとっては実現不可能なことである。実際のところ、ホリデーシーズンの買い物客にとって「配送スピード」は必ずしも重要なことではないとも言われている。

買い物を後回しにし、ホリデーシーズン中にも迅速な配達を希望する消費者はいるものの、多くの消費者は、ホリデーシーズンの早い時期に買い物を済ませる。返品交換が可能な期間中であれば、買い物客はそれほど商品を受け取る期限にこだわらない。もし、約3~5営業日以内などの妥当な配送期間で、送料無料で商品を配達できるのであれば、“送料無料の競争”に参戦しながらもコストを最小限に抑えることができるだろう。

これらの送料無料オプションには多くの利点がある一方で、特定のチャネルで販売する場合の規定には注意する必要がある。例えば、Google Shoppingにおいては、初回の購入のみを対象とした送料無料サービスを提供することはできない。送料無料は、ユーザー全体に適応され、新規顧客のみを対象とすることはできないのだ。

 

結局のところ、送料無料戦略を行う際は、自社のビジネスが、何を許容できるのかをきちんと認識しておくべきなのである。今年のホリデーシーズンから得た教訓を活かし、来年には新しい試みを行い、何が自社のビジネスとカスタマーエクスペリエンスにとって有効なのかを見極めて欲しい。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の12/17公開の記事を翻訳・補足したものです。