メタバースECは、現実利用→デジタル専用→フィジタルへ形態を変え、どのように進化していくのか

 

構成修正のみ、文章チェックはこれから20251116

メタバースの活用は、単なるバーチャルショールームから進化し、複数ブランドが集う「メタバースEC」へと広がりを見せている。世界のメタバース市場は、2022年の461億ドルから2030年には5,078億ドルまで拡大すると予測されており、その中でもECが最も大きい割合を占めている。市場の拡大に伴い、メタバースは単なる体験空間から、ブランド体験やコミュニティを核にした購買・所有の場へと変容している。本記事では、それぞれの型の特徴と代表的事例を整理し、メタバースECとその決済方法などが今後どのように進化し、ECを加速させるのかを見ていく。

 

 

メタバースECを分類する3つの型

 

メタバースECはしばしばバーチャルショールームと混同される。バーチャルショールームとは、特定ブランドや商品の展示・体験空間のことで、単一ブランドまたは単一店舗において、商品理解や購買体験をリアルに近づけて購買意欲を高めることが目的である。一方、メタバースECとは、メタバース空間全体で、現実世界の商品を購入できるEC体験のことで、複数ブランド・複数カテゴリーが共存する経済圏で街歩きやイベント参加などの体験と購買を統合したものである。ここでは、メタバースECは、現実利用型、デジタル専用型、フィジタル型(ハイブリッド)の3つに分けて考えていく。

 

現実利用型

現実利用型は、仮想空間を「現実の商品やサービスへと誘導する体験装置」として用いる形で、通常ECを決済方法として用いる。ここではイベントや街歩きといった体験が中心であり、メタバースはマーケティングや販促の延長線上にある。

 

デジタル専用型

デジタル専用型では、アバター用の衣装やアイテムといった、現実には存在しない純粋なデジタル商品が消費の中心となる。プラットフォーム内独自通貨や暗号資産を用いることが多く、メタバース内で経済が自己完結し、ユーザーの体験そのものが消費行動と直結している。

 

フィジタル型

フィジタル型では、デジタル体験と現実の商品が融合し、ユーザーはバーチャル空間での体験を通じて現実の商品やコミュニティとつながる。この段階では、メタバースは単なる仮想体験の場を超え、現実とデジタルを横断するブランド体験の中核となっている。NFTを決済方法として用いることが一般的である。

 

 

現実利用型

 

バーチャル渋谷(KDDI) × PARCO

KDDIの事業共創プログラム「∞の翼(ムゲンノツバサ)」の一環として展開された「バーチャル渋谷」は、現実利用型メタバースECの代表事例である。渋谷PARCOの1F「ナカシブ通り」と10F「ROOFTOP PARK」が空間のメディア化対応施設となり、都市そのものを拡張現実の舞台に変えている。

メタバース空間での期間限定展示や街歩き体験を通じて、ユーザーをECサイトへ誘導し現物商品の購買につなげるイベントを行っている。PARCOなどの様々な企業がバーチャル渋谷に出店し、仮想空間自体が販売の場ではなく、購買意欲を喚起する体験装置として機能している。

PARCOは、渋谷の実在の街区を「XRscape」として拡張し、都市空間を広告・体験のメディアに変える試みを進めている。利用者はスマホをかざすだけでバーチャル広告やキャラクター、スタンプラリーといったインタラクティブなコンテンツに触れることができる。この仕組みは、街歩き体験と購買行動をシームレスにつなぐことを狙ったものである。

PARCOは2019年の渋谷PARCOグランドオープン時から「SHIBUYA XR SHOWCASE」でAR展示を行うなど、XR技術に早期から注目してきた。その延長線上にあるのが「XRscape」であり、STYLY Studioを使って都市空間にAR/MRコンテンツを自由に配置・配信できるソリューションだ。利用者はスマホアプリ「SATCH X」を通じて空間に重ねられた広告やアート、キャラクターといったコンテンツにアクセスし、街歩き体験をインタラクティブに楽しむことができる。

バーチャル渋谷のきっかけとなったのは、ハロウィン時の渋谷のゴミ問題など、都市空間が抱える課題意識だ。日本のカルチャーの中心地でありながら、その魅力を十分に発信できていない渋谷を、バーチャル体験と現実購買の融合によってアップデートしようという意図がある。この取り組みは原宿にも拡大し、「バーチャル原宿」と称してBEAMSなどが出店している。

 

あつまれどうぶつの森×KFC Philippines

KFC Philippines は、Nintendo Switch の「あつまれどうぶつの森」内に公式「KFC Island」を開設し、来島者が“カーネル・サンダース”を見つけて一緒にスクショを撮ると実店舗で使える8ピース無料クーポンを配布する仕掛けで、ゲーム内体験をリアル来店へと直結させた。招待はKFC Philippines公式Facebookで時間限定のDodoコードを告知する方式で、2020年6月中旬の短期プロモーションとして運用された。その後はDream Address(夢番地)が公開され、島の見学は常時可能になったが、クーポン配布キャンペーン自体は終了している

この取り組みは、コマース機能をゲーム内に実装するのではなく、発見→参加→店頭での引換という導線で来店を喚起し、SNS拡散(スクショ投稿)を促すことで話題化と送客を同時に狙う現実利用型のメタバースECの事例となった。

 

 

デジタル専用型

 

ZEPETO × Gucci

ZEPETO × Gucciは、様々なブランドが出店しているプラットフォーム「ZEPETO」のシグニチャーワールドの一つであり、Z世代を中心に人気を博している現実利用型のメタバースECである。新しく登場した「Gucci Ancoraワールド」では、これまで以上に没入感のあるブランド体験が実現され、単なるファッションの展示を超えたデジタル体験が提供されている

NAVER ZとGucciは、Z世代にこれまでなかった新しい価値を届けたいという共通の想いを持ち、コラボレーションを深化させてきた。実際にZEPETOのユーザーの90%以上がZ世代であり、この層に特化した戦略は極めて合理的だ。これまでに販売されたGucciの仮想アイテムは累計約80万個にのぼり、購買意欲の高さを裏付けている。若年層の新規顧客接点として機能している。また、Gucciに関連するUGCのビュー数は5,300万回以上(2023年8月時点)を突破し、ユーザー参加型の拡散力を示している。さらに「Gucci Gardenアーカイブ展」では、過去6年間のブランドの歩みが振り返られ、ファッション史としての側面も強調された。こうした活動は、ブランドの歴史と未来をデジタルで結びつけ、ユーザーを単なる消費者ではなく共同の体験者・発信者へと変えている。

さらに、ZEPETOにはブランドのみでなくBLACKPINKなどのアーティストも出店している。ZEPETO × BLACKPINKは、アバター用の衣装やダンスモーションの販売を通じて、K-POPファン層に爆発的なヒットを記録したデジタル専用型メタバースECの事例である。2023年、NAVER ZはYG Entertainmentと連携し、BLACKPINKの新ワールド「BLACKPINK スクエア」を公開。ここではワールドツアー<BORN PINK>ソウル公演で実際に着用された衣装をZEPETO内で展開し、ファンが自分のアバターを通じて憧れのアイドルと同じファッションやパフォーマンスを体験できるようにした。

さらに、MVスタジオやオリジナルグッズの自販機、ガチャを用意し、ミュージックビデオに登場する地球儀やタンクといった象徴的アイテムをコレクションできる仕組みも導入。実際の海外ツアーが開催されると、その時間に合わせてワールドが特別仕様にアップデートされるなど、現実とメタバースをリンクさせた演出も大きな話題を呼んだ。

この取り組みは、単なるデジタルアイテム販売にとどまらず、ライブ・MV・グッズ購買を横断的につなぐファンコミュニティの拡張装置として機能している。

 

Roblox × Ralph Lauren Winter Escape

Roblox × Ralph Lauren Winter Escapeは、Ralph Laurenがメタバース空間に本格参入した最初の取り組みとして注目されたデジタル専用型メタバースECである。目的は、ブランド体験を通じた若年層への認知拡大であり、購入できるアイテムはすべてRoblox内でのみ使用可能なアバター用のデジタルファッションに限定されていた。

このイベントでは、冬のホリデーシーズンをテーマにした雪山の空間が展開され、ユーザーはアバターを介してアイススケートやホットチョコレート、宝探しゲームなど多彩なアクティビティを体験できた。さらに「ラルフ・ローレン・デジタル・コレクション」として男女兼用の限定スキーウェアやアクセサリが販売され、数百万着が売れるヒット商品となった。SNS映えするデザイン性がバズを生み、拡散力を高めたことも成功要因の一つである。

開発にはRobloxのスタジオ「Funnomena」が協力し、Ralph Laurenの世界観をゲーム的な要素と融合させることで、ブランドとユーザーの接点を従来のEC以上に没入的に設計した。Robloxは4,700万人のデイリーアクティブユーザーを抱えており、この巨大なコミュニティに向けて、現実には存在しない純粋なデジタル消費体験を提示した点で、メタバース時代の新しいECの方向性を象徴している。

 

 

フィジタル型

 

Nike .SWOOSH

Nike .SWOOSHは、ナイキがWeb3戦略の一環として立ち上げたプラットフォームでありスニーカーの現物とメタバース用デジタルスニーカーを同時に提供するフィジタル型メタバースECを実現している。所有者は限定イベントや特別なデジタル空間にアクセスでき、購入後も体験やコミュニティ参加が続いていく仕組みだ

この基盤を支えているのが、ナイキが買収したデジタル・デザイン・スタジオ RTFKT(アーティファクト) である。RTFKTはNFTファッション分野を牽引し、アバター用アイテム「CLONE X」などのコレクションで大きな成功を収めてきた。実際、ナイキはRTFKTのNFT販売によって少なくとも1億8530万ドル(約260億円)の収益を上げており、競合のアディダスプーマを大きく引き離している。

NikeのWeb3戦略は、単なるプロダクト販売にとどまらない。例えば、バーチャルシューズを購入すると、現物スニーカーの予約権や、デザイナーとの交流、ゲーム空間での利用といった「購入後の体験」そのものに価値を見出す設計がなされている。こうした共創型の仕組みは、コミュニティとブランドを結びつける新しい接点を創り出し、従来のECにはなかったブランドエンゲージメントを可能にしている。

Nike .SWOOSHはまだ進化の途上にあるが、靴ひもやカラーのユーザー投票といった新機能が示唆されており、今後も「商品を買う」ことを起点に、サービス・体験・コミュニティを拡張するフィジタル型ECの中核を担っていくと考えられる。

 

BAYC(Bored Ape Yacht Club)× IRL Merch

BAYC × IRL Merchは、NFT所有者だけが現物グッズを購入できる仕組みを導入し、NFTを単なるデジタル資産ではなく会員証として機能させたフィジタル型メタバースECの代表的な事例である。BAYCは2021年のローンチ以降、世界的に注目されるNFTアートプロジェクトとなり、MeebitsやCryptoPunksなど派生プロジェクトを含め、いずれも数千億円規模の取引高を記録している

Yuga Labsが生み出したBAYCの最大の特徴は、NFTをコミュニティ参加権と位置づけ、所有者限定でイベントへの招待やグッズ購入権、さらには他のNFTプロジェクトで利用できる特典を付与している点にある。マドンナやジャスティン・ビーバーといった有名アーティストもコミュニティに参加しており、NFTを通じて彼らと交流できる可能性も大きな魅力となっている。

「Bored Ape Beach Club」をテーマにしたコレクションでは、NFTを保有することで現物アパレルや限定アイテムを購入できる仕組みが展開された。また、米国のハンバーガーショップ「Bored & Hungry」では、オーナーが自身のBAYC NFTをメニューやパッケージに活用し、店舗そのものをリアルなBAYCコミュニティスペースへと変えている。オンラインの「Bored Ape Wear」では、保有者が自分のNFTをデザインに取り入れたアパレル制作・販売が可能で、イベントのユニフォームとして活用されることでコミュニティの一体感を高めている。

このようにBAYCは、NFTを「ただ保有するデジタルアート」から「所有者同士の結束を通じてブランドやプロジェクトを発展させる仕組み」へと進化させた。結果として、NFTはブランド体験や現物商品の購買と直結するフィジタルなコミュニティ基盤として機能している。

 

 

現実利用型から、デジタル専用型、フィジタル型へ

 

つづいて、それぞれの事例を時系列で見ていこう。プラットフォームごとに色を分けており、矢印が伸びているものは矢印の終点までプラットフォームが続いていることを示している。色付き文字はプラットフォーム、黒文字はコンテンツである。また、例えば「バーチャル渋谷×PARCO」や「バーチャル原宿×BEAMS」が何度も記載されているが、これは短期間のイベントが数回にわたって開催されたことを示している。

 

 

 

現実利用型は、「バーチャル渋谷」のように、現実の街やイベントをそのまま仮想空間に移して人を集めるやり方だ。配信や限定グッズ、クーポンをまとめて見せられるので、「見に来た流れでそのまま買う」が起きやすい。しかしここで仮想空間はあくまでイベントや体験の場にすぎない。購買そのものは外部のECサイトで行われ、クレジットカードや銀行振込といった従来型の決済に頼っている。しかし、この方法にはUX上の限界がある。例えば、サービス外に遷移して決済するフローはユーザーの没入感を中断させ、購買意欲を削いでしまう。また、VRゴーグルを装着したままカード番号を入力するのは利便性が低く、VRゴーグルの動きを窃視される懸念指摘されている。つまり現実利用型では、メタバースは「集客装置」にはなり得るが、決済体験は現実世界に縛られている。

デジタル専用型では、Robloxなどの事例が示すように、ワールド内のスキンやバッジなど“デジタルだけ”の価値で人を惹きつけ続けるやり方だ。ユーザーが遊び場やコンテンツを作るため、常に新しい価値が生まれ、イベントやコラボを重ねるほどコミュニティが育つ。また、メタバース内のバーチャルイベントやコレクションの中で新たなブランドを認知、発見することが購買意欲につながる

ここでは、Robloxの「Robux」やFortniteの「V-Bucks」、ZEPETO通貨、さらにはDecentralandの「MANA」など、プラットフォーム内独自通貨や暗号資産を用いる。消費と決済が仮想空間内で自己完結し、「メタバース経済圏」が形成されている。

独自通貨や暗号資産が選択される背景には、通常ECをメタバースで使用する際の課題がある。通常ECは多くの場合国境を越える支払いに対応できない。その点、暗号資産は仲介者を必要とせず、為替レートの壁や国際送金の高い手数料を解消できる。実際、米国では2025年時点で成人の14%が暗号資産を保有しているとの調査もあり、利用者基盤は着実に広がっている。2018年時点では実は日本の暗号資産保有率が11%と世界で一番高いという報告もあるため、日本は暗号通貨決済の拡大において見込みがある市場なのではないか。

メタバース消費者の約80%が仮想通貨を主要な支払い方法として使っている。一方で、暗号資産には価格変動や安全性といった懸念も残り、利用者は安全性を最も注視している。また、Walletの準備が必要で、導入のハードルが高い点も普及を妨げている。そこで、独自通貨がデジタル専用型には多く使われている。RobuxやMANAのように利用価値が明確で特定の空間に閉じた独自通貨は、ゼロになる可能性が低く「相対的にリスクが小さい」と見られている。MANAには利用に伴うバーン機能があり、需給コントロールが効くことも安定性を高める要因だ

さらに進化したのがフィジタル型である。デジタルの権利(NFTや会員バッジ)が価値や通貨として働き、オンラインの行動が実物の購入に直結する仕組みである。フィジタル型では多くのブランドが、Nike .SWOOSH や Adidas Into the Metaverse のように、NFTを決済と所有権証明の基盤に据える。NFTは唯一無二のIDを持つことで、単なる支払い手段を超えて「このデジタル資産を誰が所有しているか」を個別のNFTごとに管理してブロックチェーン上で証明できるため、追跡の透明性が高い。さらにNFTはスマートコントラクトによって二次販売時にも自動でロイヤリティ収益がアーティストに入る仕組みを構築できるので、アーティストへの正当な報酬が担保できる。これにより、NFTは単なる決済手段ではなくデジタル体験と現実の商品の双方をつなぎ、ユーザーコミュニティを強固にする役割を果たしている。Nike、Adidas、Pumaなどのシューズブランドは、ZEPETOなどへの参入の他に独自のメタバースプラットフォームを開発しており、今回はそれらの取り組みを挙げている。

メタバースは単に現実世界からデジタル世界への変遷を補佐するのではなく、デジタル世界をうまく活用して現実世界と結びつける方向に進化している。こうした傾向がこれからのメタバースECの在り方を示しているのではないだろうか。さらに、現実利用型、デジタル専用型、フィジタル型それぞれに合わせた決済方法が選択されている。

 

 

仮想空間上でのこれからのEC

 

メタバース空間におけるECの進化を考えると、今後は大きく二つのシナリオが想定できる。

 

3つの型が並存

一つは、現実利用型・デジタル専用型・フィジタル型の三つの型が並存する世界である。このシナリオでは、各業界が自らの特性や提供価値に応じて、最適な型を選択してメタバースに参入する。たとえば、現物商品の購買を中心とする小売業は現実利用型を選び、アバター用ファッションやバーチャルイベントを提供するエンタメ業界はデジタル専用型を選ぶだろう。
一方、ラグジュアリーブランドやスポーツブランドなど、実物とデジタル双方でブランド体験を重視する業界は、フィジタル型を活用して顧客の没入体験と所有証明を統合するはずだ。このような構造は、現在のECをそのままメタバース上に拡張した「延長線上の未来」として最も想像しやすい。

 

フィジタル型×3つの決済方法

もう一つは、あらゆる業界がフィジタル型に収束する世界である。これは、メタバースECの進化をたどったときに見えてくる「最終的な到達点」とも言える。ここでは、現在現物商品の購買を中心とする小売業はアバター用のデジタル商品を提供し、エンタメ業界などのデジタル専用型は実際に手元で使用できる商品を提供する。ただしこの未来においても、決済方法は現在の区分が存続する可能性が高い。現実利用型で主流の通常EC決済(クレジットカードなど)はUXの確立度が高く、デジタル専用型で広く用いられる仮想通貨は国境を越えた支払いと低手数料を実現し、フィジタル型に紐づくNFTやトークン決済は所有権や真正性を担保する役割を持つ。つまり、商品や体験がフィジタルに統合されても、決済は「利便性」「国際性」「所有証明性」といった機能ごとに分化したまま並存する方が、システム的にもユーザー体験的にも合理的だろう。

 

 

ECはメタバースによって加速するか

 

メタバースECでは、店舗側が共同して様々な業界の商品を組み合わせて空間を提案することが可能であり、消費者がその空間を長期間体験することも可能である。これは、ファッション、インテリア、車など、空間的な体験が必要な領域やブランド認知が重要な領域では大きなメリットである。また、メタバースを導入することで衝動買いによる返品率が低下し、コンバージョン率が高まることも期待できる。例えば、購買前に着用、設置、操作などを体験できることで好感を持ち、試してみようかなという気持ちが湧いてくる。

一方で、メタバースのブームから数年経てもメタバース利用者がまだ限定的であることやメタバースへの理解の低さにより参入障壁が高いことがメタバースECの課題である。また、日常消費商品にはメタバースでの体験は不要であることも参入の意味を見いだせない原因だろう。

これらを考えると、全ECを一気に塗り替えるような急成長は見込めないが、ブランド体験や空間を構成するアイテム、デジタルアイテムの購買においては確実に加速していくだろう。